華やかに行われた授賞式世界的に優れた芸術家を顕彰する第24回高松宮殿下記念世界文化賞（主催：公益財団法人日本美術協会＝総裁・常陸宮殿下）の授賞式典が、10月23日　東京・元赤坂の明治記念館で行われました。
常陸宮同妃両殿下ご臨席のもと華やかに行われたこの授賞式の模様と、授賞者のスペシャルインタビューを交えた特別番組が10月30日に放送されました。
番組を担当した渡辺俊介プロデューサーの特別コラムです。

第24回高松宮殿下記念 世界文化賞授賞式特番 渡辺俊介プロデューサー 特別コラム

演劇・映像部門の受賞者：森下洋子さんと
絵画部門の受賞者：蔡國強さんの素顔に触れて・・・

森下洋子さんは収録現場に軽やかに現れた。まじかで見ると驚くほど小柄。150cm、38㎏。
収録に備えて事前に見ていたDVDでは、それは全く感じなかった。
舞台の上での彼女の存在感ゆえか。
とても気さくな方で、カメラ、音声含めスタッフ全員と挨拶を交わす。
インタビュー収録も雑談の延長の様な形で始まった。　　

こちらの質問に的確かつ、ユーモアを交えて答えてくれる。
興味深い答えも勿論だが驚いたのは、収録中、閉めきったスタジオでスタッフ全員が汗だくになっているのに、ご本人は汗ひとつかいていない事。

理由を伺うと「一日中暑いところで踊っていると、多少の事では汗はかかない。」とのこと。
舞踊歴60年を超える時間でつくられた彼女の身体は、完全に舞台の人であった。

もう一人、蔡國強さん。中国国籍では初めての受賞者。
日本との親交も深く、北野武さんは授賞式にお祝いに駆け付けた。
日本に留学中、福島県いわき市で活動していたこともあり、今回の震災では心を痛めていたそうだ。

その蔡さんのインタビューで心に残った言葉がある。

「震災をうけて福島に寄付を申し込んだとき、そのお金の使いみちを聞いて驚きました。桜の木を植えるのに使いたいと言うのです。みんな家も仕事も無い様な状態で、ちょっとおかしいんじゃないか？ロマンチックすぎないか？もっと現実を見た方がいいんじゃないか？と思いました。しかしこれからの人達に美しい町を残したいという思いを知った時、日本の人は、今の事より未来の人達を心配しているんだ。その決意に驚きました。」
蔡さんはその事を聞いて、寄付だけではなく昨年来日し、自ら桜を植樹。
今回の来日でも、授賞式後に再びその桜を見に福島へ行き、地元の人達の大歓迎を受けた。

お二人とも颯爽とした人だった。

文：渡辺俊介（フジテレビ　世界文化賞授賞式特番プロデューサー）