第5回 2005年2月10日(木)放送 あらすじ

#5 記憶

 勇吉(寺尾聰)に怒られ、拓郎(二宮和也)のもとへ行った梓(長澤まさみ)は、拓郎から勇吉が父親であることを聞かされ、さらにショックを受けた。なかなか家に戻らない梓を心配し、勇吉は朋子(余貴美子)のもとへ電話を掛けるなどして梓を探した。「森の時計」まで立ち寄った朋子は「いちいち気にしてたら始まらない」と勇吉を慰めながら、音成(布施博)の自殺の話を持ち出した。朋子は、返ってこないことを承知で「300万円貸した」と言う。その時、やっとリリ(森上千絵)から「梓がアパートに帰って来た」と連絡が入り、梓行方不明騒ぎは事なきを得た。
 だが、梓のショックは覚めやらず、リリと口をきく様子もなかった。布団を被る梓は、車の中で拓郎から聞いた勇吉と拓郎の関係を思い出していた。「俺は、俺が原因の交通事故で母親を死なせてしまった」と告白する拓郎。「母さんを愛していた父さんが俺に口をきかない気持ち、俺はものすごく理解できるんだ」。
 翌朝、「森の時計」はいつものように営業を開始した。そこへ、ぼーっとした中年男(小日向文世)が入って来た。その男がリリに言う。「私、どうしてここにいるんでしょう」。男は記憶を失っていた……。
 常連客の横山(水津聡)や滝川(納谷真大)、獣医の木梨らとリリやミミ(高橋史子)が男の持ち物などを調べるが、一向に埒が明かない。
 そんなころ、梓は朋子の「北時計」のドアを開けた。朋子は「マスターがショック受けてたわよ」など軽口を言いながら梓を受け入れる。と、梓は「ママは拓郎さんを知ってるんですか」と切り出した。朋子は、拓郎のもとへ出入りしている少女が梓であると察した。梓は拓郎と勇吉の関係を知ったことを、朋子に語った。梓は「なぜマスターは拓郎を許せないのか」と突っ込んでくる。朋子は「勇吉さんは、海外赴任中に自分がまったく知らなかった拓郎の非行や苦しみを母親のめぐみが一人で背負っていたことにショックを受けた。勇さんはメグも拓のことも信じ切っていたから、息子に裏切られた気持ちが強い。その分、拓郎を許せないんだと思うよ。分かんないかもしれないけど」と言い聞かせるように説明するのだった。
 音成の通夜が近所の寺で始まった。勇吉はじめ「森の時計」の常連客らが顔をそろえている。その時「森の時計」にはまだ記憶喪失の男がいた。リリたちが持ち物から分かったことで旅館などを当たるが相変わらず成果はない。そこへ、田村(正名僕蔵)が入って来た。田村は「音成が自殺したメロン農家の納屋を、持ち主が寝覚めが悪いと壊すらしい」など話し始めた。すると、男が反応した。「メロン農家……納屋……。戻って来た、記憶が……」。徐々に記憶を手繰る記憶喪失の男。「そうだ、私は金融業者だ。音成さんの取り立て担当で、うまくいかず、音成さんに本当にひどいことを言いました。で、ご主人が自殺……。それで今日お通夜に伺ったんです」。男は音成の通夜に飛び出して行った。
 しばらくすると、通夜を終えた勇吉や常連客らが帰って来た。軽口や冗談も湿っぽくなる。そんなころ町を行く梓の携帯電話が鳴った。拓郎からである。拓郎は「親父は、君を傷つけるために言ったわけじゃない。分かってやってくれ」と言う。梓は「そんなに優しいのに、なぜ会おうとしないの」と問い返す。だが、拓郎は答えず、「おやすみ」と言って電話を切ってしまった。
 皆が帰った後の「森の時計」に音成の妻・春子が顔を出した。恐縮する勇吉に、春子は香典を返そうとする。「過分なお志を頂き、お返しします」と言うのだ。春子は続けた。「主人が失礼なお願いをしていたことは知っていました。しかし、もうこれ以上皆様のお情けにすがる必要もありません。お気持ちだけ頂戴いたします」と気丈に香典の包みを勇吉に渡すのだった。
 勇吉が包みを手にカウンターに戻るとめぐみ(大竹しのぶ)が笑っている。「借金の申し出を断ったから、わだかまりがあってたくさん包んだでしょう。あなたって冷たい振りするくせになりきれないのよね。アズちゃんにも同じ」とめぐみ。勇吉が「俺はもともと冷たくなんか、ないんだ。そう見えるとしたら……」と言いかけた時、外で物音がした。勇吉が裏口に出ると道路の雪かきをしている人影が。梓である。勇吉に気付いた梓は顔を上げぬまま「昨日は御免なさい。もう一度この店に置いて貰えませんか」と頼むのであった。

キャスト

湧井勇吉 … 寺尾 聰
  ○
湧井拓郎 … 二宮和也
皆川 梓 … 長澤まさみ
  ○
中年男 … 小日向文世
  ○
九条朋子 … 余 貴美子
天野六介 … 麿 赤兒
  ○
湧井めぐみ … 大竹しのぶ

 ほか

スタッフ

■原作・監修
 倉本 聰
■脚本
 吉田紀子
■監督・演出
 田島大輔
■音楽
 渡辺俊幸
■制作
 フジテレビジョン
 フジクリエイティブコーポレーション(FCC)

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