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毎年、地球上には1億3,200万人の新しい命が生まれます。しかし同時に多くの子どもが短い生涯を閉じています。5歳の誕生日を迎えることなく亡くなる子どもの数は年間約1000万人以上。3秒にひとりが死亡している割合です。この現実はパプアニューギニアでも例外ではなく、5歳未満の子どもたちの多くが命を落としています。原因は、栄養不良、マラリア、下痢、はしか、肺炎などで、そのほとんどが予防できる病気です。医療施設や医療機器、専門的なスタッフの不足、技術・能力の不足は深刻な問題で、医療・保健サービスの改善・拡大が求められています。さらに、近年HIV/エイズは感染が急速に拡大しており、社会的に弱い立場にある女性と子どもたちが大きな影響を受けています。パプアニューギニアでは、毎年1200人の子どもたちがHIV/エイズに感染しています。HIV/エイズに感染する子どもの多くは妊娠・出産期に母親から感染する母子感染によるもので、母子感染予防・小児エイズ治療を中心に、妊娠期から出生後まで母子ともに総合的にケアする体制作りが求められています。

乳幼児の死亡に大きく関係している問題の一つが、安全な水や衛生的な環境の欠如です。世界では10億人以上の人びとが安全な飲み水を手に入れることができず、また26億人以上がトイレなどの基本的な衛生施設のない生活をしています。そのため、毎日数千人の幼い子どもが下痢性の疾患で命を失っています。農村地の給水・衛生施設の整備の遅れは顕著で、農村に暮らす人びとの多くが不衛生な水を使って生活しています。安全な水を手に入れること、そしてトイレなどを設置し衛生的な環境を整えることは、子どもたちの命と健康を支えるユニセフの活動の中でも、特に乳幼児期という子どもの成長の中で最も大切な時期に不可欠な支援です。

2007年度のFNSチャリティキャンペーンを通じたご寄付は、パプアニューギニアの医療や保健システムの整備、HIV/エイズの流行の状況下における母子感染予防と小児エイズ治療の拡大、そして給水・衛生施設の整備並びに衛生教育の促進に活用させていただく予定です。
2007年8月
(財)日本ユニセフ協会
プロジェクト概要
■支援国 パプアニューギニア独立国
■プロジェクト名 HIV/エイズの拡大する状況下での母子保健サービス強化プロジェクト
(Strengthening Maternal and Child Health Services within the context of emerging HIV epidemic in Papua New Guinea)
■対象エリア ポートモレスビー、西山岳州、東セピック州
■受益者 上記3地域の女性と子ども(特に妊産婦、乳幼児)
■背景 パプアニューギニアは、人口600万人。民族や言語などあらゆる面において多様性に富み、肥沃な土地と豊富な資源を持つ国である一方、いくつもの課題を抱えています。

妊産婦・乳幼児死亡率とHIV/エイズ拡大
太平洋地域の中で、パプアニューギニアの乳幼児や5歳未満の子どもたちの死亡率が高くなっています。5歳の誕生日を迎える前に亡くなる子どもの数は年間13,000人。1日に35人の子どもが亡くなっています。また、13,000の子どものうち、8,000人の子どもは1歳になる前に亡くなっており、1日に20人の子どもが亡くなっています。死亡の主な原因は、下痢、マラリア、肺炎、栄養不良、はしかなど、予防や治療が可能な病気です。さらに近年は、HIV/エイズが脅威の存在となっており、死亡の原因のひとつになっています。パプアニューギニアは、HIV/エイズの拡大が顕著な国のひとつにあげられています。国民の2パーセントに近い人々が感染していると推定されていますが、国家エイズ委員会によると、感染者の記録があるのは17,000件にすぎず、確かな数字はわかっていないのが現状です。
国内のHIV/エイズの流行の拡大は、社会的に弱い立場にある女性や子どもに大きな影響を与えています。HIVに感染した子どもの多くは、母親から感染しています。母子感染は適切な対策をとれば、感染率を30%から2%にまで抑えることができます。しかしながら、パプアニューギニアでは、妊産婦のケアの貧弱さにより、母子感染予防の恩恵を受けることができないのが現状です。むしろ、妊娠・出産適齢期の女性のHIV感染者数は増加しており、母子感染予防など適切なサービスを受けることができなければ、HIVに感染して生まれてくる子どもたちの割合も増加するという悪循環が続く深刻な状況にあります。
基礎的な医療設備、保健サービスの改善を図るとともに、HIV/エイズ分野において、母子感染予防や小児抗レトロウィルス薬治療などを含む専門的な医療サービスの整備が強く求められています。

水と衛生
パプアニューギニア政府は、清潔で安全な水にアクセスできる家庭を2015年までに60%、2020年までに85%にまで増加させることを目標に掲げています。昨年、農村部の水の供給と衛生プログラムがEU主導で開始されましたが、学校や保健センターは対象外となっています。農村部の村落だけでなく、学校や保健センターでも、単純な掘り抜き井戸や、覆いのない貯水槽、川、池、湖の不衛生な水を使用しています。この結果、子どもたちは下痢や腸チフスなどの汚れた水が引き起こす病気にかかっています。保健省によると、年間122,000人の5歳未満の子どもたちが下痢性の病気で通院し、年間平均5,073人が腸チフスにかかり治療を受けています。
学校は子どもにとって重要な学びの場所です。学校で子どもたちは衛生に関する正しい知識を得て、生活のなかで衛生的な行動をとることができるようになります。学校や保健センターの給水・衛生施設の設置、そしてそれに伴う衛生的な行動への変化は地域全体にとっても良い手本となります。
また、学校への給水施設やトイレなどの衛生施設をつくることが重要なひとつの理由として、生徒たちへの影響があげられます。学校の給水・衛生施設の欠如と、生徒の学校欠席の増加は関係があり、学校に男女別のトイレがないことで、生徒、特に女子生徒が学校を欠席する傾向があります。学校の給水・衛生施設の整備は全ての子どもたち、特に女子生徒にとって適切な学校づくりの大切な要素となっています。清潔で安全な飲み水を得るため、また衛生概念を学ぶためにも、学校や保健センターでの衛生施設の整備が必要とされています。
■目的
基礎的な医療施設の整備や最低限必要な医療器具などの調達をはじめ、子どもの生存と母性保護の実施強化、母子感染予防と小児HIV/エイズサービスの統合を目指す。
子どもたちにとって適切な学校環境づくり:保健システムの改善し、また学校欠席者を減少させる。
■支援内容 1)産婦人科の基礎設備の支援 ($40,000)
東セピック州(ウィワク病院)
  ・ マタニティクリニックの修復
(検査、カウンセリング、血液検査、看護師用のオフィス、トイレなど適切なスペースのしきり)
  ・ 換気設備
  ・ イスなどの基本的な備品の提供

2)マラリア予防のための蚊帳の調達 ($28,000)
東セピック州、ミルネ湾地域、ブーゲインビル州
  ・ 5,000張りを3地域へ

3)病院の基礎的な医療設備の調達 ($15,000)
ポートモレスビー総合病院、マウントハーゲン病院、ミンツ保健センター、マプリク保健センター
  ・ 血圧計、胎児鏡、体重計、聴診器、体温計、吸引器、手袋など

4)検査用キット ($25,000)
ポートモレスビー総合病院、マウントハーゲン病院、セピック希望センター
マプリク保健センター、9マイルクリニック
  ・
  ・
  ・
HIV検査キット
梅毒検査キット
基本的な検査用器具

5)産婦人科、保健センター用の諸設備、医療器具 ($15,000)
ポートモレスビー総合病院
  ・
  ・
イス、分娩台
小児用抗レトロウィルス薬用の冷蔵庫
マプリク保健センター
  ・ ベッド用マットレス
レビアムールクリニック(西山岳州)
  ・
  ・
患者の情報管理のためのコンピューター
薬剤のための冷蔵庫
フレンズファンデーションを含む全保健センター
  ・ 感染予防策用の消毒薬など

6)妊産婦・小児用薬剤 ($17,000)
マウントハーゲン病院、ポートモレスビー総合病院、ウィワク州病院
  ・ おとな・子ども用:抗生物質、セファロスポリンは静脈注射や経口投与薬、共に含まない、セプトリン(静脈注射)
  ・ 妊産婦:抗生物質(日和見感染症、母乳ケア、止血を含む出産・陣痛時・出生後に使用する基礎的な薬剤)

7)学校の給水・衛生施設の改善 ($25,000)
アビアンプ小学校
  ・ 給水施設の導入(雨水貯蔵システムの設置−貯水槽、パイプ、計器盤、スタンドパイプの調達)
  ・ 換気付き落とし込み式便所の設置
■支援期間 1年
■必要資金 約US$165,000
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