番組審議会

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第463回 番組審議会議事録概要

1.開催日時

平成29年 1月18日(水)正午より

2.開催場所

東京都港区虎ノ門2-10-4 ホテルオークラ東京

3.出席者

  • 委員長
  • 但木敬一
  • 副委員長
  • 神崎仁
  • 委員
  • 梓澤和幸、大石静、岡室美奈子、林真理子、毛利衛、八木秀次
  • 局側
  • 亀山社長、遠藤専務、鈴木専務、稲木専務、岸本常務、崎山取締役、西渕取締役局長
    清水執行役員局長、石原執行役員局長、金田局長、塚越局長、平松局長、小田局長
    柴崎室長、小林部長、熊谷番組審議室

新年初回は課題番組を設けず「2017年テレビの報道に期待すること」と題してご意見をいただいた。冒頭、亀山社長、但木委員長の挨拶に続き、報道局長より、「報道記者の不適切な取材活動」について経緯と対応の報告があった。

4.亀山社長挨拶

  • 昨年を振り返ると、2月に総務大臣の停波発言があり、放送法、電波法を巡るいろいろな議論がメディアを騒がせた。年末には、NHKの同時再送信問題から派生して、我々民放がどう向き合っていくのかの議論があり、放送を巡る環境は著しく変化している。
  • 今年最初の番審のテーマが「報道」全般に関することだが、テレビの求められる中立・公正公平とテレビ報道のあり方については、常に我々が議論してきたことだ。
  • SNSやネットで取り交わされる情報の真偽は一体どうなのか。アメリカ大統領選中のフェイクニュースの例を見るまでもなく、ネット上のニュースの信頼性が揺らいでいる今、我々テレビが担うべき命題、安心、信頼といった期待が、まさにテレビ報道に向けられていると思う。

5.但木委員長挨拶

  • 昨年中、様々なテーマについてご意見をいただき、それなりに番組審議会ができたのではないかと思う。フジテレビ全体の向上のために少しでもお役に立てばと祈っている。
  • フジテレビ全体の中で心棒となる番組が何なのかよくわからなくなってきた気がする。例えばBSの報道番組の『プライムニュース』などは、かなり心棒として頑丈だ。今年はぜひ、どの分野でも心棒となるものを作り上げていくことを考えてもらい、私たちはそのためにできるだけ役に立てればと思う。

6.「報道記者の不適切な取材活動」について、報告。

  • 発覚は去年の11月中旬。社内の調査をしたところ、2015年当時、警視庁記者クラブの2課4課担当だった記者が、暴力団関係の情報を入手していた取材対象に対して自動車を買う際に名義を貸していたことがわかった。
  • 本人からの聞き取りで、暴力団関係の情報に詳しい人物と、いわゆる取材対象者として付き合ううちに、高額の飲食の接待を何度か受け、その中で車の購入の名義を貸してほしいと頼まれて断り切れずに承諾したという経緯。
  • 12月26日付で、本人を懲戒休職1カ月、担当取締役2名が減俸、局次長、部長を譴責の処分。
  • 再発防止のため、社内の調査チームを立ち上げた。
  • 現在も捜査の過程段階。名義を貸した取材対象者が暴力団とどのぐらいの関わりを持つ人物かという特定がまだ明確にはできていない。事実関係も捜査の結果を待つしかないという状況。
  • 捜査の結論、判断を踏まえて、改めて適切に対応する。

7.「2017年テレビの報道に期待すること」について。

  • フジテレビのみではなく「テレビの報道に望むこと」というタイトルが興味深いところ。テレビ界全体の報道のあり方について申し上げたい。
  • (劇作家の)永井愛さんが、『ザ・空気』という演劇を今月下旬から上演するそうだ。テレビ界だけではなくて報道全体、テレビと新聞の中にあるいわゆる忖度文化、「こういうことを書くと上の方から何か言ってくるんじゃないか」、「右の方からバッシングがあるんじゃないか」、それを忖度して予め舌鋒、筆鋒を丸くしておこうということを言っている。私の気持ちを言ってくれたと思う。
  • 空気を恐れない、個人の良心の責任ということが非常に大事だ。
  • 私は総選挙が今年の5月以前に投票があるのではないかという蓋然性を強く認識しているが、その総選挙の際に、改正発議の要件である3分の2とは何なのかをぜひ伝えてほしいし、憲法というのはそもそも一体何なのだと、そういう解説、情報をわかりやすく伝えていただきたい。
  • トランプ報道に関しては、トランプの外交政策の分析をぜひきちんとやっていただきたい。これは日本国内の政治に関わってくることだから。関係するということをしっかりと見定めながら、情報をきちんと取り、解説もしていただきたい。
  • テレビ全般の報道に期待することは、放送法第4条をどう捉えるかを各局が明らかにすること。
  • 去年、BPOの放送倫理検証委員会が、放送法4条について(倫理規定と考えるべきで、政治が個々の放送番組の内容に介入する根拠ではない、との)見解を明らかにした。また、戦争中、大本営に逆らえなかったことへの反省からできた条項だということを知って、目から鱗が落ちた。
  • 今まで許認可の電波を使用している以上、「権力の監視」というマスコミの大きな使命をテレビは果たせないのだ、それがテレビの限界だと思ってきたが、もっと自由な報道は可能だ。
  • 最近、若い議員が出る番組が本当になくなってしまった。昔はテレビを見てこんなに威勢のいい人がいるじゃないかと注目する議員がいたが、今、テレビに若い議員が出る機会が本当に少なくなっている。
  • 私が報道に期待したいのは、報道の使命を忠実に実行していただくということ。それは批判的な視点で、偏見を持たないで、真実を正確に、かつ人権を守って報道するということ。
  • 報道の一分野としてドキュメンタリー番組の制作に力を入れていただきたい。昨年、日本放送文化大賞で、感動的な作品が非常に多かった。費用と時間などいろいろ問題はあるが、制作者の意図を伝える手段として非常に影響力があるし、テーマは非常に広範にわたる。
  • トランプ政権の誕生にあたり、ポスト・トゥルースという恐ろしい言葉も生まれた。根拠のないことを言って、それを「根拠がない」と批判すると、メディアは批判しかしないと、CNNのように締め出されたりする。大統領になろうという人が真実を言わなくてもいいみたいなことは物凄く恐ろしいことだ。
  • こういう時代だからこそ、ニュースの真偽、信憑性、検証、作り込みということが非常に重要だ。
  • 地方局のドキュメンタリーは対象に長い時間密着して、丁寧な取材を重ねて作られているものが多い。そういう地方局のドキュメンタリーも含め、もっと日頃私たちが触れるような体制を作っていただきたい。
  • 中立性などないというメディア、SNSを含めて、余りにもたくさんの情報があり、IoTを使って、AIを使ってビッグデータを処理するという中には何も真実なんかないということを逆に認識して取り組む必要もあると思う。
  • 放送法の話が出ているが、原則論としては、テレビはあくまで報道機関で言論機関ではないのだという点は認識しておく必要がある。しかし過剰に認識する必要はない。
  • 重要なテーマでありながらテレビというメディアの特殊性か、なかなか取り上げられないテーマがある。例えば、天皇陛下の退位の問題。新聞は1面だが、テレビで取り上げているのをほとんど見たことがない。
  • 憲法改正問題もそうだが、重要な問題でありながら国民の理解が進まない。それは当然選挙の結果にも表れてくることにもなろう。
  • SNSがどんどん普及していって、そういった中でテレビの報道の特質が問われるが、正確な一次情報を視聴者に提供するという点については不変。
  • この間、トランプさんが、お前の質問は受けないぞと(CNNに)言った時に、FOXが、いや、そんなことはない、ネットの情報はフェイクのものがたくさんあるけれども、彼ら報道機関はきちんと裏を取って報道していると言った。そういうメディア同士の姿勢がこれから大事な気がする。
  • BSの『プライムニュース』がフジの報道の中核部分みたいな役割を果たしているが、BSだけじゃなくて地上波についても、フジの報道はここを中核にしてやっているというのを定時で報道してもらいたい。核となる報道番組を意識しながら今年のフジの報道を引っ張っていってもらいたい。

これに対して、局サイドからは、以下の発言があった。

  • 憲法の話、天皇の退位の話も含めて、現場がいつも悩んで、考えていることだ。放送法の問題もある。我々としては、放送法を遵守してやるという基本的な建前は変わるものではない。ただ、それだけを金科玉条にかざしたら、伝えられるものを伝えないという悩みも、現場は日々抱えている。その中でどうやってそれぞれの番組の特色を出しながら番組の中でやるということを日々、戦っている。今日いただいた意見を現場に十分伝えながらやっていきたい。
  • トランプ大統領に関しては、彼の言動だけで全ての本質を見間違えないようと、日々言っている。この間も、CNNの記者とのやり取りに、目が行くが、日本、中国、メキシコに対する貿易赤字の話など、しっかり伝えている。そこの本質はずらさないように今後もやっていきたい。
  • 情報制作局の中にドキュメンタリーを作る部署があり、日曜日にレギュラー番組がある。大きなテーマがあったらプロジェクトチームを作ったりしながら、過去には映画になった作品も。報道も含めてドキュメンタリーに関してはいろんな意識を持ちながらやっている。大きな意識を全員に持たせていきたい。
  • 幾つかのご質問の中で、局としての報道姿勢を明らかにというご意見があったが、一連の放送法の騒動の際、民放連会長が3カ月にわたって会見で自分たちの意図を伝えている。同じく私も社長会見で、自分たちの姿勢を明らかにしている。
  • 我々は報道機関であり言論機関ではないので、どっちに寄るとか寄らないではなく、とにかく真実を伝えること、そして放送法を守ること、それに尽きるということ。それは逆に言うと、結果自分たちの放送の自主自律を守ることにもなる。事実を丹念に取材して真実のみを報道する、その報道姿勢こそがテレビの役割だ。