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田中亮介 南アメリカのガイアナ共和国を2008年度の支援国に決定したのは昨年の12月のことでした。ユニセフ発表の2007年度版データによると中南米ではハイチについでHIV/エイズの被害が深刻とのこと。また、GNI(Gross National Income/国民総所得)は1,010ドルと貧困の状態が続いているということが選定の大きなポイントとなりました。
ところが4月17日(木)から5月2日(金)ガイアナ共和国を離れるまでの取材期間中『ホントに?』という言葉が常に頭の中をよぎっていました。
先ずは『ホントに貧困なの?』。首都ジョージタウンの街中は比較的きちんと整備されており、家々もイギリス様式なのでしょう白の板塀やコンクリートで築かれており敷地も広めである場所も多く見受けられました。更に、スーパーマーケットやハンバーガーなどのジャンクフードの値段も日本とほぼ同じで、物価も決して安いとはいえない状況でした。『この値段で、GNIが日本円でおよそ110,000円?』正直な感想です。首都ジョージタウンにはガイアナ共和国の全人口の90%が集まっています。確かに、3〜4箇所あったスラム街やアメリインディアンの住居を取材すると貧困の度合いは酷いものでしたが、であるならば、ガイアナ共和国は貧富の差が相当大きい国ということになります。
次なる『ホントに?』は『ホントに取材は難しいの?』でした。
時差が13時間ある関係上、昨年までの支援国と違い、事前に直接ガイアナユニセフと話が出来ていなかったことも痛手でしたが、現地に入り取材スタッフが考えリクエストする事項について、すぐに返事をもらえるわけでもなく、ガイアナユニセフからは『今、取材対象者からの返事を待っていますが、話を聞くのは難しいと思います。』と最初の一週間は、ガイアナユニセフの担当者の『この取材は難しいです。』という言葉を何回聞いたことか。こんなに取材がスムーズに流れなかったことはチャリティキャンペーンの取材4度目にして初めての経験でした。
何故ガイアナ共和国のHIV/エイズの取材は難しいという返事だったのでしょうか。それは、《ガイアナ共和国は現代の日本の縮図》だったのかもしれません。テレビやラジオ、新聞による情報は常に手に入れることが出来、学校でも授業で対応策について教えられているために、HIV/エイズと周りに知れたらそのコミュニティでの生活がなくなってしまう。だからアフリカのように表に出てHIVやエイズと声に出していえない世界。日本とよく似ていました。
 保健大臣は、ガイアナ共和国でのHIV/エイズの患者は減っていると胸を張っていました。確かにユニセフのデータでも成人のHIV有病率は2006年の2.5%から2007年は2.4%へと0.1ポイント下がってはいました。しかし、生活の格差や人とのつながり方を見ると見えない患者数が増加しているのではないかと思わずにはいられませんでした。まさに、ガイアナ共和国の実情は日本の実情かもしれないという憂い気持ちで今回の取材を終えました。
最後になりますが、今回の取材に対し多大なご協力をいただいた財団法人日本ユニセフ協会様には心から御礼申し上げます。
FNSチャリティキャンペーン推進室 田中亮介



小野ちひろ ガイアナ共和国の首都・ジョージタウンにある国際空港に到着し、入国審査を待っている間、目に飛び込んできたのはHIV/エイズに関する看板でした。空港を出て市内へ車で向かう道、そして中心部のストリートなどいたるところに、「HIV/エイズについて知ろう!」や「HIVの検査を受けよう!」などとうたった看板がありました。南米・中南米でHIV感染率が高い国のひとつであるガイアナ共和国。この国におけるHIV/エイズ拡大への危機感を感じました。
HIV/エイズをテーマとした取材のため、病院、エイズ患者のためのホスピスなどの施設へ行き、HIV陽性の患者へのインタビューや日常生活を通して見えたもの、そして彼らから伝わってきたものは、何よりもHIV/エイズという病気への偏見・差別を感じながら生きることの苦しみ、そして、生きていくことの不安です。HIV陽性と知られてしまうと、働き口もなく、経済的にも精神的にも追いつめられます。家族からも見放されて孤独の中で生活するHIV感染者の現実がガイアナにはありました。取材を受けてくれた方の深い悲しみの表情は今でも忘れることができません。
また、今回、「最も弱い立場にいるのが子どもである」ことを改めて実感しました。ガイアナでは、保護してくれる場所であるはずの家庭やコミュニティーがその役割を果たしていない傾向が強く見受けられました。親や家族たちから身体的、性的虐待を受ける子どもたちが増加しており、暴力や虐待から逃れるため、また家が貧しくお金を稼ぐため、路上で暮らす子どもたちが多くいます。子どもの中には性的虐待を受けHIVに感染してしまった子どももいました。また、学校を強制的にやめさせられ、家の手伝い、さらには親から売春行為を強いられた子どももいました。子どもは親や周りの環境に左右されてしまう脆弱な存在です。
子どもたちが健やかに育ち成長できる環境をつくるため、ユニセフスタッフは、政府、地元NGOと協同して、保健・衛生、教育、そして子どもの保護などの分野での取り組みを強化しています。
ガイアナ共和国を「忘れ去られた国」と表現した方もいましたが、今回の取材、ドキュメンタリー番組をはじめ、FNSさんによるキャンペーンを通じ、皆さまにこの国の状況、そして子どもたちが直面している問題について知っていただく機会ができたことを有難く思っております。

(財)日本ユニセフ協会 個人・企業事業部 小野ちひろ


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