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訪問日:8月4日(金)
場   所:ポートモレスビー総合病院内
報   告:ユニセフ・パプアニューギニア事務所 奥村 玲子


ジュニア君の近況報告 「ジュニア君はその後どうしているかな〜?」FNSチャリティキャンペーン取材班の質問が頭から離れなかった私は、日本からポートモレスビーに戻った翌日、ジュニア君が通っているフレンズ・ファウンデーションに電話を入れてみました。「金曜日のセッションにジュニア君が来るから来てみたら?」との誘いに、さっそく会いに行くことにしました。
フレンズ・ファウンデーションがある、総合病院内のオフィスに行くと、入り口の待合室にジュニアがトレードマークのベレー帽を被って座っていました。私と目が合った瞬間、ジュニア君は笑顔を浮かべてくれました。妹さんも一緒です。フレンズ・ファンデーションのテシー・ソイさんに、そっとジュニア君の近況を聞きました。
ジュニア君はここ2,3週間風邪を引いていたとかで、久しぶりにセッションに顔を出したのだそうです。「概して元気にやっている」とのことでしたが、実際にジュニアと握手をすると、彼の手と腕がとても細く感じられました。そして、手にできたたくさんのできものが気になりました。「元気?どうしていた?」と聞くと、「元気だったよ」と彼。「日本の取材クルーと先週日本で会ったんだよ。ジュニア君の番組を見たたくさんの日本のお友達が、ジュニア君を応援しているよ。みんなジュニア君のことを思っているよ」と伝えると笑顔を返してくれました。やせ細ったジュニア君の体とは対照的な彼の満面の笑みが逆に痛々しく感じられました。
取材クルーと日本で一緒に撮った写真がデジカメに入っていたので、ジュニア君にそれを見せると、とてもうれしそうな笑顔をしました。「佐々木恭子さんは?」と聞くので、恭子さんの写真を見せると、妹と画面を見て嬉しそうに笑い声をあげていました。日本から持ち帰るお土産は何がいいだろうかと考えていましたが、音楽好きな彼には、一人でも楽しめるハーモニカがいいと思い買ってきました。ジュニア君はハーモニカを吹きながらとても喜んでいました。

ジュニア君の近況報告 ジュニア君の痩せ方が気になったので、再びテシーさんに事情を聞きに行きました。すると、彼の世話をしていたおばあさんが別の町に引っ越したのだと言います。おばあさんはテシーさんと相談した末、ジュニア君をポートモレスビーに置いていくことにしたのだそうです。それは、フレンズ・ファウンデーションを通して、HIVエイズの薬と治療が受けられ、生活支援が受けられること。そして、セッションでは友達にも会えるから、それのほうがジュニアにとってはいいだろう、と判断したのだそうです。「テシーさんをポートモレスビーのお母さんだと思うように」とおばあさんはジュニア君に言い残してポートモレスビーを去ったそうです。
しかし、おばあさんが引っ越した後は、周りからあまり食べ物をもらえないのだそうです。私はテシーさんに、「少しでもジュニア君の環境が良くなるように、あるいは栄養のある食べ物を摂らせるように話してみて」と頼むと、「それはいつもお願いしているのよ」と言います。「親戚の人たちも分かっている、と言うのよ。ただ、どうやら実際は自分たちからはごはんもあまり与えず、ジュニア君が稼いだろうそく代も彼がいない間に誰かが勝手に彼の部屋に入って取ってしまうらしいのよね」とテシーさん。説明を聞いて私は呆気に取られてしまいました。彼が稼いだなけなしのお金さえも盗むのかと。それと同時に、HIV/エイズの問題の難しさ、特にパプアニューギニアで根強いHIV/エイズに対する偏見や差別を目の当たりにしたような気がしました。テシーさんもジュニア君を自分の家に呼んだり、親戚に説明したりと精一杯やってくれています。やはりHIV/エイズの問題は個人レベルの支援に加え、コミュニティー、地方、国など様々なレベルから包括的に支援をしていく中で、少しずつ問題を解決しながら状況を改善していく必要があると思いました。「ジュニア君の親戚の態度を変えるには時間がかかるかもしれませんが、辛抱強くできるだけのことはやってあげてください」とテシーさんにお願いしました。

ジュニア君の近況報告 最近、フレンズファンデーションの支援で自転車を手にしたジュニア君。自転車に乗れば近くの水汲み場に行くことも容易になります。テシーさんは、「今回のユニセフの援助で、セッションにくる参加者へ提供する生活支援、食べ物や石鹸など生活必需品を提供できるようになったのよ」と言います。またジュニア君には、彼の部屋に人が勝手に入れないように、部屋に壁とドアをつけて、部屋に鍵がかかるようにしてあげようと考えていて、「いま彼のおじさんと交渉中なのだ」と言います。テシーさんは、さらに、私が座っているいすの横にある大きなダンボールを指差しました。そこには、バナナ、ココナッツ、芋などがセッションの後に参加者が持って帰れるようにビニールに小分けされたものが入っていました。
テシーさんは「またいつでも来てくださいね」と言ってくれました。職場に帰る途中、ユニセフの職員として、一人の人間として自分には一体何ができるのか、何をすべきなのか、そして最善の方法は何なのだろう、という様々な問いが頭の中をかけめぐっていました。

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