御家人斬九郎ファイナルシリーズ
御家人斬九郎ファイナルシリーズ
2002年2月26日(火)放送終了

放送内容詳細

 時は幕末。ペリーが来航し、江戸は大騒ぎ。松平斬九郎(渡辺謙)とその母・麻佐女(岸田今日子)、そして芸者の蔦吉(若村麻由美)も時代の風と無縁ではない。蔦吉はアメリカの使節を幕府が接待する座敷に出る。オランダ語の心得がある麻佐女まで何かの間違いで通訳を依頼されたりする。
 そんななかで悲劇が起こった。斬九郎の兄で他家に養子に行った西垣与市兵衛(三浦浩一)が切腹して果てたのだ。下河原藩江戸屋敷の勘定吟味役である与市兵衛は、藩の公金を三百両も着服し、それが露見。自ら申し出て切腹した。与市兵衛の妻・登紀(中村久美)は藩からそう聞かされた。
 与市兵衛は正義感が強く暮しも質素だった。斬九郎は、兄が公金を着服するなど信じられなかった。不可解なことに、西垣家は存続を許されている。本来なら断絶だ。
 斬九郎は、十手持ちの佐次(塩見三省)に下河原藩の内情を探らせる。尊王、攘夷と各藩は大揺れに揺れる時代だったが、小藩の下河原藩は日和見。それでいて夜中に裏門から侍に守られた籠が出て行くなど、不思議な動きもあった。
 斬九郎が刺客に襲われる。数人を斬った斬九郎は遺体を下河原藩邸に運ぶ。家老の内藤兼友(山崎努)は斬九郎に、「何もない。無駄なことをするな」と警告した。内藤は、後に大老となる彦根藩主・井伊直弼の腹心の部下・長野主膳(松重豊)と会っていた。
 奉行所の西尾伝三郎(益岡徹)が解説してくれた。幕府は開国の方針で、井伊直弼を大老職に就けて難局を乗り切ろうとしている。一方、水戸藩や一橋家は攘夷派でこれを阻止しようとしている。与市兵衛の死はこの政争と関係ありそうだった。
 夜の道で、彦根藩主が乗っていると思える籠が刺客に襲われる。籠を守るのは長野主膳だ。刺客は水戸藩士と見えた。通リかかった斬九郎は、刺客と戦い籠を守った。ところが何かおかしい。籠は空籠らしい。おまけに倒れた刺客は下河原藩邸で見た顔だった。河合通之進(大沢健)という。
 斬九郎は重い傷を負った通之進をかくまった。通之進は驚くべきことを告白して息を引き取った。下河原藩士は長野主膳に使われ、水戸藩士になりすまして井伊家の無人の籠を襲わされた。水戸藩を窮地に陥れるためだ。家老の内藤もそれを認めている。与市兵衛はその理不尽さに憤り、家老に意見した。
 ところが内藤は、藩主の世継ぎをめぐるごたごたを、実力者の長野に内密に処理してもらった弱みがあり、藩士を井伊家の傭兵のように使うことを断れない。そして、意見した与市兵衛に無実の罪を着せて詰め腹を切らせたのが真相だった。
 斬九郎の怒りが爆発した。斬九郎は船久に麻佐女、登紀、与市兵衛の息子・三郎助(橋本亘)と伝三郎を集めた。そこでことの真相を伝え、兄の無実を晴らすために一人で立ち上がる決意を語った。「それでは松平家の行く末が」と案じる伝三郎に斬九郎は、「どうせそろそろ侍の世の中はなくなる」と言った。麻佐女は無言だった。
 内藤から「話をしたい」との手紙が届いた。場所は芝のある寺である。罠かもしれないが斬九郎は行く。雪が降り出した。
 雪道を寺へと急ぐ斬九郎の前に蔦吉が立っていて、傘を斬九郎に渡す。「返して下さいね」としか言えない蔦吉の胸のうちは斬九郎にも分かる。おたがいに、これが別れだと思っていた。
 斬九郎は茶室に招かれ内藤と対する。だが内藤が自らの否を認めるわけがない。斬りあいとなった。一人対無数。刀が、槍が次々と斬九郎に襲いかかる。寺の境内の雪を血に染めての修羅場となった。突然短銃の音がし、肩を撃たれた斬九郎が倒れる。それでも戦いは続いた。
 蔦吉が雪道を裸足で寺へ走る。ようやく寺に着いた蔦吉が見たものは、雪が積もった藩士たちの死体。そして、傷だらけで動かなくなっている斬九郎。寒椿が赤く咲いていた。
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出演者

松平残九郎(通称 斬九郎) … 渡辺 謙
松平麻佐女 … 岸田今日子
蔦吉 … 若村麻由美
西尾伝三郎 … 益岡 徹
南無八幡の佐次 … 塩見三省
西尾るい … 唐沢 潤
おえん … 奈月ひろ子

スタッフ

企画
  能村庸一
  西岡善信

プロデューサー
  保原賢一郎
  西村維樹

原作
  柴田錬三郎(新潮社刊)

脚本
  金子成人

音楽
  佐藤 勝

監督
  渡辺 謙

制作
  フジテレビ
  映像京都