Special ドクターヘリの現在、そして未来
あの若さであそこまでできるヤツはそうそういないでしょう。ただ、彼らくらいの年齢のお医者さんで、「ああいう風にやってみたい」という希望を持っている人は多いでしょうね。僕も若いころは、彼ほどはできないけど、やってみたい、チャレンジしてみたい、というギラギラしたものは持っていた気がしますからね。そういう意味では、緋山(戸田恵梨香)なんかが一番等身大なんです。夜中に患者が急変しないかな、と待っていたりだとか、自分のところにチャンスがめぐってこないかな、って思って狙っていたりだとかっていう感じは、よくわかりますし、実際にああいう子たちはたくさんいるんじゃないかなと思います。
最初からそういう才能を持っている人もいると思うんですけど、一方で、経験を積むことによって才能が目覚めてくる人もたくさんいるのではないでしょうか。多くの人たちが、経験を積みながら自分の才能を開花させているんだと思います。だからあのセリフは当たっていると思います。どっちが先か、といえば、僕は経験が先だと思いますけどね。
あれもリアルだと思います。若いお医者さんから見れば等身大ですよ。いくら経験を積んでも、わかっていても踏み出せない、っていう人もいますから。ただ、救急医をやっていく上では、一歩どこかで踏み出さなければいないことが必ずあります。一番求められているのは、「決断する才能」だということも事実です。白石がこれからそういったものを身につけて行ってくれることに期待します。
それはありますね。我々が、「これはここでやろう」「これは病院に戻ってからやろう」っていう決断は、結果論からすればその決断ひとつひとつがすべて患者さんに返っていくわけですから、重いといえば重いと思います。5話で、藍沢が串刺しになっている患者を手術した決断にしても、おそらく同じシーンに遭遇したら僕もあそこでやっていたと思います。きっとあれしか方法がないな、と僕も思います。ただ、その決断のときに、彼の奥さんや子どものこととか、彼の人生を背負った上で「よし、やろう!」という風には考えない。「いまやらないと心臓が止まる!」というような中で、状況に応じて瞬時に判断してやるだけなんです。

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