2012年08月25日 ザ・コンパスで放送
社会・公共

領土問題から考える「日本の国際社会での影響力」

この1ヶ月あまりの間、日本固有の領土である島々に対して、周辺各国が
活発な動きを見せています。

・北方領土での動き(ロシア→日本)
7月  3日、ロシアのメドベージェフ首相は、北方領土の国後島を首相として初訪問、2時間
あまり滞在。この訪問は2010年(当時大統領)に次いで2回目であり、実効支配を
アピールしたものと見られ、地元住民には、「一寸たりとも領土は渡さない」と断言したと
報じられました。
首相の訪問に対して、藤村修官房長官は「北方四島に関する日本の立場と相いれず、
極めて遺憾だ。日露関係の前向きな雰囲気作りに水を差すものだ」と厳しく非難しました。


・竹島での動き(韓国→日本)
8月10日、韓国の李明博大統領が現職大統領としては初めて、竹島を訪問。19日には、
同島で、李明博大統領直筆の石碑の除幕式が行われました。
これに対して、日本政府は、武藤駐韓国大使を一時帰国させ、領有権問題について
国際司法裁判所(ICJ)に提訴を決定。玄葉光一郎外相は韓国の申ガク秀駐日大使を
外務省に呼び、韓国政府にICJへの共同付託を提案しましたが、韓国側はこれを拒否しました。
安住財務大臣が日韓通貨交換(スワップ)協定の拡大分について更新見直しを検討するとも表明
するなど、政府はなんらかの制裁を行う姿勢を示しています。


・尖閣諸島での動き(中国→日本)
8月15日、香港の活動家らが中国政府の黙認のもと、海上保安庁の巡視船が警戒するなか、
5人が魚釣島に上陸。上陸した5人を含む14人全員を、沖縄県警と海上保安本部は
それぞれ不法上陸と不法入国で逮捕。日本政府は中国政府にただちに抗議を行いました。
17日には14名を強制送還しました。
19日には、「日本の領土を守るため行動する議員連盟」約150人が、第2次世界大戦末期に
起きた疎開船遭難事件の慰霊祭を目的に、尖閣諸島近海を訪れた際、政府の上陸許可は
得られていないにも関わらず、10人が魚釣島に上陸。政府は軽犯罪法違反の疑いで、
事情を聴取しました。



2:番組として(our aim)>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

番組では、8月13日に韓国の李明博大統領が話したと報じられた、
「国際社会における日本の影響力は以前のようではない」という発言に注目しました。
「日本の国際社会での影響力」の低下が、7月、8月の短期間のうちに日本の領土、領海が
次々と侵犯される異常事態を引き起こしているかどうかを改めて考えたく、今回のテーマを
企画しました。

国際社会の影響力といっても、安全保障、外交力、政治、経済、文化など、ハード・パワー、
ソフト・パワーの両面が考えられます。
日本にとって、どのような影響力が低下していて、どのような影響力を強化していく必要があるか
を考えることで、日本の課題を改めて浮き彫りにすることに繋がるのではないでしょうか。

そこで、今回のコンパスでは、オピニオンリーダーの皆さまからのご意見から、
番組視聴者・ユーザーとともに、「日本の国際社会での影響力」について考え、議論したいと思います。

オピニオンリーダーへの問いかけ

※コンパスで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、各氏所属の団体・組織の意見・方針ではありません。
Q1:一連の事案の発生は、「日本の国際社会での影響力」の低下が原因だと思いますか?
Q2:問1の回答理由をお聞かせ下さい。
選択肢、1,2を選ばれた場合は、影響力の低下がたとえばどんな分野で、どんな現象として生じているかなどを、可能な限り具体的にお聞かせ下さい。
選択肢、3,4を選ばれた場合は、なぜそう思わないかをお聞かせ下さい。
Q3:今後、日本はどんな分野(たとえば、安全保障、外交、政治、経済、文化など)でどのように影響力を強化していく必要があると考えますか?
ご意見をお聞かせ下さい。
Q4:一連の事案に対する日本政府の対応と国内世論について
どう見ていますか? ご意見をお聞かせ下さい。
  

オピニオンリーダーの回答

( 30件 )
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1. そう思う

山村武彦
防災システム研究所所長
Q2. 「1 - そう思う」の回答理由
・国民が団結し勢威盛んな政権であれば、その国の嫌がることを仕掛ける者はいない。
・原発、増税、TPP等国論が割れ、ギクシャク日米関係、弱体政権が付け入る隙を与えた。
・意見が異なっても、危機に際しては団結力を示し、国家の利益を図るべき。
中国、ロシア、韓国の動きは、震災対応、原発問題、TPP、消費税増税など日本の国論が分裂し、国民がまとまっていないことを見透かし、その虚を衝かれた行動と考える。国際社会での影響力低下というより、国民の団結力低下、党利党略政治、毎年変わる首相、弱体政権など、日本が自らさらけ出した隙に乗じられたものではないだろうか。とくにギクシャクした日米関係がトリガーのひとつとなったことは否めない。
国民が団結し勢威盛んな政権国家であれば、その国の嫌がることを仕掛ける者はいない。外交とは血を流さない戦争である。領土を接する国々は常に隣国の勢威・盛衰を見て外交を行っていること、政治の混乱や内政の乱れが国の危機に直結することを忘れてはいけない。
Q3. コメントする
日本には良質の文化、伝統、礼節、倫理観がある。そして、高い技術力を生み出す創造性やモノづくり力がある。優れた特質を生かし、医療、教育、経済などの各分野を強化して行くべきである。とくに強化すべきは、多くの災害を経験し克服し培ってきた、防災にかかわるハード、ソフトなどのノウハウ。防災をシステム化し各国の状況に合わせて安全ノウハウを提供する「安全・防災大国」を目指すべきではなかろうか。そのためにもまずは足元から固めなおさなければならない。毎年首相が変わらず安定した国家運営ができるように、政治や国の仕組みを変え、自らが安全・安心国家のあり方を示すべきである。
Q4. コメントする
国家的危機と位置づけ、政治家も領土問題を政局とせず、国民とともに超党派で一致団結し、海上保安庁の警察権強化(早期法令改定)、通貨スワップ協定破棄、国際司法裁判所の単独提訴を含め、冷静かつ毅然とした対応をすべきである。そして、日本の嫌がることをすると、自国の損失となることを知らしめることも必要。
 
 
永濱利廣
(株)第一生命経済研究所 経済調査部主席エコノミスト
Q2. 「1 - そう思う」の回答理由
少なくとも経済の分野では、バブル崩壊以降の失われた20年の間に、相対的な世界経済の成長によりわが国の地位は急激に低下している。
平和憲法によって軍事力の使用を制限されている日本にとって、経済力の低下は影響力の低下に直結する。
少なくとも経済の分野では、バブル崩壊以降の失われた20年の間に、相対的な世界経済の成長によりわが国の地位は急激に低下している。
平和憲法によって軍事力の使用を制限されている日本にとって、経済力の低下は影響力の低下に直結する。
Q3. コメントする
少なくとも経済の分野では、遅れているグローバル化への適応を進めることで経済を活性化させ、一人当たりGDPの優位的な立場を維持する。そして、東アジアの地域統合を主導し、経済的繁栄と政治的安定が実現できれば望ましい。
願わくば、国連安保理の常任理事国入りして責任ある貢献をし、環境分野でのリーダーシップ発揮や、途上国支援で国際社会の信頼を獲得する等、世界的な課題の分野で重要な役割を果たしてほしい。
Q4. コメントを控える
 
 
小幡績
慶應義塾大学ビジネススクール准教授
Q2. 「1 - そう思う」の回答理由
経済力の相対的な低下がすべて
アジアにおける圧倒的な経済力を背景に、日本の意向を無視できないということがなくなった。

ロシアの資源開発でも、日本抜きでやっていくことは出来るし、韓国も日本市場抜きでも世界市場で売れば良いという議論が成り立つようになっている。
Q3. コメントする
常に、外交上、普通の態度を取ること。おかしいことには抗議し、妥協せず、筋を通すこと。そうでないからなめられる。

韓国に対しては、李明博大統領を非難し,彼の在任中は国交を断絶すべきである。
Q4. コメントする
事なかれ主義と感情論と二極化しており、どちらも非常に幼稚である。

外交とはお友達と仲良くすることではなく、また感情論でもなく、利害の渦巻く戦いである。それを分かっていない。
 
 
山田昌弘
中央大学教授
Q2. 「1 - そう思う」の回答理由
従来、日本は、東アジア地区で経済力で圧倒した力をもっていた。つまり、日本の資本、技術、製品、そして市場が、東アジア諸国の経済発展のために、「不可欠」だった。しかし、今は逆になっている。今まで、経済力のみを頼りに影響を及ぼしてきたのに、経済における優位性がなくなれば、影響力は低下する。
従来、日本は、東アジア地区で経済力で圧倒した力をもっていた。つまり、日本の資本、技術、製品、そして市場が、東アジア諸国の経済発展のために、「不可欠」だった。しかし、今は逆になっている。経済制裁で困るのは、逆に日本の方である。グローバル化している中、資本は世界から呼び込める。技術も日本が先端ではなくなりつつある。製品や資源の輸入でストップして困るのは日本の方である。市場で有望なのは、中国の方だ。今まで、経済力のみを頼りに影響を及ぼしてきたのに、経済における優位性がなくなれば、影響力は低下する。
 かつ、日本には国際的センターがない。シティやウオール街から中国、韓国企業が閉め出されたら困るだろうが、兜町から閉め出されてもいたくもかゆくもないだろう。今となっては、香港市場から閉め出された方が日本企業に打撃になるかもしれない。閉鎖的な経済市場が、かえって影響力の低下を招いている。
 
 欧米の関心も日本から中国に移っている。
 マスコミの点からいっても、英米の有名新聞、雑誌の東アジア拠点が日本から逃げ、香港や北京に移っていることからもわかる。
 アメリカの大学でも、日本語の講座は閑散としており、中国語の講座はあふれんばかりという状況が広がっている。
Q3. コメントする
 今、東アジアで唯一影響力があるのが、「アニメ」や「アイドル」そして、「メイドカフェ」や「かわいい」など若者文化である。
 それは、日本の大学に来る留学生のほとんどが、これらの文化に親しんだから、アメリカやイギリスではなくて、日本に来たと答えることからも分かる。(同じ留学するなら、英語圏や中国に留学した方が、絶対就職に有利である)
 かぼそいものであるが、これらの文化の広がりを後押しし、少しでも日本ファンの若者(将来の幹部)を増やしていくことが「一つ」必要だと思う。(それだけでいいというわけではない)

経済的には、労働市場などをオープンにし、国際的に開かれた日本にして、経済発展を図る必要がある。
Q4. コメントする
領土問題は、国内世論が常に一致する。共産党から右翼まで、領土を守ることでは同意見である。問題は、どのようにすれば、本当に守れるかである。いたずらに相手を責めても、守れるものではない。もっとしたたかな対応が必要なのだが。
 
 
宮家邦彦
外交評論家,株式会社外交政策研究所代表
Q2. 「1 - そう思う」の回答理由
 影響力低下の最大の原因は内政の不安定でしょう。毎年総理大臣が変わることはやはり異常です。しかも、政治的エネルギーの大半は内政上の問題に費やされています。対外政策については、その一貫性、継続性を維持するどころか、そもそもまともな議論すら十分行われていません。まず、このことを正確に知ることが先決だと思います。
 例えば、尖閣問題ですが、2010年9月の中国漁船衝突事件以来、日本では、政府だけでなく、国会としても、今後中国に如何に対応するかにつき現実的な議論はほとんど行われず、ただ「ビデオを提出するか否か」で大騒ぎになった記憶しかありません。
 当時本当に必要だったのは、海上警察活動の能力大幅向上と今後より厳しい対応策をとることに関する決意の表明だったと思います。 尖閣に限らず、領土のような重要な問題についてぐらい、超党派で最小限の国民的コンセンサスを作るべきでした。この点については、与野党を問わず、過去数年間の政治レベルの対応に深く失望しています。
 次期総選挙で誰が勝つにせよ、次回の選挙戦で外交安保政策にはもっと超党派の動きがあって良いと思います。外交問題で国内が揺れる、割れるのは、最大の利敵行為です。誘惑は理解できますが、少なくとも外交安保の世界では政局や党利党略的動きを最小限にすべきではないでしょうか。
Q3. コメントする
外交・安全保障の分野で影響力を強化するには、東アジアの戦略バランスの維持を念頭に、まず日本自らの防衛力(海上保安庁を含む)向上とそれを支える経済力の向上が必要だと思います。
Q4. コメントする
「弱腰外交」、「なめられている」との批判は理解できますが、それだけでは何の解決にもなりません。現行法制度の枠内で出来ることは限られているのですから、「弱腰」が嫌なら、そうならないような予算増額、定員増加、交戦規定を含む法的枠組みの強化に賛成し、具体的措置を取っていくべきです。
 
 
川上高司
拓殖大学海外事情研究所教授
Q2. 「1 - そう思う」の回答理由
竹島への韓国大統領の上陸は日韓関係始まって以来、初めてのことだ。李明博大統領も「日本は国際的影響力がなくなっている」と述べるとおり、対したしっぺ返しはないと折り込みずみと考えられる。これは、対日関係よりも国内情勢、あるいは中国との関係を重視したことではないだろうか。また、韓国の大統領が天皇に「来たければ謝れ」という発言は常軌を逸脱している。これも日本の影響力が大きかった時代には絶対に考えられない発言である。裏を返せば日本は韓国には報復できない。したとしても影響力はそうない、と李明博大統領が考えたからであろう。
 また、尖閣諸島へ香港の活動家が上陸成功したことは、次に来る中国人あるいは台湾人も上陸ができるという自信をつけたことになる。上陸をさせるということ自体が影響力の低下である。また、強制送還させるということ自体も中国から見れば影響力の低下につながることである。また、その後の中国国内での反日運動は日本車を破壊したり日本料理店を襲ったり異常な様相である。もし、日本国内で同じようなデモがおこったらどうなるかー。同じ頃日本では銀座にオリンピックのメダリストが凱旋し50万人の人が集まった。これも日本人が軽視される理由になっているのかもしれない。日本には領土を守る、自分の国を守るというナショナリズムがなくなったのか?
Q3. コメントする
影響力にはハード・パワーとソフト・パワーの両方を使い分けるスマートパワーの行使が必要である。相対的に活用して初めて影響力拡大する。戦後日本は敗戦国という負い目からあまりにもソフト・パワーだけに依存しすぎた傾向がある。これからはハード・パワーを積極的に行使すべきである。

 安全保障分野(ハード・パワー)は今後、すぐにでも尖閣諸島への上陸を目指しやってくると思われる中国、香港、台湾からの漁船団に対する緊急対応策の立案。海上保安庁の領海侵犯に対する法的整備(現在、上陸した不法入国者を海保職員が逮捕できる法改正が国会で審議中)、領海警備の強化。
また、米国との協同歩調がかかせない。海上自衛隊はすでに米海軍と密接な訓練を行っている。今後は東シナ海における協同海賊パトロールやHADR(人道支援災害救援)活動訓練を活発化する必要がある。それと同時に、海上保安庁は米国のコスト・ガード(沿岸警備隊)との協同訓練を東シナ海で行うべきであろう。これにはPSI(拡散に対する安全保障構想)として具体的に多国間での訓練を東アジアで再開すべきである。特に重要なのは、日米安保条約第5条の発動を担保すべきである(現に、米政府は「尖閣諸島は日米安保第5条の適応対象だ」と8月15日に発表)。その言質を得た今、大至急、現時点で米側と尖閣有事に備えて綿密なconsultationを行うべきである。
 
それと同時に外交分野(ソフトパワー)現在、日本政府が行っている国際司法裁判所への提訴という国連という国際的な場を使った解決も積極的に模索していく必要がある。今まで日本はあまりにも外交的積極性がなかった。
Q4. コメントする
後手後手にまわっている。つまり「危機が起こる前」の危機管理、危機を生じさせないため、事前策がとられてない。竹島への李明博大統領の上陸に関しては事前からわかっていた。それなのに積極的な外交努力を官邸が行ったとは考えられない。また、李明博大統領は竹島上陸の理由を野田総理と李明博大統領があったとき従軍慰安婦問題の日本側の積極的取り組みを懸命に嘆願していてその際の野田総理の反応に失望した、と述べている。野田総理は大統領の意向や気持ちを真にとりあげたのか。
 また、「危機が起こった後」の危機管理(Consquense Managemant)の野田政権のまずさ。香港動家が竹島上陸をめざすのはわかっていたが、それを阻止できなかったのは何故か?現場にそれだけの権限を与えていなかったのではないか。また、上陸後に強制送還送還したことは、中国政府の要請通りに日本政府が対応したことになる! しかも、これが既成事実化したことで、今後何度も尖閣上陸は繰り返されることとなろう。しっかりとした物理的対処、また、厳格な法的対処がなければこの件は収まりがつくまい。

 日本国内の世論も、李明博大統領の天皇謝罪要求に対する怒り、また、香港活動家の尖閣上陸を許ししかも即座に本国に送還した野田政権の手ぬるさに対しては怒りが強まってきている。その後の東京都議や兵庫県議員5人をふくむ10人の尖閣諸島への上陸に関しては日本の国内世論が背景にあったと考えられる。
 
 
飯田泰之
明治大学政治経済学部准教授
Q2. 「1 - そう思う」の回答理由
大問題は演説や多数決ではなく銭と血によってのみ解決される
ビスマルクは「大問題は演説や多数決ではなく鉄と血(要は軍隊)によってのみ解決される」と言った.
しかし,後世はこの演説が誤りであったことを知っています.

大問題は演説や多数決ではなく「銭」と血によってのみ解決される……

日本は血という選択肢を放棄した以上,行使できる影響の手段は経済しかない.しかし,購買力平価で見て日本の一人あたりGDPは先進国の最下位数カ国のグループに位置します.外交上の影響力を保持したいならば経済を成長させるしかありません.

現在の日本は円高を放置することで世界から不況を輸入しています.人の痛みを引き受けて貧しくなること...は倫理的にはすばらしいことかもしれない.実際,円高を放置する日本の政策当局のプライヤーへの「国際的評価」は低くありません.しかし,それは日本への評価ではなく「日本が不況を輸入している状態を放置してくれているありがたい人々」への個人的評価です.

日本が外交において存在感を維持するためには,円安・経済の振興・先進国上位グループへの復帰しかないでしょう.

また,今次の問題に関しては,

戦術的にも近代において実効支配が覆ったのは金銭交渉と戦争のみだということを肝に銘じなければなりません.(戦争でもしない限り)実効支配が覆ることはありません.尖閣問題を考える際には,なぜ北方領土問題・竹島問題が解決困難なのか,そしてその理由は何なのかをおもんばからねばなりません.
Q3. コメントを控える
Q4. コメントを控える
 
 
潮匡人
国際安全保障学者,拓殖大学客員教授
Q2. 「1 - そう思う」の回答理由
安全保障分野での影響力低下が著しい。原因は日米同盟の弱体化。揺らいだ同盟の足元を近隣諸国は見ている。政権交代後、インド洋上の後方支援活動を終了させたあげく、普天間やオスプレイを巡り、いまも迷走が続く。資質に欠ける防衛大臣も相次いだ。防衛費も減額が続く。影響力低下は当然の帰結である。
Q3. コメントする
日米同盟を強化すべき。そのためにも、集団的自衛権行使に関する憲法解釈の是正は避けて通れない。あわせて、自衛隊による防衛力強化も図るべきだ。海上保安庁法などの改正に加え、自衛隊に領域保全の任務と権限を与え、必要な装備や訓練も充実すべきと考える。
Q4. コメントする
予想どおりの日本政府の対応にも不満が残るが、相変わらず「冷静な対応」を説くマスコミ報道にも不満を覚える。(われわれが尖閣を訪問した)平成五年以来、基本的な構図は何も変わっていない。戦後日本人は領土問題に無関心であった。そもそも日本人に主権意識が乏しいからであろう。他方、国際法を無視した一部世論にも同調できない。常軌を逸した中韓の行動を非難するのはよいが、諸悪の根源は「平和憲法」を奉じる日本人のパシフィズムであろう。先ず、隗より始めよ。
 
 
若狭勝
弁護士
Q2. 「1 - そう思う」の回答理由
領土問題は、国の根幹・国の主権に関わる問題。国の力が弱くなれば、国家間のパワーバランスが崩れ、相手国が必然的に強気の態度と姿勢を示してくる。総理が一年で替わるようでは、我が国の力が弱くなっていると見られ、原発再稼働・消費税導入の当否も長らく言い争いをしていれば社会的基盤が弱いと見られる。
 領土問題は、国の根幹・国の主権に関わる問題である。
 その意味では、国の総体としての力が弱くなれば、国家間の力の天秤(パワーバランス)が崩れ、相手国が必然的に強気の態度と姿勢を示してくる。
 我が国の総体としての力が弱くなっていることは明らか。それは総理が1年ごとで替わる不安定な政治が象徴的に物語る。
 また、原発再稼働・消費税導入の当否についても、これだけ国民の意見が分かれて長らく言い争いをしていれば、社会的基盤が弱いと見られても不思議ではない。
Q3. コメントする
政治である。まずは、軸足がしっかりとした政治を構築し、そのもとで、安全保障・外交に影響力を強化していくべきである。
Q4. コメントする
 入管法違反事件の処理責任者(部長)に長く就いていた私の経験に照らし、先の香港活動家の早期の強制送還は、政治判断のほか何ものでもないのに、政府は、いかにも入管法の通常の取扱いであるとして発表し、大きなごまかしをしている。世論もその政府発表に乗せられてしまっている感がある。
 しかし、我が国の利益・公安を害する活動家の不法上陸であること、不法上陸を全面否認していることから、背景事情・再犯の恐れなどを判断すべく、送検し勾留するのが当然。他に犯罪(公務執行妨害等)がない場合でもこれが通常の扱いである。
 不法上陸等に比べ、比較的悪質性が弱い不法残留(入国資格はあったが期限までに出国しない事案)であっても、否認であれば、送検の上、勾留するし、それが我が国の利益と公安を害する場合であれば起訴する可能性さえある。とすれば、本件は少なくとも送検し勾留すべき事案である。
 確かに、入管法には「他に犯罪がない場合に48時間以内に入管に引き渡して強制送還できる」という制度がある。これは、外国人犯罪の急増を踏まえ、起訴しないことが明らかな事案に限って、不足する捜査員の効率的活用を目的に導入されたもので、絶対的ではなく、むしろかなり裁量捜査側の裁量で運用しているにすぎない。
 従って、今回の早々の強制送還は入管法に則った通常あるいは適切な措置である旨の発表内容は、我が国の利益を害する活動家の否認事案に適用する通常の扱いとは異なる。
 とすれば、本件は、中国との関係を考えての政治判断のほか何ものでもない。ただ、そもそも国の重大な利害に関する場合には、処罰よりも他の事情を優先的に重視してよいとの刑事訴訟法の理念があるので、政治判断ができないわけではない。
 結局、政府が政治判断をした旨堂々と発表すればよい。それを政治判断という説明をせず、いかにも入管法に基づく措置であると装うことは、いかに説明すれば国民の批判をより受けないかという視点だけで発表内容をごまかすものであり、軸足の定まった政治ではない。相手国にも見透かされる。国力の低下を招くだけである。
 
 
武貞秀士
拓殖大学大学院特任教授
Q2. 「1 - そう思う」の回答理由
一連の対処について、外交的に失敗だったとは思わない。今後は防衛、外交、教育、文化、政治のすべての分野で、日本をまともな国家にするために力を結集しましょう。
 一連の事案の発生は、「日本の国際社会での影響力」の低下が原因のひとつであることは間違いない。なぜなら一連の事案は同時期に発生しているので、共通の背景があると考えるべき。中国、ロシア、韓国の3か国は、日本が大地震と津波と福島原発事故で国力が消耗していることを熟知している国家である。韓国の企業関係者は「東日本大震災が、韓国の貿易港、釜山に与える経済的利益について」と議論をしていた。このタイミングでの韓国大統領の「日本の国際的影響力は以前ほどでない」という言葉は、「いまがチャンス。今までできなかったことをいま実行しよう」というようにも聞こえる。日本の国力が低下して、日本経済が世界経済に占める地位が低下して、国際社会での影響力が低下し、国内政局が混迷して、国民が地震と津波と原発事故で打ちひしがれて、涙しているときに、「日本に対して今までは遠慮していたこと」「いままでは実行しなかったこと」を実行しようというムードが高まったのではないか。そして、他の要因も絡み合って一連の事案発生した。
 日本の国際社会での影響力低下は、あらゆる分野で起きている。
(1)国際機関での議論で。国際連合改革のひとつとして、日本などの3か国が常任理事国になるという提案に対して、十分な支持が集まらない。中国や韓国が反対すると、そのまま、日本への国際的支持が減ってしまう。「日本が過去の歴史を反省していないから支持しない」と主張する国家以外の支持も減る。これは、日本の国際社会での地位低下が原因であろう。
(2)個人的経験から。外国での会議や集会にでたとき、竹島問題、従軍慰安婦問題、教科書問題、歴史認識の問題、日韓併合などについて、中国や韓国の教科書に書いてある記述そのままを、英国の外交官(大使級)、米国の学者、スエーデンのシンクタンク研究員から聞かされることが多い。日本の宣伝不足もあるが、中国、韓国が宣伝費を使って、自国の主張を幅広く、欧米の人々に対して地道に宣伝しているからだろう。中国は政府開発援助のひとつとして、欧米の大学の研究プロジェクトに対して、出資して欧米の学生や研究者に自国の立場を理解してもらうための研究プロジェクトを実施している。そして、研究施設まで作ってしまう。そのプロジェクトを指導しているのは、愛国心豊かな中国人であり、それを支えているのは、中国マネーである。そして、中国の国際社会での影響力が増大してきた。
 昨年11月、韓国での国際会議の席で、「2012年春の核サミットの成功のために、主催国の韓国は米国と中国と緊密に協議をして準備をしています」というスピーチを韓国の外交官の幹部から聞いた。韓国の会議では国際社会の安定、発展、協力に関することを論じるとき、日本に触れることが少なくなった。「なぜですか」と質問すると、「昨年の大地震以後、日本は国際社会での役割を果たせなくなっている」「日本の政治の混迷により、日本の対外戦略は見えないから」という回答が返ってくる。日本にも責任があることは間違いない。
(3)中国と韓国の政府関係者が、日本に対して、相当踏み込んだ発言をして、「そこまで発言をしても、日本に対して失礼にならないと確信している」とわかるとき、日本の国際社会での地位低下を感じる。例えば、「21世紀の半ばには日本は存在しなくなっている」「日本という国は、一度叩いてやればよい」「日本の国際的影響力は、以前ほどではない」「尖閣諸島は中国領であるから、上陸した中国人を釈放せよ」(「事実関係を確認したい」とは言わずに、この言葉が最初に出たのに驚いた)といった言葉は、アジア各国のトップ、幹部、外交部報道官の言葉である。「日本は弱っているのだから、なにを言っても大丈夫」と思われているからだろう。
Q3. コメントする
(1)安全保障分野では防衛力整備を進める。ごく普通の防衛力を整備する国家にすべきだ。それを持たないから外国から軽く見られる。例えば、通常戦力による抑止力は不十分だ。「専守防衛」というコンセプトで長年、防衛力整備をしてきたからだ。韓国は非核4原則(核を作らない。持たない。持ち込ませない。核燃料を再処理しない)を維持しているが、1000キロメートルを飛ぶ巡航ミサイルを持っている。1000キロを飛んでも10メートル以内に命中する通常弾頭のミサイルは、抑止力が大きい。韓国は抑止力を大事にする国である。韓国も日本の通常戦力強化を理解してくれると思う。私の「日本の通常戦力の強化を支持するか」との質問に対して、米国政府の幹部(公使や次官級)は「支持する」と言っている。
日本がすべきことは、以下のとおり。航空母艦を建造する。情報収集衛星を16基(4の倍数であり、これで収集態勢はほぼ万全)にする。射程2000キロメートルの巡航ミサイルを保持する。空中給油機を増やし、戦闘用に運用することを想定して最低24機は保有する。空対地ミサイルを保有する。この5つを実行する。こうして得た強い抑止力は「防衛に徹する」という理念に合致するものであり、これらはぜひ進めたい。5つの実行に際しては、憲法を改正する必要はない。
(2)若い世代への教育の改善。中国は北京の一等地に軍事博物館があり、中国の小学生たちで一杯だ。遠足で、人民解放軍の戦車、航空機、ミサイルを見学し、軍事教育を受けている。こうして、国家の安全と主権は武器で守るという教育を子供のときからたたき込まれている。「中国の領土はあらゆる手段で防衛する」という中国政府の方針は、「尖閣諸島も能力が備わったら、軍事力で奪回する」という意味を含んでいるが、軍事教育を子供のときから受けてきた中国国民の全体の支持を得ていることだろう。日本では軍事について、学校では教えていない。平和の尊さを説くためには、兵器とはどんなものかを教えて、戦争には至らないように、抑止力を持つことを教育する必要があるが、日本ではそれができていない。どうすべきか。東京の上野の丘と、関西では大阪城の横に軍事博物館をつくる。石原知事と橋下市長は検討してくれるだろう。軍事博物館では、日本国を守るために、昔の技術者たちは、どんな兵器を開発してきたのかを展示する。航空母艦を世界で初めて建造して、運用したのは日本だった。その日本の技術力を見たとき、子供たちは、理科系の学部に進学することを希望するかもしれない。平和を維持するにも技術が伴っていなければならない。
日本の対外発信力の強化という観点からは、戦略的な問題を議論するセンスを持っている若者を育成する。外国語を使って自分の考えを主張できる能力を強化する。外国の文献を読み、外国人と英語、できれば韓国語と中国語も使って議論して、日本の立場を説明することができる若者がどれだけいるだろうか。これは、日本の教育制度の中身の問題であろう。
(3)対外協力のありかた、その重点を見直す。外国の大学への研究支援を充実させて、日本を理解してもらうプロジェクトを充実させる。日本の専門家が中心になって、日本を正確に理解してもらうためのプロジェクトにする。外国の「反日人士」が研究費を浪費するような研究助成は避けたい。自分は大学で英語による「戦後日本の発展過程」という講義を実施しているが、戦後日本の発展過程に関する日本人の書いた適当な英語の教科書が皆無だ。豪州、英国の専門家の書いた標準的なものはあるが、20年も前のもの。それに、東京裁判史観以外のものは受け付けないというところから始まる視点ばかりが目立つ。
(4)日韓関係の修復。日韓関係が強固なものであるとき、それは、韓国と日本の対中国、対ロシア、対北朝鮮の交渉能力の増大につながる。日韓関係は、本来、1+1が3になり、5になる関係であった。韓国には地道に日韓関係の重要性を説きたいし、私は毎日、韓国でそのように、英語と韓国語で論じている。中国との関係も両国の経済関係を考えると速く修復しなければならないが、日韓関係のほうが、困難が多いので、優先順位は高い。
(5)メディアの役割。日本人に対して、いまの日本に何が不足していて、何が大事であり、何から手がけるべきかを、発信してゆく。その意味で、テレビの役割は大きい。日韓、日中関係が危機に瀕しているとき、この日本国家のとるべき選択はというテーマは重要だ。日本政府批判ばかりをしていても、対策はでてこない。
(6)日本経済が自信を取り戻すこと。アイデアが豊富で、日々技術革新をしている日本製品は世界のどこでも通用している。日本人は発明能力に優れているし、応用能力も高い。自動車技術では、コンパクトカーを大量生産するという発想は日本人のものだし、ハイブリッドカー技術は世界一だ。鉄道技術とその運用技術、モノレールの技術は世界一だ。デジタル一眼レフカメラの技術は世界最高で、市場占有率は95パーセントを超える。日韓両国のスーパーで食品の買い物をするが、日本のスーパーの多様な品揃えには驚く。韓国には韓国産「だし汁」がない。日本には、カツオの出汁、コンブの出汁、その他、いろいろある。醤油も地方に多様な醤油がある。豆腐の種類もいろいろある。韓国では韓国最大のスーパーに行っても、2種類程度の豆腐しかない。日本人は、選択肢を増やすこと、付加価値をつけて他との差別化を考えることについては、世界一だろう。ユニクロはその発想で世界で成功している。ただし、選択肢を増やすこと、付加価値をつけて他との差別化を考えることが過剰になると、海外旅行パック商品のようになる。旅行業者の海外旅行パックのチラシを見ると、困惑してしまう。週末出発と平日出発では料金が違い、利用航空会社によって料金が違い、帰国便をずらすことが可能な航空券は少し高くなる。そのうちに、「現地での昼食で、カレーを注文する場合よりうなぎを注文する場合は、500円高」などといったパックも登場するかもしれない。複雑すぎて、窓口の職員がときどき、間違えている。このような商品の多様化のために、チラシの印刷代を使う必要はあるのだろうかと思ってしまう。日本社会に細分化、選択の多様化、付加価値の競争が常にあるからだろう。この日本人の特性を活かしたモノは国際競争力がある。ロンドンのユニクロは客がいっぱいだし、韓国の地下鉄は、若い女性がユニクロの袋を抱えて乗るのがファッションになっている。日本の100円ショップもバカにしてはいけない。1か月ごとに、「技術革新」のあとがうかがえる。以前は単語カード1個が100円。そのうちに2個が100円。先週、池上東急店ダイソーをのぞいたら、最初から見出し付箋紙がくっついた単語帳が3個はいっていた。これは進化である。日本の電車の遮断機は、下がるときゆっくりと下がり、電車が通りすぎると速くあがる。コンピューターで制御しているのである。下がるとき、人々はゆっくりと下がってほしいと思い、上がるとき、速く上がってほしいと思う。その心を、技術で解決している。この技術は日本だけだろう。日本の技術陣は人の心を読んでいるから、国際競争力がある。そもそも、外国ではこのような技術を考える人がいないし、その技術開発のために時間とお金をかけることは無意味だと思っている。ところがそのうちに、そのアイデアを生かした日本製品を買おうという外国人が増えてくる。そして、世界に日本製品が出回るということになる。軽自動車は日本の技術者の努力の結晶であり、日本的発想の成功例だ。中国東北部の朝鮮族自治州延吉市のタクシーはスズキの軽自動車で、古いものがいまでも走っていて人気ものだ。軽自動車を作れない米国は、あの手この手で日本の軽自動車生産にブレーキをかけようとしている。「米国にないものは、ダメなもの」と決めつけられ、「工業規格の米国化」を求められても、日本人は当惑するだけである。
 日本人はその独創性、想像力、それを技術力向上に活かして生産にまでもってゆく能力がある。向上心もある。自信をもって良い。技術向上に努力してきたいままでの道を大事にすればよい。アメリカがドル札をどんどん印刷をしているので円高ドル安が続いているらしいが、モノを作っている国家は強いのである。「日本も捨てたものではない。勉強しましょう」と、今日も営業開始前のパチンコ店の店頭で行列している若者に教えてあげようではないか。
Q4. コメントする
 第一に、「日本政府は弱腰だ」という論調が圧倒的だ。確かに尖閣諸島問題では、香港の14人の上陸を阻止すべく、万全の態勢をとるべきだった。それができなかったということは、今後も上陸を許してしまうということにはならないか。香港の民間団体の船が巡視船と衝突して、巡視船が傷ついた。これは、香港の民間団体に損害賠償を請求してもよかった。逆に香港の団体が日本に損害賠償を請求すると述べているそうだ。何に対する損害賠償なのかよくわからない。
 第二に、今回の尖閣諸島事案は日本外交にとって、マイナスばかりではない。香港の14人を載せた船が出発をしたときから日中の外交当局者は協議を続け、問題が拡大しないように努力した。人命の損失という事態を回避すること。やむえない場合は、上陸阻止はあきらめること。上陸してしまったあと、迅速に48時間以内に強制送還すること。これらの対処案で、日中は調整が終わっていたのだろう。抵抗して公務執行妨害に相当する14人を48時間以内に強制送還をしたということは、日本側の寛大な措置だった。これは、中国に対する外交的「貸し」となった。また、日中が対立したままであるとき、竹島問題と尖閣諸島問題で、日本外交は2正面作戦を強いられることになる。それを日中協議によって、回避したことになる。また、48時間以内に強制送還したことで、中国内の反日暴動は、それほど拡大しないですんだ。強制送還という処置だけでも、中国内の日本ラーメン店が襲撃され、市民が日本製(中国の工場で中国人労働者が心を込めて作ったものだと思うが)のデシカメを道路で踏みつけていた。日本車だというだけで、公安の車両がひっくり返された。14人を拘留したままであると、中国の日本企業の工場の安全も維持できないほどの暴動が起きた可能性がある。それを、事前の外交的調整のおかげで回避できたのである。
 それに、尖閣諸島への14人の上陸をめぐり、日中間が早い時期から水面下で「落とし所」を話しあっていたということは、外交的な「腹芸」「水面下協議」が不可能な状態になって久しい日韓関係とのコントラストを鮮明にした。韓国に対して、「お互いに損をしないように、日中外交関係のようなアウンの呼吸の外交接触をしたいものですね」というメッセージになっている。このことは8月24日午後、ソウル市内での日韓有識者の集まる会議で指摘するつもり。韓国の現役外交官、元外務大臣、東亜日報・元日本支局長、大学教授、日本からの特派員、日本大使館関係者ら30名あまりが参加する。香港の14人が魚釣島に上陸することを許してしまったあとは、限られた条件のもとで(14人を裁判にかけるべきという意見や、日中の友好関係を第一にして処理すべきだという日本の国内世論に耐えることができるか。中国内のデモが暴動に発展しないかを、検討する必要があった。日本の選択肢は限られていた)、日本政府は冷静に、しかし、毅然とした態度で、すべきことはしていた。とくに、中国と韓国に対して、今後の「外交資源」を確保していることに注目したい。
 それに、香港の14人の上陸してしまったことで、東京都職員が土地の調査のために上陸することの障壁はなくなった。都の職員の上陸許可申請はいったん受理された。棚上げになっていた東京都による土地の買い取り案件は、これで進み始める。香港の14人の行動がなければ、東京都職員の上陸は難しかったかもしれない。国民も東京都の選択を支持するムードが高まってきた。このようなことが起きたとき、日本人は自国の政府を批判することだけを考えがちだが、その後の展開も踏まえて、じっくりと冷静に考えてみることを進めたい。それが戦略的発想というものである。
 第三に、政府は竹島問題では国際司法裁判所に提訴することを決定した。これまでは日韓友好関係を考慮して、韓国側が提訴に応じないことを明確にしたとき、書類を国際司法裁判所に送付することは遠慮してきた。いまの日本国内世論を考えると、提訴の書類を送付する以外の選択肢はないだろう。韓国は審理を拒否することを明確にしているが、審理を拒否する理由を説明する必要が出てくる。竹島問題の詳細が国際社会の第三者の前に明らかになるということは、日韓両国にとって悪いことではない。このあと、国連や国連安保理での竹島問題の審議を、日本側が提起するのかどうかという問題が焦点になるだろう。また、韓国が国連非常任理事国に立候補する、今秋の国連の会議で日本がどのような姿勢をとるか。日韓通貨協定について、日本がどうするか。懸案の日韓情報保護協定をどうするかといった問題が山積している。日韓関係は日本にとってもっとも重要な友好関係であるということを踏まえて、日本はどうすべきかを考えたいものだ。感情的になって、報復的な対抗策を、先手先手で出してゆくとき、国益を損なってしまうことになる。
 
 
熊谷亮丸
大和総研チーフエコノミスト
Q2. 「1 - そう思う」の回答理由
日米同盟の劣化が最大の問題である。政治の迷走が、近隣諸国につけ入る隙を与えている。
Q3. コメントする
日米同盟の再構築が最大のキーポイントである。一般論として言えば、日本の文化・歴史などに関する幅広い教養を持たない政治家が、国際社会で尊敬されることはない。
Q4. コメントする
政府の対応は場当たり的な印象を受ける。

最も大切なことは、判断の機軸を明確にすることである。
具体的には、①法治国家としての論理的な正当性、②総合的な国益、という
2つの機軸で議論を整理すべきである。

今回の中国への対応は、①の視点からは、法治国家として明らかに問題がある。
尖閣諸島における中国人の行動は公務執行妨害等に当たる可能性があろう。

他方で、②の観点から、総合判断として、強制送還を行うことはありうる。
ただし、これは中長期的に極めて大きな国益がもたらされるケースに限定される。
さらに、小泉元総理のように、政府首脳が国民に自らの政治判断を直接説明すべきである。
 
 
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2. まあそう思う

坂東眞理子
昭和女子大学理事長
Q2. 「2 - まあそう思う」の回答理由
国際社会での影響力が、日米関係など安全保障面での不安定化も含むとして
Q3. コメントする
竹島に関しては、慰安婦問題など日本のイメージダウン作戦に対抗して、文化的PRも必要。
Q4. コメントを控える
 
 
坂野尚子
株式会社ノンストレス社長
Q2. 「2 - まあそう思う」の回答理由
日本の国際社会でのプレゼンス・発言力は以前から低い。しかし、世界における経済的な位置づけが低くなったことで、成長している韓国・中国の影響力が高くなり、相対的に、日本の影響力が更に低くなってしまったと思う。アメリカのビジネススクールにおける在校生の人数を聞いても、20年前はフランス・日本がアメリカに次ぐ学生数で、現在は圧倒的に中国、韓国人が多い。この影響はこれから10年、20年後に出てくるものと思われる。
Q3. コメントを控える
Q4. コメントする
それにしても、日本の発言力はどうしてここまで低いのだろうか。主張しない国と思われている。確かに、小さい小競り合いが大きな戦争につながることもあるので、2国との関係悪化は避けなくてはならないが、例えば国際法に則った対応を求めるなら、韓国の姿勢をもっと強力に非難しても良いのではないだろうか。また、香港の活動家が尖閣に上陸した際の映像なども早めに公開すべきである。
 
 
浜辺陽一郎
青山学院大学大学院法務研究科(法科大学院) 教授,弁護士
Q2. 「2 - まあそう思う」の回答理由
経済分野での日本の低落傾向は否定できず、日本の人材層が薄くなりつつある。非正規雇用の増加・年収の減少などにみられる中間層の没落や底辺の人たちの絶望感が深刻化。法的サービスの分野でも、日本の人材育成の遅れや薄さに伴う改革の遅れから様々な法的解決に不合理性・非経済性を温存しつつ、一人負けの様相。
人口が減少し、人々の考え方が保守化して安定化を志向して内向きとなっている。経済力に陰りが見え始め、日本の企業は海外で苦戦している。円高メリットも必ずしも十分に生かし切れていない。

かくして、経済分野での日本の低落傾向は否定できず、それは専ら日本の人材層が薄くなりつつあるように見える。トップのすぐれた人材は少数いるけれども、非正規雇用の増加・年収の減少などにみられる中間層の没落や底辺の人たちの絶望感が深刻化している。

かつての総中流社会のような安定感が失われ、社会的な結合が弱まりつつある。近時、「絆」が叫ばれているが、これはかつてのコミュニティが崩れていることの裏返しの現象ではないか。

また、いろいろな専門分野で似たような地盤沈下が問題となっているのではないだろうか。法律の分野でも、日本は東洋で特殊だから、法律家が少ない独自の法文化だという説明でやってきた。ところが、経済のグローバル化、様々な事象の法化に伴って、世界的に法律家の養成が進んでいるが、日本ではこれが大幅に遅れる格好になっており、東洋でも中国や韓国はその大幅増員が、日本よりも速く進みつつあって、相対的に日本の法曹界が後れを取っている。かくして、法的な紛争においても、日本の人材育成の遅れや薄さに伴う改革の遅れによって、様々な法的解決に不合理性・非経済性を温存しつつ、一人負けの様相となっている。このことは領土問題を含む様々な問題の法的解決にも、将来、好ましくない影響をもたらすだろう。ちなみに、アメリカのロースクールではかつて大勢いた日本人が大幅に減って、中国人や韓国人が増加し、その他の東南アジアの学生も増えている。(そのほか、拙著「弁護士が多いと何がよ​いのか」(東洋経済新報社)でこのあたりの問題を論じた通り)中国や韓国と比べていかに負けているかは下記も参照。
http://www.westlawjapan.com/column/2012/120213/

特に中国や韓国からは、経済力の低下だけではなく、こうした日本の人材の弱体化(法的議論・交渉力等を支える人材の弱さ)も見られているのではないか。

ただ、よその国も相当問題をかかえており、EUもアメリカも問題山積。だから、日本が良いとは言わないが、日本だけが悪いわけではないという意味で、「まあそう思う」
Q3. コメントする
可能な限り、あらゆる分野における専門家の育成を強化すべき。また、その専門能力を備えた人材を重視する社会構造が求められる。

欧米諸国では、外交、政治、経済など広い分野で、オールラウンドな法的素養をもった人材が活躍しているが、日本はそうした人材層が弱い。かつては法的な規律があまり重視されてこなかったことから、社会があまり必要としてこなかったといった事情が災いして、いつしか法的素養をもった人材育成に後れを取っていた。ここを挽回しなければ、これからのルールの構築や法的紛争の解決やそれらの交渉において劣後していくことは避けられない。

ちなみに、軍事力の強化にお金を使うことを支持する議論があるが、まったくの時代錯誤。最終的にその軍事力を行使するときは、人類・国家が滅亡する時だと考えるべきだろう。滅亡するときに愚かな選択をするものだというのであれば仕方がないが。そういうことで競争したり、張り合ったりするのはやめた方がいい。
Q4. コメントする
領土をめぐる軋轢は明らかに紛争状態。紛争を解決する方法として​は、外交交渉・協議といった話し合いができなければ、司法的救済​などの法的な手続きを求めていけというのが日本国憲法の精神。

物理的な衝突を避けるために、沈静化を求める政府の姿勢や、冷静な対応を心がける国内世論は、一応、評価してよい。しかし、一部に、状況を必ずしも的確にとらえず、「多少の戦火を交えること」を許容するかのような「毅然」とした対応を煽るの向きがあるのは極めて危険。

「毅然とした対応」でありうるのは、法的な対応しかない。これは丁度、何か身の回りで紛争が生じたときに、暴力に訴えずに、しかるべき法的な対応を取るということと同じか、似ている。確かに、国際社会には十分な法的仕組みは出来上がっていない。しかし、それを目指して努力が続けられてきたわけで、外交交渉と連携を取りながら解決の糸口を探っていくべき。最終的には、国際法が認める形でしか紛争の解決はできないと考える必要がある。

かくして、物​理的な戦争ができない以上、ソフトパワーでの裁判での決着のため​に堂々とやりあうことはあってよい。暴力による解決ではなく、法による​解決を訴えて、筋を通すことが必要。拙著「弁護士が多いと何がよ​いのか」(東洋経済新報社)は、第1章冒頭から、この領土問題解​決のために準備すべきことを論じたのだが、その辺をいいかげんに​したまま「勇敢」に何かを叫んでも無意味であるし、ある種の場外乱闘的なものにしかならない。(もっとも、場外乱闘でも、それが戦乱に発展すれば、法的な規律に悪影響を与えたり、法の規律を働かなくさせてしまうことになろう)

当面は、戦​争をしても最終的に誰も得をする国、人はいないことを相互に確認​しながら、平和的な解決(司法的解決を含む)ができるような国際的な態勢を整えるために尽力していくしかないだろう。
 
 
有馬晴海
政治評論家
Q2. 「2 - まあそう思う」の回答理由
アメリカ大統領の一般教書で中国はでて来るが日本は出てこないといわれて久しい。
かつて、世界の工場は日本であったが、今や中国。薄型テレビの世界市場は韓国にある。
世界的に影響力が落ち、軽視されている感がある。
中国の人口の10分の1しかないことで、GDPもアメリカに次ぐ二位から中国に抜かれてしまう。
財政難、少子高齢化、資源不足などが重なり、市場がしぼんでいく日本の魅力がなくなってきている。
中国から、日本製品を買いあさりに来る姿は、
中国なくして日本が成り立たない状況に見える。

そんな中、政権交代、ねじれで内政に苦しんでいる日本が里に目を向けない。
ロシアがやり、中国、韓国、香港と日本の政治力を試されている。
それでも対応がまずく、それを近隣諸国は見ている。
Q3. コメントする
先ずは、常にどういうメッセージを発信するか。
前述した通り、領土、外交に対して無頓着な国だ。
政治家だけではなく、国民もだ。
近隣諸国は、資源や偽証が金になると思っているが、日本人は裕福からなのか、無頓着だ。

円高で産業が空洞化氏、経済大国としても魅力がなくなっている。
全体に右肩下がりの日本、飽和状態、不満の無い国が世界の加藤木様相に負けている感がある。
外交、安全保障面からいけば、平和ぼけ。
毎年変わる総理、外務防衛大臣から安定的な施策やメッセージがまったくといっていいほどない。
Q4. コメントする
ただし、担当の政治家に聞けば、戦争する気があるのかという答えが返ってくる。
何よりも大切なことは、戦争にならないことだと。
そう言われれば弱腰で、
相手国のやることなすことをみているしかない。
そして法に則って淡々とメッセージを発するしかないのだそうだ。
国民から見れば悔しい思いもあるだろうが、そんなものなのだと。

それにしても、ことが起こる前の態度から、メッセージが弱いということはあるようだ。
 
 
岸本裕紀子
エッセイスト,政治コラムニスト
Q2. 「2 - まあそう思う」の回答理由
「日本の国際社会での影響力」というよりむしろ、それぞれの国において「日本という国の重要性」が減ったことがあると思う。経済分野などで実力をつけ、日本との関係を多少損ねても、ヨーロッパやアメリカなど他国との取引でカバーできると考えているからではないか。
逆に日本のほうが、例えば中国との関係がぎくしゃくすると困るという事情がある。経済で一国に過度に依存するのは問題だが、今回のことはそれを見直すよい機会ではないか。
今回の一連の領土問題では、「弱腰外交」「毅然とした態度を取れ!」などと情緒的な言葉が飛び交い、それはそれで意味がないことはないが、それだけで日本に有利に事が運ぶとも思わない。もっと冷静に、相手国が態度を硬化した際に、日本がダメージを受けないような状況にするにはどうすればよいかの対策を急ぐべきだと思う。
Q3. コメントする
四方を海に囲まれた日本は、安全保障面において、アメリカなどと、離島の安全保障についてきちんと考えてもいい時期かもしれない。
Q4. コメントする
香港の有志による尖閣上陸については、プロの活動家の行動だし、マスコミもあれほど報道するする必要があったかについては疑問である。こちらが報道することで、相手国の世論をさらに盛り上げる意図があるかもしれず、そのような戦略に乗るのは得策ではない。
日本政府の対応については、今回のことより、これまでの「穏便路線」のほうが問題であった。そこには、「問題化したくない」ということ以上に何もなかったからだ。
今回の竹島をめぐる政府の対応については、悪くないと思う。
 
 
マリヨン・ロバートソン
都市開発会社Metplan社Chairman and CEO
Q2. 「2 - まあそう思う」の回答理由
国際社会に影響力を与える政治の欠如。
国際社会に於ける影響力が、政治、文化、経済等に分けられるなか、第二次大戦後、日本は工業生産を軸として経済発展を遂げ輸出大国として、経済的な側面からは確かに影響力を持っていた。文化面でも独自の、日本古来のものや、現在見られるマンガ文化の普及などを通し、あくまでマニアックなレベルだが。多少の影響はしている。しかし、国際社会で強い影響力を持った政治組織、政治家、オピニオン・リーダーは見当たらない。
アジア圏で、明治維新以降、日本は大きな影響力(軍事力を伴ってだが)を持ち、事の善し悪しは別にして、あらゆる面でリーダーシップを取り、国際社会での存在感が有った。無論、その脅威が欧米社会に膨らみ。第二次世界大戦へと不幸な結果を招くのだが。
戦後、米国と云う用心棒に守られ、経済発展に専念し、国際間での問題、紛争、協力等の外交政治面でも、独自の政策を持たず、大意は米国に追随する形で行ってきたツケが回ってきたように思える。
Q3. コメントする
大戦後60年以上経ち、大きく変化したアジア事情をふまえ、安全保障、外交に於ける積極性と強化は早急にすべき。又、国内での政党政治に没頭し、内弁慶になりがちな政治から脱却し、国際社会にもっと目を向けるべき。全ての流通が早い現代社会では、国際間でのポジションを維持するのが国内での政治・経済のバランスを保つ鍵となる。国際政治や国際間題に直接、関与できる政治家・オピニオン・リ−ダーの育成は絶対に必要。
Q4. コメントする
日本政府の対応は、当該国のそれと比べるとかなりの温度差がある。日本的に穏やかに話し合うと云う方針では限度がある。
報道を通してだが、かなりの日本人が無関心、或いは放任している事に驚きを覚える。排他的水域、天然資源の確保は次世代の為にももっと真剣にならなければ。
 
 
岩渕美克
日本大学法学部教授
Q2. 「2 - まあそう思う」の回答理由
 領土問題を契機として、国際社会での影響力の低下とする問題の設定は適切であろうか。経済大国としての影響力が以前からあったかのかどうかも判断が難しいだろう。領土問題は領土問題として考えるべきだろう。
 結果としては国際社会での影響力の低下につながるとは思いますが、国際社会だけでの問題ではなく、国内政治の混乱が国際社会にも悪影響を及ぼしていることになる。国内政治の停滞は、単に民主党政権にだけ責任があるのではなく、同程度の責任が自民党にもあると考える。単に、ためにする議論ばかりを持ち出して、政権奪還のみが高騰の目的であるかのような振る舞いは見苦しい。与党経験の豊富な野党としての矜持意を持たない限りは、政権交代が繰り返されるのみで日本社会はよくならない。
 ただし、領土問題に限定して考えれば、単に国際社会での影響力の問題だけではなく、それぞれの国の国内問題とも関連するわけで、領土問題での、ロシア、韓国あるいは中国の民間団体の対応を国際社会での地位に結び付けるのは早計ではないかと思う。領土問題については、複数の国家が自国の領土であると主張している以上、「領土問題はないとする」今までの日本政府の対応は正しくはなく、たとえば本州であっても他国が自分の領土であると主張し、上陸等を繰り返すのであれば、領土問題は発生しているのであって、それを言葉だけで解決しようとしてきた態度こそが問題なのではないか。
 竹島は、韓国が実効支配しているし、北方領土についても同様である。 こうした状況は自民党政権下から続いているわけで、ここにきて民主党政権の外交を理由として、メディア等で声高に訴える議員には辟易とする。あまりにも自分勝手な論理を振りかざしすぎではないか。国民目線での議論を期待したい。民主党政権がいいと言っているわけではない。ボロボロである。
Q3. コメントする
 単純には文化での貢献が大きい。もちろん経済は今まで同様に、国際社会、とりわけアジアではリードしなく絵はならないと考えるが、より文化的側面での支援を、国を挙げて取り組むべきだ。昨年内閣府の派遣でドミニカ共和国に行ってきたが、正反対に位置する国で、しかも教育に金をかける発想の乏しい国で日本語の語学学校では、多くのドミニカ人が日本語を学んでいた。ほとんどが、コミックとドラマを原語で理解したいとする人たちであった。そこの講師に聞いたところによれば、そこの受講生が日本に行ける可能性はほとんどないとのことであった。現状でも、ポップカルチャーはかなり世界的に評価されている。くだらないという人たちもいるであろうが、きっかけとしては平和で、ワールドワイドな手段である。活用しない手はないし、世界を席巻できる可能性を秘めていると思われる。
Q4. コメントする
 日本政府は断固たる姿勢を問て散るように思われるので、評価したい。しかしながら、李大統領の原因とされる国内での人気回復のための強硬手段と同様の意味にとられかねない。冷静でかつ信念を持った対応をすべきである。この手の議論は、すぐに右傾化や右翼行動と関連されがちであるので、正当性はきちんと説明すべきであるし、日本政府の対応を世界に主張すべきである。その意味で国際司法裁判所への提訴は、遅きに失した感もあるが、評価に値する。
 国民も、これを機に正しい知識を身に着けるべきである。ともすれば、日本国内での議論は当然日本の領土であるとなるが、諸外国の国内での教育もそうして培われているので、客観的な事実として理解しなくてはいけない。それ故に、なぜ実効支配されているのかも含めて情報を開示しながら世論を盛り上げていく必要がある。特に行動に移すことを必要とするかどうかは慎重にすべきであはあると思うが、ただ先送りするだけでは、定期的に摩擦が起こることを看過することになる。徐々に悪化していく可能性もあるわけで、対応を見直すなり、確固たる姿勢を再認識すべきであり、それに世論もついてくると思う。
 
 
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3. あまりそう思わない

夏野剛
慶応義塾大学特別招聘教授
Q2. 「3 - あまりそう思わない」の回答理由
一連の今回の事象は相手国の国内事情の側面が強いので日本の国際的影響力が直接的原因ではないと思う。しかし、民主党政権下で国際社会における日本の立ち位置が不明確であることは間違いなく、間接的な原因になっていることは間違いない。特に竹島の問題に関しては、どうせ日本はたいしたことはできないだろうから国内向けパフォーマンスに利用しようという意図に見える。舐められているとしか言いようがない。
Q3. コメントする
北方領土に関してはもっと早く経済援助を武器に、部分返還でもいいから動くべきだった。ロシアが経済力をつければつけるほど解決は不可能になる。時間はロシアに味方する。早めの創造的な解決法を探るべき。両国乗り入れの国際経済特区とか。
竹島に関しては韓国がこのような行動に出ることは予想不能で、あらゆる選択肢を考える必要がある。国際的な賛同を得るために、あらゆる国際会議でこの話題を説得力を持って主張すべきだし、粘り強く訴えていくべき。新大統領候補への働きかけも不可欠。韓国世論に対する呼びかけも。両国の経済的、文化的、社会的つながりは深いがゆえに本当に残念である。
尖閣に対しては、この機会に実効支配のレベルを上げていくべき。海保の大幅強化、自衛隊の駐屯など、躊躇なくしかも時間をおかず次の手を打たないと、今後さらに上陸を試みる活動家は出てくるだろう。合わせて日米関係の信頼回復が必須。国際社会の構図は今後膨張する中国とどう向き合うかが中心となる。その際に日米関係は極めて重要。
Q4. コメントする
外交戦術は表に出てくるものではないので、政府がクレバーに事態を掌握し、長期戦略に基づいて事態をハンドリングしていることに期待したい。できれば素人政治家はあまり口を出さないで欲しいと思う。国内世論もあくまで冷静に政府の行動を支持することが大事。後ろから鉄砲打つのは他国を利するのみ。
 
 
竹田圭吾
国際ジャーナリスト
Q2. 「3 - あまりそう思わない」の回答理由
国際社会における日本の影響力がこの数カ月で著しく低下したという根拠が思い当たらない。政治の慢性的な機能不全、民主党政権発足以降の外交分野での失態(温暖化対策、普天間問題等)、東日本大震災と福島第一原発の事故などによって日本の国力発揮に相当な制約が生じているという認識は諸外国において共有されている可能性があるが、一方でヨーロッパやアメリカの財政危機が表面化するなかで日本経済が堅調を保っていること、震災において社会の安定性が再確認されたこと(ソーシャルキャピタルが見直されている)などは、国際社会において日本の評価を安定させる要素として機能しているようにも思われる。なので、国際社会での影響力が低下しているとしても、それがすなわち一連の事案の発生を直接的にもたらしているかどうかは判断を留保せざるを得ない。
Q3. コメントする
エネルギー資源、食料資源の多くを輸入に依存する国として、日本は多国間関係の安定、国際情勢の安定に寄与することがそのまま国益に結びつく。一般に言われるグローバル化だけでなく、海洋権益の争奪戦が今後さらに熾烈になっていくであろうこと等を考えると、特定の分野だけでなく上記のすべての分野において影響力を強化していく必要があるだろう。
Q4. コメントする
シーレーンの問題、中国の「封じ込め」の問題、海底資源の問題、そして今回の竹島の例に見られるような当該国の国内的な事情によるナショナリズムの問題などから、アジアにおいては領土と領海をめぐる紛争や対立が従来以上に先鋭化する傾向にある。戦後一貫して領土問題に直面しながら、対外的にも対内的にもそれを直視することを怠ってきた日本にとって、受動的とは言えそうした現実に向き合わざるを得なくなったことは、原則論だけを唱えて思考停止に陥った状態を脱却し、現実的な解決策を模索するうえでもある意味では好機と呼べるかもしれない。同時に、日本と中国と韓国がお互いの関係性において、あるいは対アメリカ、対ロシア、対北朝鮮、対東南アジア諸国において、あるいは欧州の財政危機に象徴される金融不安への防潮堤として、お互いの存在が特別の意味をもつ戦略的なパートナーであるという「もう一つの現実」についてもきちんと向き合い、その重要性を再確認する機会としても活用されなければならない。メディアには、この問題が上記の2つの点において誤った方向に進んでいないかどうかを間断なくチェックすることが期待される。
 
 
小西克哉
ジャーナリスト 国際教養大学大学院客員教授
Q2. 「3 - あまりそう思わない」の回答理由
国際社会での影響力の低下という要因は、マクロな現象でこの夏始まったことではありません。言わば一連の事案の遠因というべきものです。     
問いの7月、8月の短期間のうちに「異常事態を引き起こしている」要因は、よりミクロな要因が影響していると考えるのが妥当だと思います。 

3つの事案には、それぞれ異なった近因があります。 その主因は野田政権ではなくて、ロシア、韓国、中国(もしくは香港、台湾を含む中華文明圏)の内政事情に依るものです。 
 
ロシア: メドベージェフ首相の国後島訪問は、大統領時代の訪問も合わせて,  ロシア国内の右派の機嫌取りや、ポピュリズム政治の要請というより、対日交渉への誘い水と、捉えるのが合理的です。 この背景にはやはり、メドベージェフのボスたるプーチン氏の対中国、対米国との三極ゲームの中に日本を取り組み、北東アジアで有利な経済外交を構築したいというグラントデザインが見えます。 
    
中国: 尖閣のケースは、胡錦濤政権の意思というより、崩壊寸前だった香港の民間右翼団体「保釣行動委員会」の夏季恒例事業が、たまたま種々の要因で成功したということに尽きる。1に、親北京の香港実業家、劉夢熊氏の資金援助,2に、香港フェニックスTVとのタイアップ、3として香港の海事当局が、今回は出港を阻止できなかったこと。 この背景には秋の党大会を睨んで反胡錦濤派の
対外関係を緊張させたいという思惑が絡むという見立てもあるが、定かではありません。  

韓国: 竹島のケースは、巷間指摘されているとおり、イ・ミョンバク政権のレイムダック打開策そのものです。  
Q3. コメントする
端的に言って、経済と外交の分野で、過去十数年、韓国が追求してきた国際社会でのグランドストラテジーを少しでも、模倣できれはいいのではないかと思います。 
その韓国は、今回のイ・ミョンバク政権の一連の外交的非礼より、多少影響力が低下したと、思います。 
Q4. コメントする
国内世論の対応は、かなり問題があります。 地方議員を含めた、右派の方々の対応は、地方とはいえ、代議員の行動という点で、香港の右翼団体の行動とは区別され、北京政府の付け入るところとなりうると、思います。 
民主党政権は、プーチン政権のあいだに、まず対ロシア、北方領土の交渉から真剣に取り組むべきたと考えます。 尖閣問題は、中国も先鋭化させたくないという立場なので、現状維持。 竹島は、最も時間が、かかりそうです。  
 
 
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4. そう思わない

中津孝司
大阪商業大学総合経営学部教授,国際問題評論家
Q2. 「4 - そう思わない」の回答理由
領土問題は実効支配する国の立場が強い。日本の対外的影響力はそもそも弱く、実効支配する国の国内事情が優先されていることがメドベージェフ首相の国後島訪問、李大統領の竹島訪問に投影されている。
 歴史的経緯はともかく領土問題では実効支配している国の立場が圧倒的に強い。周知のとおり、北方領土はロシアが、竹島は韓国が実効支配して久しい。メドベージェフ首相が国後島を、李大統領が竹島をそれぞれ訪問したが、それは実効支配する側の国内事情が優先されたからであり、日本の対外的影響力がここにきて突然、低下したからではない。日本の外交的影響力はもともと弱い。
 北方領土に関しては、1956年の日ソ共同宣言に即し、外交交渉を経て、色丹島と歯舞群島とは返還されるだろう。その後、日露平和条約が締結されると考えられる。しかし、国後島と択捉島とは永遠に返還されない。モスクワは中国海軍の太平洋展開を阻止すべく、ここに軍事拠点を設置する目論見だからだ。これはクレムリンの軍事戦略であり、日本の影響力低下とは関係ない。
 竹島に関しては、李大統領は自らの訪問をもって名実ともに領土問題に決着をつけたつもりでいる。日本との間には従軍慰安婦問題のみが残されただけという外交的立場を堅持したい。それは大統領選挙を見据えた戦略であり、やはり日本の影響力低下とは無関係だ。
 尖閣諸島は日本が実効支配している関係上、日米安全保障条約の適用対象となるが、北方領土と竹島とは対象外だ。日本には日本固有の領土だとの原則を繰り返すしか方策は残されていない。取り返すには戦争しかないだろう。
Q3. コメントする
軍事力の強化、特に、国境付近の抑止力強化が必要だ。
Q4. コメントする
国内世論はともかく、日本政府の対応については、基本的立場を繰り返し表明しているに過ぎず、対抗措置を打ち出していない。北方領土と竹島を実効支配するには武力で取り戻す以外に打つ手はないことを国民に説明すべきだろう。
 
 
南淵明宏
医療法人社団 冠心会 大崎病院 東京ハートセンター  心臓外科医
Q2. 「4 - そう思わない」の回答理由
案ずるなかれ!日本人の日本人らしさを失わない限り、日本の日本らしいプレゼンスは永遠に世界に君臨する!
日本は極東のサムライとヤクニンの国。いつまでもその伝統と不可解さ、恐るべき団結力と優しさ、一見間抜けに見える謙虚さ、それが脈々と受け継がれていて特徴的なキャラを際立たせている点、不滅だ。
最近ぜんぜん怒ったことがない日本がひとたび怒ればどの国だってビビるに違いない。
今までも他国の国際紛争や経済政策でまともに独自の意見など提案したことがない(クジラは例外か・・・)のだからちゃんとまともに国際会議に出席して意見を英単語三つぐらいでも発言すれば、例えば We think otherwise・・・とか言えば世界は度肝を抜かれるに違いない。とにかく普段は何も言わないでニコニコ「Oh yes,yes」だけ発している「お人よし」のidiotとみられているのだから。
バカを総理大臣にしていても、あんなバカでも総理が勤まるだけの一般国民レベルの誠実さ、正直さ、律義さ、潔さが国中に蔓延しているという素地がそうさせているのだ。つまり日本社会には余裕がある、とも解釈できる。電気料金と消費税の一体値上げについても、国民はびくともしないぞ!つまり、いつまでたってもおめでたくいられるだけの底力が備わった国民なのだ。それにこれまで世界のどの部分に積極的影響力が認められてきたのだろうか?何もないではないか。昔からすごくお人よしだけど何を考えているのかわからないし、悪い奴ではなさそうだし、とにかく言葉がぜんぜん通じない奴ら、といったこれまでのこの国のプレゼンスが変わることは今後も決してない。
Q3. コメントする
役人が手前味噌でお手盛りの税金無駄使い確実の、例えばメディカル・ツーリングのようなアホらしいプロジェクトを絶対にしないこと。とにかく行政主導で何をやっても必ず失敗するので絶対に止めてほしい!とにかく行政は一切何もしない。これで日本はもっともっと飛躍する。政治家はもともと日本社会の役立たずか飛び切りのアホをスキミングして出てきた奴らだからどうせ何もできないだろうから今まで通り勝手に遊んでいたらいい。
Q4. コメントする
支離滅裂。意味不明。どうせ何も考えていないし自分のリスクになることは何もしたくないのだろう。教育委員会の延長線上に政府や行政機関がある。これは全国民の感慨だろう。誰も何も期待していないから安心してほしい。
 
 
土居丈朗
慶應義塾大学経済学部教授
Q2. 「4 - そう思わない」の回答理由
今般の一連の事案は、韓国、中国の内政面での政権基盤の弱さに起因している。韓国や中国の政権が国内のナショナリズムを制御できるだけの基盤や能力を持っていれば、こうした事態には至らないと考える。
一連の事案を、日本国内でも政権基盤の弱さから、政権の不作為や対応のまずさのせいにする向きがある。これは、実際にそうかどうかというより、そうした政権批判にどれだけ政権側が耐えられるか、というチキンレースの具に、一連の事案がされているように思われる。
Q3. コメントする
日本にとって、最も影響が大きく、かつ隣接しているがゆえに重要になってくるのが、対アジア諸国の外交である。

日本以外のアジア諸国が最も欠けているのは、「先進国としての礼節」である。国際ルールを守り、自ら他国に大きな損害を与えるような行為は差し控えるという経済取引上の礼節である。もちろん、まだ新興国で先進国並みの経済力や所得水準に達していない国もあろう。しかし、今後経済成長とともに所得水準が上がる。そうなれば、礼節をわきまえた経済取引や外交が当然ながら求められる。

日本は、1980年代までにさんざん欧米諸国からたたかれて、「先進国としての礼節」に対する理解が深まったといえる。しかし、韓国や中国は、まだそうした「礼節」に欠く面がある。大人の対応ができる欧米諸国に比べて、アジア諸国の対応はまだまだ「子ども」の対応しかできていない。そうした現状を踏まえ、日本は、アジア諸国に「先進国としての礼節」を浸透させる役割をもっと果たせると思われる。
Q4. コメントを控える
 
 
伊東乾
作曲家・指揮者 ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督
Q2. 「4 - そう思わない」の回答理由
オリンピックの金メダルと大差ない各国首脳のパフォーマンス。内政問題から目をそらすべく民心を買う右傾化したアピールは外交以前。海外為政者の政治的発言内容を真に受け、日本のプレザンスが低下したと思う日本人がいれば、そのほうが情けない。
オリンピックと並行してこの種のアピールが強調されるのはいつものこと。金メダル同様、国威発揚の一種と見ることすら可能なものだ(北京オリンピック時のロシアの南オセチア侵攻を想起のこと)。
ロシア、韓国、国おのおの事情は異なるものの、一定範囲で共通する背景として、外交以上に内政での問題すり替えに民心を買う右傾化したパフォーマンスを行う側面にも注意する必要がある。たかが韓国大統領の政治的な発言内容を間に受けて日本のプレザンスが低下した、と思う日本人がいれば、そのほうが情けない。
Q3. コメントする
戦略能力、プレザンス上昇に直接資する国際発信力ある人材を育成し、集中的な予算投入など強化策を実施せねば、地すべり的に影響力は低下してゆくだろう。関係各位はしっかりされたい。
Q4. コメントする
社会と経済の停滞はグローバルな共通項。日本がロシアや韓国の世論程度に足並みをそろえる必要はなかろう。いたずらに右傾化したメッセージで一時的に民心を買うような愚行は避¥。国際社会への定見を各自が養うことが求められよう。
 
 
常見陽平
千葉商科大学国際教養学部専任講師
Q2. 「4 - そう思わない」の回答理由
領土問題に関する影響力はもともとなかった。これが問題。
もともと領土問題について、強い姿勢を示してこなかった。

「日本の国際社会での影響力」の低下は政治・経済など様々な側面で指摘されているが、領土問題に関する強い言及は今までになかったのだから、この件に関しては「低下」ではない。

平和ボケが露呈しただけ。
Q3. コメントする
月次な答では、クールジャパンで文化という話になるのだが
国の競争優位の再構築、国際的に競争力の高い産業の育成に注力すべし。

また、安全保障、外交、政治に今こそ力を入れるべし。
これらの分野に強いエリートを中長期で育成するべき。

平和ボケしていてはいけない。
Q4. コメントする
政府は日和見的としか言いようがない。

ただ、国内世論は原発デモ同様になかなか残念で、感情的な「けしからん論」の域を出ていない。
 
 
にしゃんた
羽衣国際大学教授/落語家
Q2. 「4 - そう思わない」の回答理由
影響力の低下があるならば、それは、日本の背後のアメリカの相対的な影響力低下であろう。『日本の信用』は依然として変わらない。いずれにせよ、影響力のあるなしで他国の領土や海域の侵略は断じて許されべからず。
ほんまですね~。出来ることなら、日本にエンジンつけて大陸から離れたいですね。

さて、一連の事案の発生に鑑みて、日本の国際社会での影響力の低下が原因であることがいがめられないが、それは単体とっしての日本ではない。と言うのも、そもそも太平洋戦争終了後の日本に国際社会における影響力などあったのだろうか。国際社会に影響力を持っていたのは日本の後ろに大きく聳えるアメリカであり、今回のロシア、中国、韓国による一連の行動は、国際社会におけるアメリカの相対的な影響力低下によるものだと考えるのが妥当ではないか。

しかし、日本は最も意識すべきは、国際社会は、世界には200を超える国があるということと『日本の信用』は依然と世界的に高いことである。自信を持つべきである。

日本は、狼に囲まれた羊。もしくはいじめられっこのようにも見える。タカられ、脅かされている。高齢化も進んで世界への影響力どころか日本を守れる心配になる。ただ、影響力のあるなしで他国の領土や海域の侵略は断じて許されるべきではない。国際社からも許されない。
Q3. コメントする
それは、民主主義や品性を含めた広い意味での「文化力」であろう。中国も韓国もロシアも、民主主義の成熟度においては、日本より相当遅れている。劣っている。中国、韓国、ロシアの政府と、同じレベルで論争する必要はない。中国、韓国、ロシアの国民も、自分の生活に満足、納得した上で、日本に対する過激な抗議行動に出ているのでもない。

三猿の出番です。問題を起こしている国の低次元の言動に対しては、見ざる、言わざる、聞かざるで良い。我々日本の仲間(相手)は、あくまでも国際社会である。国際社会に向けて、見る猿、聞く猿、大いに言う猿でありましょう。三猿に似た話が孔子の『論語』の中に、「非礼勿視、非礼勿聴、非礼勿言、非礼勿動」とあるようですが、中国の方が知っているのか、たくさんいる、中国人の親友にも聞いてみたいと思う。『国際』に留まらず、私たち、個々人が質の良い『民際』に力を注ぐべきである。

日本は落ち着いて、成熟した国際社会を巻き込んで『大人の地球人』として、話し合いの姿勢を持ち続けていけばよい。時代が確実に変わっている。旧友が会う度に坂本龍馬が愛用したものが変わっていたようである。長刀の次に短刀を、短刀の次にピストルを、ピストル次に万国公法を。旧人に『万国公法』を見せ『これからは世界を知らなければならない』と言ったそうである。

言うまでも無く、戦い)とか、もめごとを大前提にして影響力のあるなしを論じるのは実に空しい。近隣各国で日本製の品々(アニメなども含む)が大人気で、そのニセモノが横行しているのは、これは実に『楽しい影響力』とは思いませんか!
Q4. コメントする
今の時代は、政府間の対立があっても、国民レベルでは協調できるし、国民レベルでは対立していても、政府間で協調できる。情報化時代の国際社会とはそんなものである。今、一番気を付けなければならないのは、政府間で必要以上に対立・対決姿勢を強調し、国民レベルで対立・対決から衝突へと危機を高めることでしょう。『ナショナリズム』である。

それも『ネット時代のナショナリズム』である。自分の境遇への不満が外国(人)排斥につながる。人が(匿名で)不満を爆発させて声をあげれば、別人がさらに大きい声をあげる。政治の世界では、無責任なネット上の声を利用しようとする勢力もある。ヒットラーの出現である。私はこの雰囲気、そしてこの事態を恐れている。

野田政権を倒す目的で、今の日本政府の外交姿勢を批判する勢力は、 『自分なら現実論としてこうする』という政策論争をしているのではなく、政局に利用しているだけに過ぎない。泣きたくなるほどレベルが低い。それでは、レベルは、問題の国々と同じではないか。

中国、韓国、ロシアの政府と国民が派手、派手しく発言し、行動しても、国際政治、国際社会は日本の『大人ぶり』を高く評価するに違いない。中国、韓国、ロシアの政府と国民はいずれ、「自分たちがまるっきり分からず屋の子供で、大人社会からバカにされていた」、と気づくだろ。
 
 
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5. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)

本田宏
医療制度研究会副理事長
Q2. 「5 - その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)」の回答理由
 無条件降伏で敗戦、日本は米国の占領国家となったが、朝鮮戦争•冷戦•ベトナム戦争等の影響で国連加盟や沖縄返還がなされたにすぎない。経済復興は果たしたものの日本は外国から見れば金はあるが完全に米国傘下の国と見られてきた。日本の影響力に過大な評価は禁物だ。
 無条件降伏で敗戦、戦後マッカーサーに進駐され、米国の影響下で日本国憲法は制定された。日本は米国の占領国家となったが、朝鮮戦争•冷戦•ベトナム戦争等の影響で国連加盟や沖縄返還がなされたにすぎない。経済復興は果たしたものの日本は外国から見れば金はあるが完全に米国傘下の国と見られてきた。例えればドラえもんの米国はジャイアン、日本はスネ夫、元々日本の影響力は援助金(金)以外は少なかったとみるべきだろう。日本の影響力に過大な評価は禁物だ。
Q3. コメントする
 日本はその影響力を今までのような経済援助のみでなく、原発収束に向けた核燃料廃棄物処理産業の研究•育成や代替エネルギー開発と世界への提供、さらに世界が直面する高齢化社会を乗り切る医療•福祉機器やシステム構築、さらに独自の文化の発信による世界平和貢献などに力を注ぐべきだ。そのためには、それらが可能となるような国内産業体制整備とともに積極的な海外貢献を応援すべきだ。
Q4. コメントする
 オリンピックや領土問題で、メディアは国民の愛国心を過剰に煽っているように見えることが大変気になる。 今回の領土問題を冷静に見れば、米国にとっては日・中・韓がまとまらない方が、アジアにおける自身のプレゼンスを確保できる、つまり東アジアを分断して統治する戦略という側面があることを忘れてはならない。
 戦後米国の占領を受けて、従属・依存してこざるをえなかった日本が、冷戦収束後に大きく変わる世界のパワーバランスの中でどのように生きていくのか、冷静な対応と行動が望まれる。
 一時の愛国心の高揚によって、一般国民が塗炭の苦しみを味わった先の大戦の轍を21世紀に繰り返してはならない。
 
 
原田曜平
博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー
Q2. 「5 - その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)」の回答理由
(この設問への回答は控えます。)
Q3. コメントを控える
Q4. コメントする
私の研究対象である世界の若者、特にアジアの若者において日本の影響力が低下し
ている、ということは事実ですので、この点について言及してみたいと思いま
す。アジアは若者人口が多い地域です。アジアの若者において日本の影響力が低下
しているという事実は、アジア地域における日本の影響力低下にも大きな影響を与
えている、と見ています。

私はここ数年、日本や中国のみならず、インドネシアやベトナムやタイやミャン
マーの市場調査及び若者たちへの大規模な聞き取り調査を行ってきました。その結
果から言いますと、アジア地域の若者における日本の影響力は、ジャンルによって
は低下し、ジャンルによっては増しており、結果トータルで言えば低下してい
る、と感じています。

まず、日本食、車、アニメ、アダルトビデオの4ジャンルにおいては、確実に日本
の影響力は増しています。

日本食はアジアの、特に健康志向になってきている女性に「ヘルシー」という理由
で大変人気です。日本の外食チェーンもアジアで調子がかなり良くなってきてはい
ます。但し、日本に必ずしもお金が還元されているわけではない、という点は問題
かもれません。(これはあくまで余談ですが、タイとミャンマーで一番人気の和食
店「フジヤレストラン」はタイ人が経営していますし、日本人以外が経営している
和食店も数多くあります。)車もアセアン地域での日本車のシェアは8割ですし、ア
ジアの若者にとって、日本車は強い憧れの対象になっています。アニメに関して
は、日本の寡占状態だと思いますが、残念ながら、海賊版のDVDやインターネッ
トの違法サイトで無料視聴されてしまっていることが多い状況です。アダルトビデ
オに関しても、他の国の追従を許さないくらい日本の寡占状態ではありますが、多
くは無料視聴されてしまっています。

その一方で、これは既によく言われていることですが、家電、ドラマ、歌手、映
画、ドラマ、コスメ、ネットゲームに関しては主に韓国の勢いに押されている状況
だと言わざるを得ません(コンソールゲームは日本の独壇場ですが、ネットゲーム
に関しては韓国・中国企業が強い)。特にこれらのジャンルは、若者のライフスタ
イルにとって、非常に重要なものばかりですので、アジアの若者文化において日本
の影響力が低下してしまっている直接の原因になっているように思います。

特に私が大変残念なのが、アジア全域で韓国のアイドル「スーパージュニア」を知
らない若者はほとんどいないであろうと思われる状況であるのに対して、特にアセ
アン地域では「知っている日本人」という質問に対し、回答できない若者がかなり
の割合を占める、ということです。それだけ日本が、少なくともアジアの若者に
とっては、身近でも憧れの対象でもなくなってきていることを示していると思いま
す。

アセアン地域で知っている日本人として若者の口から出てくるのは、これは男子限
定なのですが、AV女優の「蒼井そら」さんが多いです。彼女はアジアで最も有名
な日本人かも知れません。他にはせいぜいサッカーの「中田英寿」さんか「香川真
司」さんで、ほとんど挙げられないケースが通常と言っていいでしょう。アジア地
域で日本の影響力を上げるために、得意分野での影響力は維持しつつ、苦手分野に
一丸となって取り組んでいかないといけません。

これからの日本は、若者人口の多いアジア各国に対して、若者のライフスタイルに
関連する分野の影響力向上に注力していく必要があると思います。これが実現でき
ればアジアにおけるベースとしての日本ファンの数を増やすことができ、ビジネス
上の成果のみならず国家間の関係を良好化することにも繋がるかも知れません。
 
 
前田宏子
政策シンクタンクPHP総研国際戦略研究センター 主任研究員
Q2. 「5 - その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)」の回答理由
日本の国際社会での影響力の低下と言えなくもないが、どちらかといえば中国や韓国、
新興国の国力が上がってきたためという方が適切。日本の国際社会における存在感は
下がっているが、影響力はそれほど下がっていないのではないか。
日本の政権が安定していないため、一貫性のある戦略的外交を展開しにくいと
足元を見られている部分はあるだろう。韓国については、選挙を間近に控え、外交の
合理性より国内を意識している側面が強いと思われる。
Q3. コメントする
安全保障の分野では、日米安保を基軸として強化しつつ、他国との協力を推し進めること
が重要。また、東アジアの秩序維持のためのルール策定においてリーダーシップを
とっていくべき。
それぞれの分野で国際的に活躍できる人材の育成も重要。
経済分野でも科学でも学術でも、やる気のある人間の脚を引っ張るような規制や撤廃
していかなければならない。日本人のみならず、優秀な外国人が日本で働くように
なるためにも必要な措置である。
外交政策だけを強化しても、日本の政治や経済に魅力がなければ影響力の強化に
結びつかない。「重要なことが決められない国」というイメージを払拭し、国内の
様々な重要課題を解決していくことができるかが、実はもっとも重要。
Q4. コメントする
野田政権は、外交については堅実な舵取りを行なってきたと思うが、内政に忙殺
され、相手国や国内関係者の動きを把握するのが遅れた部分はあると思う。
どの国も領土問題については国民は感情的になりがちだが、重要なのは、国益を
守るための方策をどうするかということである。「相手が悪いのだから、
こちらも遠慮せず同様の手段を取るべき、そうしないのは弱腰」というのは、
合理性がなく、役に立たない議論である。
北方領土、竹島、尖閣諸島と、それぞれに状況が異なるので、ひと括りにする
わけにはいかないが、尖閣については、今のところ中国政府も問題の深刻化を
望んでおらず、今回の上陸者の強制送還については、あの対応でよかったと考える。
しかし、今後の中国の出方次第では、実効支配をさらに強化する(施設の設置、
人の巡回など)必要が生じるかもしれない。それは、衝動的かつ単発に行なわれ
るべきでなく、その際の中国政府の対応や中国国内で起こる反応の予測、
尖閣を防衛するために必要なオペレーション(平時、有事)、そのために必要な
人材と予算、中国における邦人や邦人企業の保護、損害を受けた日系企業への
補償、国際社会に対するアピールの方法など、総合的な政策の一環として実施
されるべきものである。また、これらは大声でアピールする必要はなく、
粛々と進められるべき類のものである。
解決の非常に難しい領土問題を二国関係の前面に押し出すことは、両国の利益を
損ない、賢明ではない。
 
 
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