番組審議会

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第455回 番組審議会議事録概要

1.開催日時

平成28年3月9日(水)正午より

2.開催場所

東京都港区台場2-4-8 フジテレビ本社

3.出席者

  • 委員長
  • 但木敬一
  • 副委員長
  • 神崎仁
  • 委員
  • 梓澤和幸、石井英夫、大石静、岡野俊一郎、寺尾睦男、林真理子、毛利衛、八木秀次
  • 局側
  • 亀山社長、遠藤専務、鈴木専務、崎山取締役、西渕取締役局長、小川執行役員局長
    清水執行役員局長、塚越局長、平松局長、小田局長、中山担当部長、宮道部長、鞍馬部長
    中部室長、高橋新週刊フジテレビ批評担当、清水部長、石田プロデューサー
    御旅屋・編成担当、柴崎室長、小林部長、太田番組審議室

4.議題

■金曜プレミアム「消防隊だけが撮った0311~彼らは『命の砦』となった~」
2016年3月4日(金)21時00分~23時22分放送
■BPO人権委員会の決定報告ほか

議題番組に対して各委員から以下のような意見が出された。

  • 東日本大震災から早5年。以前、フジテレビが自衛隊の活躍ぶりをいち早く取り上げたが、消防関係者の活躍を取り上げたものはなかったので、今回拝見して知らない話がたくさんあった。
  • 防災を考える時に、一番重要なのは災害の実像を記録しておくことだ。新聞の活字、ラジオの音声はテレビの映像に比較にならない。テレビの威力を十二分に認識させてくれた番組だ。
  • 災害はいつ起こるかわからない。そこでどういう方達がどういう活躍をされたのか、それを認識して次に備えるためにもこういう記録が大変大事。この番組を放映されたことはフジテレビの素晴らしい仕事だ。
  • これまでの地震とか津波から得たいろんなことを、自治体、国がどう受け取って対応していくか。NGO、個人、生活者がどう協力し合って次に起こり得る災害に向かっていくのか。ぜひそういう視点で、こういう対応をしていかなきゃいけませんよということを放送していただきたい。
  • 被災者に話を聞くと、消防団の息子が水門を閉めに行って死んでしまったという方が何人もいらっしゃった。一体指揮系統はどうなっているのか。そのことが全く描かれていないのが残念。一人ぐらい、息子を消防団で死なせたお母さんなり父親の感慨もあってもいいのではないかと思う。
  • これは個人の体験ではなくて社会の体験。実際にご遺体と向き合った消防団員の人達に実際に自分も会って、彼らがPTSDになっているというのがわかる。消防団員が自分の人生を次にどう乗り越えていくかの視点がもっとあったら、その次の新しい災害に堪え得るようなメッセージが送れたのではないか。
  • 人は忘れることによってまた生きていけるところもあるが、社会はそれを忘れず、それに対する構えを作らなければならない。その意味では、前の災害の教えはそんなに生きていないのではないか。コンビナート火災の仕組みとか、原発1基がああいう形で流れたら一体どうなるのか。報道機関は、日本という国はこれで大丈夫ですかと問いかけるような、そういう責任意識を持っていただくことが大切なのではないか。
  • エンターテインメント性を高めるためなのか、わかりやすくするためなのか、再現部分は大変多く、俳優さんがやる再現とは別に、「イメージ」として、当時活動された消防士にわざわざやってもらって撮っている。そういうところが再現ドラマよりも混乱する。再現ドラマでもなく、実際の映像でもない、「イメージ」と断っているが、それが効果的だとは思わなかった。
  • 事実は物凄い遺体の山だが、私たちがいつも見ている(映像は)そうじゃない。雨樋につかまったけど多分流された人を映すということはそこを一歩踏み込んでおり、映像は本当に力があるので、どこまでやるかは本当に議論するべきところだ。どっちがいいかはわからないが、そういう意味でも攻めていると思った。
  • 遺体の確認も彼らでなくてはできないものもあって、独自の葛藤だ。水門閉鎖もその一つ、そのために多くの団員が犠牲になっているが、このときに回しているカメラの映像の乱れをカットしなかったのが良かった。
  • いざとなったときの日本人の素晴らしさを改めて感じさせてもらった気がした。

これに対して、制作サイドからは、

  • 過去にいろいろ取材をしてきた中で、消防団を含めた消防隊員の方は相当な死者数を出している状況もあり、なかなか口を開いていただけなかった。今回、ずっと口を閉ざしていた消防団の方でやはり伝えなきゃいけないという方向に向かっている方が何人かいた。それならば、3月11日のその日に消防団を含めた消防隊の方がどういった行動をして絶望的な状況を乗り越えたのかの一点に絞って番組を作れたら、と思った。5年目のこの機会に彼らのそういう気持ちに寄り添って番組を作らせていただいた。
  • 再現映像について。番組の最初の方針としても、なるべく再現を使わず、ドキュメンタリー押しでやろうとした。3月11日の映像に拘ると、当然のことながら、映像がふんだんにあるわけではない。あったとしてもスイッチを切り忘れていた消防団の方の映像とか、地元の新聞社の写真、地元の方が回している映像のみ。集めて集めて、最後の判断で再現を入れた。
  • 今回千葉県の市原を必ず取材して入れたいと思っていた。津波、東北に目が集中してしまっていて、映像もちゃんと検証している番組はない。市原のコンビナート火災は首都圏もかなり近く東北だけじゃないという緊迫感、意識を持ってもらうために敢えて放送した。
  • イメージとか再現とかは判断を鈍らせるというご指摘について。視聴者の判断を鈍らせる意図はない、ドキュメントで基本は押したかった意思はあるのだが、いずれにしても検討し、今後の番組作りに生かしたい。
  • ご遺体の映像を出すことについては、宗教観や文化観などがあるが、今回の番組の最後に、遺体がずっと並んでいる映像を出している。これは、今回、消防隊員、消防団がどのくらい過酷な立場で任務に当たっているかを描く中、心の問題を取り上げようと考えた。自分たちしか確認できない身近な人々の遺体を確認するという、非常に過酷な宿命を背負いながらやっている。

との説明があった。

また、BPO人権委員会の「ストーカー事件再現ドラマへの申し立て」等に対する決定報告について、
委員からは

  • 市井の人は、自分の生きている生活関係の中で社会的評価を持っている。それは職場であったりご近所であったり、地域社会であったり。そういう限定社会における社会的評価を下げていないかどうかが判断の中心になっていると思う。
  • 『石に泳ぐ魚』という、作家、柳美里氏の最高裁の判断の中でそのことが言われている。そのことが今の社会の一つの規範としてはあるのだということをぜひテレビ局の方にはご理解をいただきたい。
  • フィクションなのか事実なのか視聴者に対して紛らわしい番組が増えているときにどうすべきか。例えば、実際隠し撮りした録音を出せば、この全体が事実だと言っているのと変わらない。一部は事実で一部は事実じゃありませんというのは許されるのか。
  • 誰がこのネタ元を知り、どういう調査が行われて、この放送がなされると決断したのか。そういうシステムがちゃんと出来上がっているのか。これは検討をきちっとやっていただかなければならない。

などの意見があった。
これに対して局側からは、

  • とにかく意識をもう一度徹底させるためにも対症療法的なマニュアルの見直しなどといったレベルではない大きな議論をしていきたい。またその時にはいろいろお力添えをお願いする。その過程についても番組審議会でご報告をしたい。

との発言があった。

最後に、岡野委員、寺尾委員のご退任の報告があり、両委員からご挨拶があった。