title
ユニセフ・パプアニューギニア事務所からの活動報告(2010年5月)
(活動期間2008年7月〜2009年12月31日)
【1】ご支援いただいたプロジェクトの概要
支援対象国 パプアニューギニア独立国
プロジェクト名 HIV/エイズの拡大する状況下での母子保健サービスの強化プロジェクト
資金額 418,557.82米ドル
支援期間 2008年8月1日〜2009年12月31日
支援地域 東山岳州、西山岳州、シンブ州、東セピック州、ミルンベイ州、ブーゲンビル自治州、首都区
支援対象者 ・子どもと女性(特に妊産婦)
・暴力(性的暴力を含む)を受けている女性や子ども
・孤児や弱い立場にある子ども
パートナー 保健省、カトリック保健サービス、地域開発局、Marie Stopes,
National Spiritual Assembly of Bahai,
フレンズファンデーション、ポートモレスビー公立病院、
ミンジェンデ病院, Susu Mamas、Family and Sexual Violence Action Committee

今回のご支援によって、下記に関わる活動が可能になりました。
−子どもの生存と母子保健サービスの強化
−母子感染予防と小児HIV/エイズ治療に関わる保健施設の能力向上
−保健・教育・保護分野における基本的な社会サービスに関するアクセスの向上と弱い立場にある子どもの福祉の向上
−家族・コミュニティ・市民社会・政府などの各レベルにおける子どもの保護システムの強化


プロジェクトの主な成果:

【2】国の概要と女性と子どもたちの状況
PHOTO 過去30年間、保健分野での状況にはほとんど改善が見られず、むしろ退行しています。近年の人口保健調査によると、妊産婦死亡率は、1996年、出生10万人あたり370人であった数値が、2006年には出生10万人あたり733人に増加しました。一方、5歳未満児死亡率は、1996年から2006年の10年間で出生1,000人あたり93人から75人に減少しましたが、この減少率では、ミレニアム開発目標の達成は難しいとされています。優秀な医師などの医療従事者の不足や基本的な医薬品や医療設備の不足が課題となっています。

パプアニューギニアのHIV/エイズの状況は、特に農村部を中心に拡大しています。国全体のHIV有病率は1.6パーセントと高い数値を示しています(2007年12月)。原因は、若い女性や子どもへの性的暴力や無防備な性行為の増加、高い性感染症発病率、出稼ぎによる人口移動などです。2009年、抗レトロウィルス薬の提供を含む母子感染予防サービスが、妊産婦の6.5パーセントを対象に実施されました。地理的な問題により、サービス対象の拡大が課題となっています。妊産婦ケアを受ける女性は60パーセントで、専門知識のある助産師の立会いのもとで出産する女性は40パーセント以下にとどまっています。抗レトロウィルス薬を必要とする子どものうち38パーセントが治療を受けました。HIV感染事例の多くが20歳〜34歳の年齢層に集中しています。女性の場合、HIV感染者の37パーセントが15歳〜24歳の年齢層に集中する一方、同年齢層の男性感染者の割合は12パーセントでした。男性の場合、年配者のHIV感染が多い傾向があります。

家庭内暴力の被害について、約75パーセントの女性と子どもが家庭でなんらかの暴力を受けています。HIVが広範囲で流行し、成人のHIV有病率が1.6パーセントという状況で、「子どもの保護」の状況は非常に厳しくなっています。エイズが原因で孤児になった子どもの数は年々増加し、2003年は1,549人、2005年は2,704人、2007年には3,704人にのぼりました。親や保護者がHIVに感染し、エイズを発症して死亡した場合、保護者を失った子どもの多くは、HIV感染リスクが高まるだけでなく、権利を脅かされる危険に直面します。暴力、虐待、搾取によりHIVに感染する危険のある約30パーセントの子どもたちは、非常に深刻な状況に置かれています。

【3】プロジェクトの実施と成果
1)女性や子どもの母子感染予防と小児HIV/エイズ治療へのアクセス向上
①母子保健と母子感染予防サービスの強化
②小児HIV/エイズ治療、ケア、サポート:
③母子の栄養状況の改善:
④青少年や若者におけるHIV感染予防:
ユニセフは、ポートモレスビーにある「若者にやさしいセンター」をサポートし、公にしにくい性の問題やリプロダクティブ・ヘルスの問題について、若者たちが学ぶ環境づくりを行いました。この施設では、 HIV検査を含む妊産婦ケアや母子感染予防サービスに男性の積極的な参加を促すための活動も行っています。施設で行う具体的な活動は下記のとおりです。
2)最も弱い立場にある子どもたちの健康と福祉の向上
①ファミリーサポートセンターの設立:
ミルネベイ州、西山岳州、シンブ州の3ヶ所にファミリーサポートセンターを新設し、国内では合計5ヶ所になりました。なお、現在、キエタ、ブーゲンビル、マプリク、東セピック州のうち2地域での設置する計画が進行中です。ファミリーサポートセンターでは、暴力を受けている女性や子どもたちのため、病院にかかる前に、医療的、法律的、心理社会的なサポートおよびケース・マネージメントへの支援を行います。ファミリーサポートセンターの増設によって、家庭内暴力や性的虐待の被害にあった女性や子どもたちがよりサービスを受ける機会を得られるようになりました。

ユニセフは、暴力や虐待の被害を受けた女性や子どもたちが基本的なサービスにアクセスできるよう、ファミリーサポートセンターの関係者を対象とした技術的支援を行いました。また、家庭内暴力や性的虐待を受けた女性や子どもたちの治療費免除を目的とした保健省への政策提言も行っており、政府の新しい「ジェンダーに基づく暴力に対する戦略」では、女性が置かれている状況が明記され、家庭内暴力や性暴力への対応を最優先するファミリーサポートセンターの存在意義が強調されるものになりました。
②宗教的奉仕活動団体のための研修マニュアルの発行
地域開発局のシニアマネージメントチームの承認を得て、子どもの保護やケアを行う宗教的奉仕活動団体のための研修マニュアルを2000部発行しました。マニュアルのポイントは、以下のとおりです。
③「Lukautim Pikinini 子ども条例」(2009)を施行のための人材養成
ステークホルダーや専門家を対象とした「Lukautim Pikinini子ども条例」施行のためのマニュアルが開発されました。また、州や地方政府がパートナーに対しマニュアルの内容を伝えられるよう、14州のコミュニティ開発のトレーナーたちは「トレーナー研修」を受け、14州が「Lukautim Pikinini 子ども条例」を施行する能力を習得しました。さらに、地方政府の人材の能力開発と強化のため、子どもの保護に関するオペレーションマニュアルおよび法律に関するコミュニティへの啓発資材を開発しました。
④弱い立場にある子どもたちの基本的な社会サービスへのアクセス状況の把握とベースラインの設定および課題の明確化:
ユニセフは、養子や里子、孤児などの弱い立場にある子どもの社会サービスへのアクセスについてベースラインを設定するために、世帯収入・支出調査を行う統計局へのアドボカシーと技術的支援を行いました。クンディアワカトリック教区が実施する「最も弱い立場にある子どもたちのためのプログラム」(弱い立場にある子どもの教育、保健、保護などの基本的なサービスへのアクセス状況を把握し、サービスの障壁となっている事項を明確にするためのプログラム)に参加する183人の子どもたちの状況分析を行いました。ユニセフは、同プログラムを最良のモデルケースとしてプログラムの文書化やレビューを行い、今後の宗教的奉仕活動団体の研修に活用する予定です。

【4】制約と課題
支援プロジェクトの実施にあたり、政府、市民社会、コミュニティの各レベルの能力不足と犯罪や紛争によって国の治安が不安定であることによって、プロジェクトの目的の達成に支障を及ぼすことも多くあります。また、光熱費や家賃、交通費などが世界で最も高い国の一つと言われるほど過度に高く、プロジェクトを運営するための経費が多くかかるなど課題があります。
今回のプロジェクトでは、病院運営体制の急な変更により、ポートモレスビー公立病院の栄養チームの設立を中止せざるを得ない状況となりました。このため、同病院の栄養治療に関わる備品および東山岳州のヘンガノフィ妊産婦クリニックの改修のために、予定していた資金を充当し活用させていただきました。また、政府内の調整に時間かかるなどインフラ改修や医療設備の改装の実施が計画通りに進まないことが多くありましたが、関係者間で何度も協議を行い、計画を遂行することができました。

【5】資金の使途
活動 実費(US$)
●母子保健と栄養支援
  • ゴロカ病院栄養チームの設置および栄養治療病棟の改修
  • ポートモレスビー公立病院の栄養治療のための備品の調達・提供
  • 東山岳州ヘンガノフィの地域保健センター妊産婦クリニックの拡張
  • 10人乗り車輌の調達・提供(NGOのMarie Stopesによるマウントハーゲン地域の移動型母子保健や母子感染予防サービスを実施)
  • 母子保健と母子感染予防のための母子保健キットの提供
  • 医療器具や医薬品の調達・提供
126,594.30
●HIV/エイズ
ポートモレスビー公立病院
  • HIV感染している子どもを対象とした小児HIV/エイズの治療やケア、栄養支援
  • 妊産婦クリニックの修復
  • 医療器具や医薬品の調達・保管・提供
  • HIVの影響を受けている子どもたちへの支援
ミンジェンデ病院
  • 小児HIV/エイズ治療を行うクリニックのマネージメント研修
  • 乳児の食餌サポートを含む治療やケアのための支援
マウントハーゲン、ラエ、ゴロカの3地域
  • 母子感染予防と小児HIV/エイズ治療に関する母子保健の地区コーディネーター支援
  • ヘルスワーカーを対象とした産婦ケアと母子感染予防サービスに関する研修
  • 母子感染予防とHIV検査に関わる保健省への技術的支援
  • 医療備品の調達・提供(ブランケット、梅毒検査キット、助産キット、母子保健や母子感染予防に関わる器具など)
122,842.10
●HIV/エイズ 青年期の子どもへの支援
  • 青年アウトリーチプログラムを実施する宗教的奉仕活動団体(バハイ)への支援
  • ライフ・スキルトレーニングや「若者にやさしい」保健サービスを実施するMarie Stopes(NGO)の支援
  • 母子感染予防サービスを実施するフレンズファンデーション(NGO)の支援
26,995.16
●子どもの保護
  • ファミリーサポートセンターの設置
  • 司法局への技術的支援
  • 地方政府やコミュニティへの保健・教育・HIV/エイズ・子どもの保護に関する啓発活動
  • 研修用マニュアルの作成・印刷
  • 弱い立場にある子どもの保健と福祉に関する調査と分析(サンプルとしてクンディアワカトリック教区にて実施)
142,125.45
合計 418,557.01

【6】謝辞
このたびのご支援によって、パプアニューギニアの保健サービスの整備と質の向上のための活動に役立てることができました。特に、医療資材や備品の調達、インフラのサポートによる母子保健サービスの強化、母子感染予防や小児HIV/エイズプログラムの実施を通じ、パプアニューギニアの多くの女性や子どもたちが適切な保健サービスやHIV/エイズ治療を受けられるようになりました。パプアニューギニアの母親や子どもたちに代わり、フジテレビをはじめとするFNSチャリティキャンペーンに感謝申し上げます。

写真資料:支援後の様子
  PHOTO   PHOTO
  妊産婦クリニックに診療を受けにきた女性たち   HIVと梅毒の簡易検査のようす
 
PHOTO
ポートモレスビー公立病院で出産した母親と新生児
 
  PHOTO   PHOTO
  ポートモレスビー公立病院で出産した母親   検診を受ける女性

BACK
このページに掲載されている写真はすべて著作権管理ソフトで保護され、掲載期限を過ぎたものについては削除されます。無断で転載、加工などを行うと、著作権に基づく処罰の対象になる場合もあります。 なお、『フジテレビホームページをご利用される方へ』もご覧下さい。
フジテレビホームページをご利用される方へ