ユニセフ・シエラレオネ事務所 教員教育プロジェクト
 
2010年12月 プロポーザル
支援国 シエラレオネ共和国
プロジェクト名 教員教育プロジェクト(Teacher Education in Sierra Leone)
資金額 296,021米ドル
活動年 2011年〜2012年
目的と実行項目 このたびご支援いただくプロジェクトは、教員養成のための遠隔教育プログラムを行う教授や講師の教授技術や能力を向上すること、また教員研修を受けたことがない、もしくは教員免許を持たない教師が遠隔教育プログラムによる教員研修を修了できるよう支援することが目的です。

5つの教員養成大学の教授と教師のための遠隔教育プログラムを行う講師、また遠隔教育プログラムの研修を受けている教員研修を受けたことがない、もしくは教員免許を持たない小学校教師が支援の対象です。

プロジェクトの主な実行項目:
  • 質の高い教育を子どもたちに提供するため、教員研修を受けたことがない/教員免許を持たない教師300人に対し、小学校教員免許取得コース(1年間)受講を支援します。なお、受講者の選定は、地方自治体、郡の教育事務所や大学からの助言に基づいて行われ、また遠隔地の不便な場所にあるコミュニティスクールの“教師”の場合、教員研修を受けたことがない、または教員免許を持たない教師で、コミュニティスクールの教員としてとどまることが条件となります。
  • 教員養成大学に対し、教員育成のための遠隔教育プログラムの実施とモニタリングのための技術的支援やプログラム実施のために必要な文房具や教材などの物資の支援も行います。
  • 教師の遠隔教育プログラムの研修受講を確実にするため、教育・青少年スポーツ省の調整能力強化と同省が実施するモニタリング活動に活用させていただきます。
対象エリア 全国5つの教員養成大学とサテライトセンター(遠隔教育プログラム実施)
対象者 教員研修を受けたことがない、または教員免許を持たない教師、遠隔教育プログラムに携わる講師、教員養成大学の教授
パートナー 教育・青少年スポーツ省、教員養成大学、郡議会
予測される成果 ① 300人の教師が小学校の教員免許を取得し、2012年までに子ども中心の教授法を行うことができるようになる。
② 1万2,000人の子ども(そのうち半数は女子)が改善された学習環境で勉強することができるようになる。
③ 2012年の終わりまでに、5つの教員養成大学と国内14地区の教育行政官は、教育研修受講者と教員免許取得者(直近の)に関する体系立てられたモニタリング手法に基づく適正な記録を保有することができるようになる。
必要資金 US$296,021

<資金内訳>
活動内容 予算 (USD)
教員研修を受けたことがない/教員免許がない教師300人への研修費用 207,000
教員研修に関わる分野横断的な活動のための費用(開発のためのコミュニケーション*活動、ジェンダー平等推進のための活動など) 42,300
プロジェクトの管理、モニタリングと評価のための費用 26,000
小計 275,300
リカバリーコスト(7%)** 20,721
合計 296,021

*多様な分野の人たちと情報共有し、行動様式で子どもの権利と合致しないものがあれば、これを認識し、変えようとするイニシアチブのこと。
**ユニセフ本部のプロジェクト支援費として、総資金額の7%を活用させていただきます。
補足:シエラレオネの教育状況
■教員教育:課題と機会
教員免許を持つ教師が不足しているため、教員研修を受けたことがない、または教員免許を持たない教師への雇用があります。教員研修を受けたことがない、または教員免許を持っていない教師は、10年以上のキャリアがあっても職の安定は確保されていません。毎年の学年末に契約が終了し、再申請する必要があります。しかも、再度採用される保障はありません。そのため、教職を辞める教師も多く、すでに教員不足の学校にとって、教員研修を受けたことがない、または教員免許を持っていない教師さえも失う危機に直面しています。
教員養成大学では教材が不足し、カリキュラム進行にあたって大きな課題を抱えています。さらに、教授は何年も同じ教材を使って生徒に教えています。図書館は蔵書が少ないうえ、蔵書があってもそのほとんどが古くて役に立たない場合が多くあります。遠隔教育センターでは特に、生徒が調べ物をするための資料が不足しています。情報へのアクセスや通信技術についても、大学のキャパシティは非常に限られ課題があります。
■教員免許を持つ教師の必要
年を追って、全教育レベルの就学率は向上しています。教員養成大学では、小学校の教員免許を取得するには3年かかります。そのため、教員養成学校は教師の増加促進とはなりません。結果、教員免許のない教師が増加し、また教師1人あたりの生徒数が増加するという状況が生まれています。なお、農村部では、教員免許を持つ教師の不足はさらに深刻です。
現在、小学校教師の40パーセント(およそ1万3,000人)が教員免許を持っておらず、女性の教師の割合は、全体の30パーセント以下となっています。また北部では、教員免許がない教師は50パーセントを占めています。
■教師1人あたりの生徒数
小学校教師1人あたり生徒数は、平均66人。これは、サハラ以南の45カ国の平均値を上回っているうえ、国内の基準値50人よりも高い数値となっています。4つの行政区画(西部地域、北部州、東部州、南部州)では、北部における教師1人あたりの生徒数の数が最も高くなっています(教師1人あたり生徒78人)。この状況によって、生徒にとって勉強の効率に悪影響を及ぼすだけでなく、教師にとっても、業務負担が大きく、ストレスや長期的な欠席の増加、高い離職率につながっています。
■教育・青少年スポーツ省のキャパシティの構築
教育セクター計画には、全国の学校制度拡大のため、教育研修を受ける教師や教員免許を持つ教師をもっと増やすための明確で戦略と行動の必要性が示されています。
①  主要な資格の向上:大学に革新的な教育戦略の導入。また、事前研修や実地研修を通し、教師は“子どもにやさしい”、“女子にやさしい”アプローチを使って授業を行うことができるようになる。
②  改良:教員養成大学のカリキュラムやシラバスを改訂し、HIV/エイズや平和教育などの問題を組み込む。
③  教員養成大学の入学者増加:教員免許のない教師のための遠隔教育プログラムを、入学条件を設定せずにポテンシャルの高い教師のためのアクセスプログラムとして活用する。
④  大学教授のスキル向上:革新的な教育戦略や改良したカリキュラムについて、大学教授への実地研修の実施を啓蒙する。
■これまでのユニセフの活動
ユニセフの教育計画(2008-2012)は、政府が教育セクター計画で基礎教育について設定した目標達成のための支援計画です。
教員養成分野は以下の活動が含まれます。
  • 子ども中心の教授法(CCTT)と虐待や人身売買、ジェンダー格差、HIV/エイズや十代の妊娠など新たに浮かび上がる様々な問題について、教育者研修を連続して実施し、教員育成に携わる教授や遠隔教育を行う講師の能力や知識を高めること。
  • 教師への事前研修や実地研修の向上のため、教育研修を受けた教授や講師を使うこと。同時に、教員養成大学のキャパシティ強化と子ども中心の教授法や虐待や人身売買、ジェンダー格差、HIV/エイズや十代の妊娠など新たに浮かび上がる様々な問題に関わる教員研修カリキュラムのレビューを行うこと。
  • 小学校教育免許に関わる4つの主要科目の子ども中心の教授法と事前研修、実地研修、そして遠隔教育プログラムでの虐待や人身売買、ジェンダー格差、HIV/エイズや十代の妊娠など新たに浮かび上がる様々な問題に関する基準(モデュール)を開発すること。