ハイチ 復興にむけて
 
日本ユニセフ協会 個人・企業事業部 小野ちひろ
小野ちひろ ハイチの子どもたちが置かれている状況は、震災前から厳しいものでした。13人に1人が5歳の誕生日を迎える前に命を落とし、学齢期の子どもの約半数が学校に通うことができず、120万以上の子どもたちが暴力や虐待の危険にさらされているという状況でした。このようななか、2010年1月に大地震がこの国の政治・経済の中心地を襲ったのです。

震災から約半年後の首都ポルトープランスの姿は、崩壊したままの建物が残され、避難民キャンプがいたるところに点在する無残なものでした。避難民キャンプのテントはすき間なく設置され、わずか1畳ぐらいのテントに一家何人もの人数で暮らしており、人びとには相当な精神的・肉体的な負担がのしかかっていることが見てとれました。
ただ一方、厳しいテント生活でありながらも、それが“日常”となり、全体的に人びとは落ち着いていたように感じました。これは、国際社会の支援とハイチ政府、現地で活動するユニセフなどの国連機関とパートナー団体の努力の連携によって、被災者のために最低限の物資提供と安全な水やトイレなどの衛生設備などが確保できたことによる成果だと思います。

緊急時、ユニセフはパートナーとともに、子どもの避難所として、また被災して傷ついた子どもの心のケアや子どもたちが暴力や犯罪の防止を目的として、「子どもにやさしい空間」(センター)を設置しますが、ハイチでもこの空間が大きな効果をあげていました。
今回、私たちは、ある避難民キャンプに設置された「子どもにやさしい空間」を訪れることができました。ここには、避難民キャンプで生活するおよそ80人の子どもたち(3歳〜15歳ぐらい)が通っており、毎日、研修を受けたスタッフがゲームなどのレクリエーション、スポーツ、絵画、学習の時間など様々なアクティビティを子どもたちに提供しています。そこは子どもたちの笑顔であふれていました。また、ソーシャルワーカーや心理学者らとも連携しているため、常に子どもの様子を見ながら適切なケアがおこなわれていました。束の間の時間であっても、子どもたちにとって震災がもたらした異常な事態を忘れることができる空間と時間がいかに大切なのかを実感することができました。

どんな状況であっても人びとは生活してゆかなければなりません。いまだ崩れたままの建物を背に生きるために露店で働く人びと。コミュニティのために、がれき撤去を行うボランティアの市民たち。
ユニセフ・ハイチ事務所代表のグルロース・アッカーマンから、私は次のようなメッセージを託されました。
「ハイチの人びと、そして被災した人びと自身が復興への熱意を持っています。私たちはその気持ちを後押しするような支援活動をしていきます。ハイチのことを忘れないで欲しい。」ハイチの復興の道のりは険しく、困難な状況が続きますが、ハイチの人びと、政府、人道支援スタッフは全力の努力によって、少しずつゆっくりとですが、復興にむけて前進しています。どうかハイチのことを忘れず、子どもたちの健やかな成長のため、あたたかいご支援をお寄せいただければ幸いです。