インタビュー

昨年の12月にクランクインしましたが、これまでの撮影を通じて今回のチームにはどのような印象をお持ちですか?
ハードでしたね。ロケもあっちこっち飛び回っていますから。連ドラでこんなに毎日のように現場に行くという経験もあまりなかったのでそういう意味では大変ではあったんですけど、ただ、いろいろな役を演じられるから楽しいんです。本当に映画を撮っているみたい。佐野史郎さんの回(第4話)に登場する劇中の時代劇も、とにかく本格的なんですよ。「これを1時間にどう収めるんだろう?」と思いました。贅沢な時間ですね。
台本を読むととにかく面白いですが、同時に「これはどうやって撮るんだろう?」と思うようなシーンがたくさんありましたよね。
この業界の人は驚くかもしれないですね。「大変らしいよ、あそこ」ってもう評判になってるらしいし(笑)。スタッフ同士で情報が飛び交っているから。
古沢良太さんの脚本の印象は?
オリジナルでしょ。凄い才能だなと思いました。よくこんなことを考えつくな、と。脚本がとにかく面白いので、そこに僕らがどうやって上乗せしていくか、説得力を持たせていくか、と考えるとかなりの難題なんです。特にダー子(長澤まさみ)の部屋(註:3人の基地のようになっている高級ホテルのスイートルーム)。ターゲットを騙すためにいろいろな職業に成りすますのは問題がないんです。成りきればいいだけなので。でも、ダー子の部屋のシーンは現ナマをまき散らしたりして、ぶっ飛んだ空間なんですよ(笑)。特にダー子なんですけどね。監督たちはもちろん計算の上で「OK」をくれるわけですから、そこはもう信頼して……。
コン・ゲーム(信用詐欺、取り込み詐欺)を題材にしたドラマというのもあまりないですから。
そうですよ。あったとしても普通10本もやらないでしょ(笑)。毎回騙すわけですから。視聴者も、その前提で見るわけですよ。騙していく過程を見るわけですから、当然ハードルも上がっていきますしね。もう、詐欺師だと言っちゃっているわけですからね。出来ることなら、1話だけはそれを知らないで見てほしかったとも思いましたよ。ただ、言わなきゃどんなドラマなのかわからないんだからそれも難しいんですけど(笑)。
リチャードというキャラクターを演じるにあたって、意識されたことは?
素のリチャード、というのが一番難しいんですよ。賭博場でサイコロを振っている渡世人とか、そういう役を演じているときは、騙すために成りきっているだけですから丁寧に演じていけばいいだけなんですけど、素のリチャードというのがなかなか想像できなくて。普段はイギリス紳士風で、お洒落な蝶タイをいつもしていて、自分の娘や息子みたいなダー子、ボクちゃん(東出昌大)と一緒になって詐欺を働いているわけで……。さっきも言ったダー子の部屋のシーンで、3人が一緒にいるときにどういう風に見えればいいのか。「この3人の関係、良い感じだな」と見てもらうためにはどうしたらいいのか。そのことをずっと……もう撮影終盤の今でも考えてます。つい楽しくなって無邪気にはしゃいでしまうこともあるんです。そうするとハッとなって「いまのリチャードじゃないよね?」って(笑)。
「目に見えるものが真実とは限らない。何が本当で何が嘘か」という台詞が毎回出てきますが、素のダー子、素のボクちゃん、素のリチャードも、「本当にそれが本性なのか?」という気もしてくるようなドラマでもありますから。
ダー子、ボクちゃん、リチャードも、それぞれ別の人格として存在するわけだからそこは自分の中で想像しておかないと何がなんだかわからなくなっちゃうんですよ。実際、素のダー子、ボクちゃん、リチャードを演じている時間は意外と少なかったりもするんですよ。騙すために、必ず何らかのキャラクターを演じているわけですから。季節感とか時間の流れもあまり関係なくぶっ飛ばしてるドラマなので(笑)。
台本にも「○ヵ月後」と出てきますけど、全体的にはどのくらいの期間の話なのかわかりませんし。
そうそう。時間、いきなり飛んだりするんですよね。今までの連ドラとは違いますよね。そういうドラマになったらいいな、と思って頑張っているわけですけど。視聴者のみなさんがそういうところも含めて面白がってくれたら最高なんですけどね。
長澤さん、東出さんとお芝居をされてみての印象は?
常に3人だから、チームワークが良くないといけないと思うんです。もちろん、劇中ではいがみ合ったり、バカにし合ったりするシーンもあるんですけど、そういう部分も全部ひっくるめて、基本的には仲が良い3人、という風に見えないといけないので。そういう意味では、とっても良かったですね。長澤さんはとにかく明るいし、撮影現場の空気感はまず長澤さんが作っている。僕は、彼らの倍以上の年齢なんですけど、本当に同世代のように接してくれるんです(笑)。長澤さんも、きっと撮影現場はやり易いと思っていると思うんです。どういう風に自分がいればいいのか、というのを大事にする方なので。ぶっ飛んだダー子というテンションを維持するために、前室でもとっても明るいし。また東出くんが好青年なんですよ。とっても柔らかいんですよね。ナーバスなところもあるんですけど、それがボクちゃんに繋がってると思うし。そういう中で僕はどうなのかな?だって、話していると東出くんの方が僕よりずっとしっかりしてるんですよ(笑)。
長澤さんたちは、「小日向さんがムードメーカーだ」とおっしゃっていました。毎回のゲストのみなさんを含めて、小日向さんが現場を優しく包んでいるような気がしたのですが。
包んでいるつもりはないんですけどね(笑)。でも、ここで僕が「君たちの倍生きてるんだ」みたいな態度をとったら、現場が白けちゃいますよ(笑)。そんなつもりもないしね。
良い現場だと思います。
それが一番!あとはとにかく、お客さんが喜んでくれれば、と願うだけですよ。
ゲスト陣も強力ですし、ダー子たちとの絡み方も含めて、見どころはたくさんあります。
ゲストのみなさんは本当に豪華ですね。昨日、佐野史郎さんに会ったんだけど、彼がゲストの回は1月の頭からセットが始まって、まるまる1ヵ月ですよ。江口洋介さんの回(第1話)なんて、去年から撮り始めて終わったのは3月に入ってからなんだから(笑)。凄い作品ですね。お金ももの凄くかかってるんじゃないかな?
コメディードラマの難しさもあると思いますが……。
騙す方は、途中でバレないように真剣に騙して、騙された方は怒り狂うわけですよ。真剣に騙すということは、真剣にその役を演じるということに尽きるんですけど、その部分に関しては全く問題ないと思うんです。だから、そこから解放されたときのダー子の部屋のシーンが一番難しかったかもしれない。だって、何億というお金をばらまいたりして、「これって、ひんしゅくものなんじゃないの?」って心配になったりしたくらいだから。その辺の非日常的な部分を「あり得ないよ」と思いながらも、「この人たち、何か面白いな」と思わせないといけない。そのときにそれぞれのキャラクターが魅力的じゃなきゃいけないし、そう思ってもらえるように頑張ってきたわけですけど、「これでいいんですよね、監督?」という思いをどこかで発しながらやっていますね(笑)。
最後に、視聴者の皆さんに向けて、メッセージをお願いします。
とにかく3人がいろいろな役をやりますから、楽しみにしていてほしいです。第1話から、もういろいろなキャラクターが出てきますから。それから、長澤さんと東出くん、そして小日向の絡み……これも、今までになかったものですから、期待していただきたいですね。

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