番組審議会

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第467回 番組審議会議事録概要

1.開催日時

平成29年 5月10日(水)正午より

2.開催場所

東京都港区台場2-4-8 フジテレビ本社

3.出席者

  • 委員長
  • 但木敬一
  • 副委員長
  • 神崎仁
  • 委員
  • 梓澤和幸、大石静、岡野光喜、岡室美奈子、林真理子、毛利衛、八木秀次
  • 局側
  • 亀山社長、遠藤専務、鈴木専務、稲木専務、岸本常務、崎山取締役、西渕取締役局長
    清水執行役員局長、石原執行役員局長、金田局長、塚越局長、平松局長、小田局長
    中山担当部長、宮道部長、瑞光部長、高橋新週刊フジテレビ批評担当
    羽鳥P、西坂P、鈴木室長、牧野部長、狩野編成担当、柴崎室長、小林部長、熊谷番組審議室

4.議題

月9ドラマ『貴族探偵』
2017年4月17日(月)21:00~22:24放送

審議番組について、各委員からは以下のような意見が出された。

  • 今シーズン一番話題のドラマ、期待して楽しみに見た。初回、正直ちょっと空回りしているという印象だったが、2回、3回とこの面白さがわかってきた。若い人向けだが、むしろ大人が見た方が面白いのではないか。
  • いろんなもののパロディー。アガサクリスティ、つかこうへい劇団、2時間ドラマなど、小ネタが出てくる。見始めると癖になる面白さ満載のドラマだ。
  • 第1話でテントの中に招き入れた時に「ようこそ、わが家へ」と言わせた。あれで、かつてのドラマの相葉さんの主人公がポンと来てしまう。そうするともう貴族(のイメージ)にはなり得ない。敢えてあの言葉を使わせたのはなぜなのか。
  • 月9に相応しい力の入った配役陣であった。警部役は、凄くいい。役者の持ち味をよく引き出している。
  • 貴族役がいて使用人達がいて、非常に持って回った推理劇だ。推理劇の一番の最初の入りは結局、誰がやられ、誰が疑われるかという問題提起をスパンと出すのが大事。
  • 刑事達が、被疑者を任意同行でパトカーに連れていき、手錠をかけた。任意同行でパトカーの中で手錠をかけるのはあり得ない、リアリティが失われる。
  • この原作をなぜ選んだのか、不可解。奇抜な設定とからくりは描いているが、人間の心を描いている原作ではないと思う。
  • 探偵対探偵対警察という構図もとてもわかりにくいし、登場人物も多過ぎて、1回見ただけでは人物の配置を理解するだけでも難しい。
  • セットデザインも照明デザインも素晴らしいし、カメラワークも本当に素晴らしい。フジテレビならではの技術力だ。
  • ドラマは視聴者が、登場人物の誰かに自分を投影できるか、あるいはストーリーが面白いか、あるいは作者の哲学に共感しているか。この三つを実現するには、やはり人間の心を深く描かないと出来ない。ミステリーでもコメディでもホームドラマでもラブストーリーでも、何でも同じ。
  • このドラマ自体がファンタジーという設定なのだろうが、貴族も神奈川県警も出てきて、ファンタジーなのかリアルな世界を見せようとしているのか、狙いが中途半端な感じ。
  • 最後の推理で大どんでん返しがあるわけだが、しかし一件落着ということで気持ちがすっきりしないままに終わってしまう。
  • 最近の月9が低年齢化していると感じる。私は大学でテレビドラマの歴史の授業を担当して、かつての月9の名作ドラマや、フジテレビが作ってきた恋愛ドラマ、『ロングバケーション』とか『恋ノチカラ』とかを見せると学生が本当にびっくりする。大人のドラマだと。今の月9は正直、出演者のファンは見るだろうが、それ以外は大学生も見ていない。中高生向けのドラマだろうと。
  • 胸キュンでいいのだが、表面的な「壁ドンされて胸キュン」みたいなものではない、視聴者の心を本当に掴むようなドラマ作りをしていただきたい、月9ファンとしては心からそう思う。
  • 久しぶりに月9を見た。第1話ではキャラクターと相関図がわからなくて、もう一回見直さなきゃストーリーがわからなかった。
  • 視聴者に推理させる情報が、時間が短いせいなのか余りない。尋問シーンで初めて推理が行われ、そこでメイドさんが立派な相関図を作ってくるが、もうちょっとワイドショーみたいに詳しく説明していただければ。
  • 第1話を見終わった時に、これはどういう作品として見ればいいか、推理番組として見るのか、コメディとして見るのか、脇役の演技を中心にして見るのか、評価の対象は一体何なのかがよくわからなかった。
  • もし視聴者に推理させようとするなら、推理するための手がかりの出し方が雑過ぎて、あれを推理することは視聴者には不可能だ。

それに対して、制作サイドからは以下のような発言があり、委員とのディスカッションとなった。

  • 今回、月9の枠でファンタジックな作品をやりたいということと、『HERO』や『ガリレオ』のように、『貴族探偵』もニューヒーローを生むドラマを作ろうということで企画した。
  • 「ようこそ、わが家へ」という台詞は反省する点と、満を持してやったという点がある。視聴者のご意見も分かれた。「ようこそ、わが家へ」と言った瞬間のネット上の騒ぎ方、盛り上がり方はしてやったり、ファンサービスとして自信を持ってやった部分もある。
  • 人間の心をきちんと描いた縦線みたいなものが最終回に向けては見えてくる。現状では、まだ、とにかくこの60分間楽しんでもらうことを徹底している。そこは余りブレずに頑張っていきたい。
  • 任意同行で手錠をかけることはないということだが、作りとしては、犯人が自白した後に逃げるとかナイフを持って、それを捕まえるということで逮捕という行動にはしている。

委員

  • 殺人とは違う、現場での現行犯というものを構成したということか、例えば公務執行妨害とか。ならば、現行犯逮捕のリアリティとしては、「公務執行妨害の現行犯で逮捕する」と言って、ガチャッと行くのはあり得る。それが全然わからなかった。任意同行だと思って見ていた。

制作サイド

  • 勉強になります。
  • 視聴者も一緒に犯人を捜し、当たったという喜びもちゃんと作っていかないといけないと感じた。
  • 見終わってすっきりしてもらって来週もこの世界観に浸りたいということにしていきたいと作っているドラマの中で、たくさんの委員から最後に気持ちがすっきりしないで終わってしまっているというお話があった。1話完結の気持ち良さももう一度考えて作っていきたい。

委員

  • 楽しませるとはどういうことかというのはドラマ作りの根幹に関わること。楽しいドラマでも心に深く迫ってくるようなドラマはたくさんあるし、これをやったら楽しいだろうみたいな薬を処方するようなことではない。
  • 楽しみというのは人と人、役者が声を発し、肉体を使って生きている姿を見せるわけだから、その心の機微が伝わらなければ楽しくない。その心の機微が伝わっていなくても、ギャグ的面白さはあると思う。作り手の求めていることは、人間を深く描くこと、心の機微で面白いと思うのではなくて、ギャグ的センスの良さを繋げていきながら殺人事件も解くということを多分狙っているんだと思う。そのように私は理解した。
  • 制作側としてはファンタジックな推理番組ということで断固最後までやっていくということで、ぜひ頑張ってもらいたい。

5.その他、報告事項。

その他の、フジテレビ、あるいは放送全般についてのご意見。

<報道について>

  • 5月3日の、安倍自民党総裁としての改憲のスケジュールの提示と、自衛隊を9条3項に謳い込む、そういうメッセージが発表されて論議を呼んでいる。2020年までと示されたこれから2年半、この歴史的な時間をテレビジャーナリズムはどういう役割を果たすべきかという問題提起をしたい。
  • 恐れているのは、その役割がもしかすると十分に果たされないままに国民投票が行われるのではないかということだ。この機会にぜひその点を巡って忌憚のないご議論を局内でも、また視聴者からの意見をも受け止めていただきたい。

これに対して、弊社サイドからは以下のような発言があった。

  • 全くおっしゃるとおり。我々は賛否両論併記で深くやっていきたい。
  • 5月3日も、与党内の違う立場の議員にも来てもらい、自民党内でもこういう意見をお持ちだということを夜のニュースで20分ぐらいかけてやった。そのような形でその都度その都度、取り組んでいきたい。

以上