Interview #009
脳外科部長・西条章役 杉本哲太さん
 

Q.撮影の方は、ようやく終わりが見えてきたところですが…。

そうですね。でも僕は脳外科チームなので、なかなかみなさんと接する機会がなくて(笑)。まあ山下智久さんと新垣結衣さん、あとは柳葉敏郎さんくらいで、みなさんと一緒、というのはなかなかないんですよね。脳外科関係の患者さんが運ばれてこない限り、僕の登場する場面がないものですから、もう終わりに近付いてきましたけど、正直、いまだに新鮮な気持ちで、クランクインしたばかりのような気持ちでやっています(笑)。

Q.西条先生を演じるにあたって、苦労された点、気をつけた点はどこでしょうか?

みなさんおっしゃっていますけど、やっぱり医療用語でしょうね。処置シーンももちろん大変ですけど、一番難しいのは医療用語を言いながら処置をする…手元とかは、医療監修の先生の指導を受けながらある程度はリアルにやれますけど、同時に医療用語を言う、という2つのことをやるのは大変ですね。普段聞きなれない言葉をしゃべりながら、やったこともない処置をやっていく…医療ドラマをやる際に必ず通らなければならないところじゃないでしょうか。もちろんそれ以外にもいろいろと大変なこともあるし、スタッフは他にも気を遣わなければいけない部分もいろいろとあると思うんですが、俳優サイドとしてはそこだと思います。

Q.感覚的には、役を演じるのと同時に、医者を演じる、という感じになるのでしょうか。

そうですね。もちろん、医療指導をしていただかないとリアリティーはでないですから、教えていただいたことを忠実にやるよう努めるわけですけど、ただ、リアリティーだけに気をつけていればいいかというと、もちろんそうではないと思うんです。そこにドラマとしての何か…例えばセリフだとか動きの中に西条というキャラクターを出していかなければいけないので、リアリティー+αの芝居が大事になってくるんだと思います。リアリティーだけを追求していっても、キャラクターが立っていかないことにも成りかねないですし、面白くないですからね。

Q.黒田先生と西条先生の間には過去に何かがあったのではないか、と想像できる場面もあり、それも楽しいです。かつては腕を競い合うライバル同士だったのではないか、とか…。

そうですね。だから、今回、黒田先生の息子さんを診るところでは、凄く感情移入して…。多分、西条の素性っていうのは描かれないでしょうけど、当然、年齢的には奥さんがいて、子どももいると思うんです。だから、単に黒田の子どもだから、ということではなく、自分のことに置き換えることで、黒田の気持ちが余計によくわかるんだと思います。そんなことも想像しながらやっていますね。

Q.藍沢役を演じている山下さんの印象は?

カッコいいです。まだ若いんですよね?僕が彼の年齢のころ何をしていたのかな、って考えると、彼は全然しっかりしていますよ(笑)。今回の役柄同様、クールですしね。藍沢という役は難しい役だと思うんですよ。パッと見、クールですけど、いろいろ抱えているものがある役じゃないですか。もの凄くいろいろな感情を抱えたキャラクターだと思うんです。でもそれを押し殺す芝居っていうのは…僕も感情をおもてに出さない役はやったことがありますが、感情を出さない、っていうのは簡単なように見えるかもしれませんけど、演技するっていうのは、説明することだったりもするんですね。だから、セリフや表情でもって説明していくわけでもあるんですけど、そういう部分を抑えた状態で役を作り上げていくっていうのは凄く難しいと思うんです。若いのに、っていうと変ですけど、それを山下さんは見事に演じられていると思います。

Q.こういう作品に関わると、いまの日本の医療に関して考えさせられることもあるかと思うのですが、杉本さんはいかがでしたか?ひと口に医療といっても、いろいろなジャンルやいろいろな問題がありますが…。

僕の役でいくと、4話で、戸田恵梨香さんが演じられている緋山に、「医学が万能だと思っているのか?」っていうシーンがありましたけど、西条には「医学というのは絶対ではなく、不確実なものなんだ」という信条があって…。9話の黒田とのシーンでも、そのとき黒田は腕を切断したことにショックを受けていたし、息子が脳腫瘍だと知って取り乱していたこともあるんですけど、「助かるのか?」って掴みかかってくる黒田に、「保証などできるわけがない。そんなことができるのは神だけだ」って言いましたよね。西条はわりと「神」っていう言葉が好きなんですけど(笑)、でも、100人同じ症状の人がいても、それぞれ処置の仕方が違ってくる場合もあると思いますし、絶対に手術が成功する、なんて言えるはずもないですよね。僕は医療のことなんて全然わからないですけど、このドラマをやっていて思ったのは…ドラマの中で実際に使われているマイクロサージャーとかアウェイク手術なんかの機材はもの凄く高額なはずなんです。それを見て、医療器具はどんどん進歩しているんだな、って実感しましたけど、医者だってその使い方をマスターしていくのは大変ですよね。デジタル化・高性能化されて進歩するのはいいことだと思うんですけど、このドラマをやっていて感じたのは、大事なのはデジタル化とは逆の、アナログな部分というか、人間の気持ちなんだな、っていうことなんです。だから、最先端でやっていかなければいけない部分と、もの凄く人間的な部分を持ち合わせなければいけない医者って本当に大変な職業だな、って思いましたね。

Q.医療監修の松本尚先生も「患者さんは病院に来たら治してもらえると思っているけど、医者は結果に関しては保証していない。治す過程で全力をつくすだけだ」とおっしゃっていました。

僕の母は肝臓ガンで亡くなりましたけけど、僕も「きっと治してくれるだろう」という期待というか、願望を持っていましたからね。逆にお医者さんの立場で考えたら、それはもの凄いプレッシャーになりますよね。西条だって、きっとそういうジレンマと闘いながらいままでやってきたんだと思うんです。若いときは、「この患者は自分が絶対に治すんだ」という強い信念をもってやっていたんでしょうけど、何度も挫折を経験してきたんでしょうしね。

Q.最後に、ドラマを応援してくれている視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。

あまり偉そうなことは言えませんが、このドラマを通して、少しでも医療のことやドクターヘリのことに興味を持ってもらえたら嬉しいですね。日本の場合、特に地方はまだ救急車が来るまでに時間がかかったりしていますよね。ドイツのように、とまでは言いませんけど、ドクターヘリのようなシステム、ER的なシステムが日本でも確立すれば、医療問題のいくつかは解決できるんじゃないかな、って思うんです。

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