Story #008

 藍沢(山下智久)は、三井(りょう)冴島(比嘉愛未)とともにドクターヘリで出動し、中年男性を救命救急センターまで搬送する。患者の名前は福島達夫(平賀雅臣)。夏祭りの山車が見物客に向って倒れ、その下敷きになってしまった達夫は、足を骨折するとともに、山車の一部と思われる木片が左大腿部から腹部に向かって刺さっていた。

 白石(新垣結衣)緋山(戸田恵梨香)藤川(浅利陽介)は、黒田(柳葉敏郎)とともに救急車の到着を待っていた。達夫の家族――80歳になる父親の重蔵(織本順吉)、妻の清美(宮地雅子)、そして9歳になる娘・結菜(大作空)もこの事故に巻き込まれ、骨折や打撲を負っていたのだ。

 藍沢は、黒田の助手として達夫のオペに加わり、刺さっていた木片を除去する。骨折していた重蔵と清美、頭部と腹部を打っていた結菜も、幸い、大事には至らなかった。だが、達夫が助かったと知った途端、清美がHCUはうるさいから部屋を変えろと騒ぎだした。重蔵も、治療そっちのけで戦争の話を始めたり、勝手にベッドを抜け出したりして藍沢たちを困らせる。一方、結菜は、藍沢に興味津々のようだった。
 
 同じ日、入院していた藍沢の祖母・絹江(島かおり)がリハビリ病棟に移ることになった。藍沢は、冴島に車椅子を押されて病室を出てきた絹江に、また顔を出すから、と話しかけた。絹江は、そんな藍沢に、今度孫が来てくれることになった、と嬉しそうに話す。そのようすをじっと見ていた結菜は、子どもなりに何かを感じたようすだった。

 その夜、思わぬ事態が起きる。達夫と重蔵の容体が急変したのだ。達夫は脳内出血を、重蔵は結腸損傷による腹膜炎を起こし、いずれも緊急オペの必要があった。黒田と白石から病状の説明を受けた清美は、突然のことに激しく動揺する。結菜は、両親も祖父もいないHUCで不安に押しつぶされそうになっていた。

 藍沢は、ひとりでベンチにぽつんと座っている結菜に気づく。しばらく前に、どうして耕作なんていう古臭い名前なのか、と結菜から聞かれていた藍沢は、その理由を説明した。耕作の名付け親は絹江だった。「晴耕雨読」に由来したものだった。藍沢から、名前について尋ねられた結菜は、「結」は人と人を結びつけるという意味で、「菜」はおじいちゃんが大好きな菜っ葉のことだ、と答えた。重蔵がつけてくれたのだという。そういってポロポロと泣き出してしまった結菜に、藍沢は、全力を尽くすから、と約束する――。

 ほどなく、達夫と重蔵のオペが始まる。達夫のオペは、脳外科の西条(杉本哲太)が執刀した。助手は、白石と藤川だ。一方、藍沢は、緋山とともに黒田の助手を務め、重蔵のオペに臨んだ。

 やがてオペが終了する。黒田は、手術が無事に終わったことを清美と結菜に伝えた。ホッと胸をなでおろす清美。結菜は、堰を切ったように泣き出した。

  あくる日、藍沢は、結菜がなくしてしまったという金魚が届いていた、といって赤い金魚を彼女に手渡した。が、結菜がなくしたのは、黒い金魚だった。「かわいいところあるじゃん、コーサク……しょうがない、彼氏にしてあげよっか。健太朗、翔太の次だけどね」。結菜の言葉に、白石や緋山は苦笑していた。

 三井は、墓参りに来ていた。三井は、真壁(阿南健治)の妻と子どもの月命日に墓参りをしていたのだ。そこに真壁がやってきた。真壁は、寺の住職から毎月墓参りに来ている女性がいることを聞いていた。そこで三井は、何故提訴を取り下げたのか、と真壁に尋ねた。すると真壁は、三井のことは許せないが、医師免許を取り上げたかったわけではなく、ただ話がしたかった、と答えた。妻と子どもは自分の中に生きているから、同じ日に生まれたという子どもを大切に育ててあげてほしい、と三井に告げる真壁。三井の目から涙が溢れた。

 そんななか、ドクターヘリの出動要請が入る。化学工場でボイラーの熱風を浴びた熱傷患者が出たのだという。黒田、白石、冴島は、ただちに現場に急行した。移動中、CSの轟木(遊井亮子)から、工場でボイラーの爆発事故があったこと、重症者は1名であること、現在も消火活動が続けられているが、患者はすでに火災発生地点から離れた場所に運び終えていることが伝えられた。

 工場に到着した黒田たちは、そこで初めて患者がひとりだけではなかったことを知る。すでに現場には、何名もの患者が横たわっていた。黒田は、タッチアンドゴーで藍沢と緋山を呼ぶよう指示を出した。

 そこに、作業員のひとりがやってきて、動けない仲間がボイラー室にいる、と白石に伝える。白石は、すぐさま現場に向かって駆け出した。それに気づいた黒田は、白石を追いかけた。爆発現場に入るときは、消防に安全を確認するのが鉄則なのだ。

 黒田は、ボイラー室に入っていった白石に追いつき、彼女を呼び止めた。と、次の瞬間、天井のパイプから蒸気が吹き出し、鉄骨が崩れ落ちた。黒田は、とっさに白石を突き飛ばした。

 藍沢たちの元には、黒田が事故に巻き込まれたという情報が入っていた。現場に到着すると同時にボイラー室へと急いだ藍沢と緋山は、そこで信じられない光景を目にする。黒田が鉄骨の下敷きになり、鉄骨に挟まれた右腕からはおびただしい量の血が流れていた。白石は、血まみれで出血部分を圧迫していた。藍沢たちの到着を知った黒田は、患者の搬送状況を確認すると、藍沢に腕を切るよう命じた――。

 藍沢たちは、黒田をドクターヘリで翔北病院へと搬送するが…。

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