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田中 亮介 マラウイ共和国と聞いて皆さんの頭の中にパッと地図がうかびますか?
たいていは、「それは一体どこにあるの?アフリカ?聞いた事ないな」という反応が普通だと思います。そんな、未知の国 アフリカ大陸 『マラウイ共和国』。
私たち取材スタッフは、HIV/エイズ取材に対する期待と不安を胸にアフリカの大地に降り立ちました。とにかく、アフリカへ入国するのは初めてなだけに、どんな人々がどんな暮らしをしているのかHIV/エイズ被害はどんな広がりを見せているのか想像もしにくい状況でのマラウイ入りとなりました。

今回の支援のテーマは『Unite Against AIDS みんなでエイズと闘おう。〜マラウイの子どもたちをエイズから守ろう〜』です。
FNSチャリティキャンペーンとしては、33年目にして初めてHIV/エイズ問題と真正面から取り組む中での取材です。
取材の中心地は、マラウイ共和国の中央部、首都リロングウェ。そしてHIV/エイズ被害の深刻な南部のマンゴチとブランタイヤでしたが、マラウイ国内におけるHIV/エイズ被害は想像以上でした。両親をエイズでなくした子どもたち、いわゆる孤児たち。HIVポジティブの子どもたち。そして、エイズを発病している子どもたち。各地域でカメラを向けその実情をつぶさに取材してきました。日本のカメラに顔を出すことは、本人や近親者の同意を取って行いました。しかし、HIV/エイズには偏見や差別もあることも事実で、取材スタッフの人数制限なども受け、HIV/エイズ取材の難しさを肌身で感じてきました。日本やアジア圏では今回のような取材ができたかどうか?かなり難しいと思います。
アフリカ地域だからできたことかと複雑な思いで2週間の取材を終えました。

また、今回マラウイで『幸せ』についても考えさせられました。首都リロングウェでビックリしたのは、聞くところによると30%の家に電気がないとのこと。(実感としては50%以上の家に明かりがなかったように思います。)電気のない暮らし・・・また、マンゴチの農村部に住む人々の暮らしは、日本から行った身にとっては比べ物にならないほど質素な生活。無論電気はなし。土やレンガの壁、の家に住み、土の床の上にゴザを敷いて睡眠をとる。ある家族は、わらの屋根の家に住み、雨が降ると雨漏りで夜中でも立たなければならず眠りをさまたげられる。靴のないはだしの生活。ブランタイヤでは、8万人の人々が身を寄せ合って暮らすスラム街の生活。日本人の生活からは想像の出来ない暮らしぶり。
しかし、驚いたことに、子供たちの表情は底抜けに明るくカメラを向けるとおどけて、笑顔また笑顔。不思議なほど輝いていました。
そして、私の質問に対して笑顔で『幸せです。』と応えてくれました。
テレビも、新聞も、そばにはなく、また、全ての家にあるわけではないラジオのみの生活。情報が少ないマラウイの人々の一般的な生活。
情報過多の中で暮らす私たちが幸せなのか、アフリカの大地で自由にのびのび暮らす彼らが幸せなのか。
『本当の幸せとは何か』をも考えさせられました。

今回の取材を通し、FNSチャリティキャンペーンは、マラウイの子供たちのために募金を集めますが、余りにも多すぎるHIV/エイズ被害にあっている子どもたち。彼らに何をどうしてあげればいいのか、集まった募金でFNSは何をすればいいのか。大きな課題に突き当たりました。余り時間はありませんが、これからじっくり考えなければなりません。
『HIV/エイズは子どもの将来を壊し、国の未来を壊す』といわれています。
しかし、HIV/エイズは正しい知識さえあれば撲滅できる病気です。FNSチャリティキャンペーンは、マラウイ共和国を第1歩として今後もHIV/エイズと真正面から闘い、皆さんに問いかけを行って行きたいと思っています。
最後になりましたが、今回日本から同行していただいた日本ユニセフ協会の加藤朱明子さんを始め、全面協力をいただいたユニセフマラウイ事務所及び日本ユニセフ協会の関係者の皆さんに心より感謝いたします。
FNSチャリティキャンペーン推進室 田中 亮介
加藤朱明子 HIV/エイズの、それも子どもに焦点を当てた取材は、難しいというのが常識です。多くの国では、HIV/エイズは差別や偏見に直結する死の病気であり、この問題を語ることはタブー視される傾向にあるからです。本当に取材は可能なのか、ユニセフ・マラウイ事務所との事前のやりとりは、じつに膨大なメールの束になっていました。それでも10日間の取材期間中、いったい何人の子どもがHIV/エイズについて語ってくれるか、不安を抱えてのスタートでした。
取材が始まってまず驚いたのは、村の幼稚園、学校、病院、どこへ行ってもエイズで親を亡くした子どもやHIVに感染している子どもがいるという現実です。現地スタッフに聞くと「あの子とあの子だよ」とすぐに返事が返ってくる。「少し話を聞ける?」と訪ねると「わかった」と答えてくれる。それはマラウイの本当の状況を伝えたい私たちにとってありがたくもあり、しかし広がりの深刻さを実感する複雑な状況でもありました。もう一つの現実は、HIV/エイズの影響を直接受けている子どもたちの多くは、この病気についての十分な知識をもっていないということです。どうしてお父さん、お母さんが死んでいったのかわからないまま、幼い弟妹を守りながら必死に生きている、それが今のマラウイの姿なのです。こうした子どもたちこそ最もHIV感染のリスクが高く、一刻も早い支援が必要であることを痛感させられました。
ユニセフは、子どもたちをHIV/エイズから守るために、この国で中心的な役割を果たしています。小児用の薬の調達や配布、母子感染予防の普及、親を亡くした子どもたちの生活支援、エイズ教育など、すべての分野でこの問題に取り組んでいます。しかし、「まだまだ足りない」「もっと拡大しなくては」というのが、現地ユニセフスタッフの痛切なそして正直な声でした。このたびのFNSチャリティキャンペーンが、マラウイの子どもたちを支える大きな力になることは間違いありません。
今年、マラウイへの支援を決断くださったフジネットワークのみなさまをはじめ、現地取材を敢行してくださったクルーのみなさま、FNSチャリティキャンペーン推進室のみなさまに、この場をお借りしてあらためてお礼申し上げます。勇気をもってHIV/エイズのことを私たちに語ってくれた子どもたちの声が、このキャンペーンを通じてひとりでも多くのみなさまに届くことを願って止みません。
財団法人 日本ユニセフ協会 個人・企業事業部 加藤朱明子

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