第4回 2005年2月3日(木)放送 あらすじ

#4 根雪

 「森の時計」の水道管が凍って常連の水道屋・立石(國村隼)に早朝から仕事を頼む羽目になった。富良野はもう、根雪である。そんな「森の時計」には、朝から窓際でベッタリくっついて離れないアベックが居座り、変なムードが漂っている。立石は、「娘と婚約した下品な“パチンコ王”が、結納金1000万円出すと言い出し、それは欲しいし、娘を売り飛ばす気がするし、悩んでいる」とミミ(髙橋史子)に話し出した。と、横で聞いていた梓(長澤まさみ)が大声で「不潔です、破談にすべきです」と喚き立てるのだった。その梓は、どうも、オーダーを忘れるし代金の計算もうまくいかないのだ。
 昼を過ぎても、そのアベックはじっとしている。そこへ佐久間(久保隆徳)が現れた。小声で勇吉(寺尾聰)に「電機店の音成(布施博)が、顔見知りに金を無心している。ここにも来たか」と言うのである。音成は現れてはいなかった。
 午後3時を回ってもアベックはそのままであった。リリ(森上千絵)が「死んでるんじゃない」とまで言い出す。そこへやっと風間刑事(山下澄人)がやって来た。制服の警官も伴っている。4人がアベックに近づく。と、件のアベック、突然体を起こし「行こうか」と行ってしまうのだった。
 その後で音成が現れた。勇吉に「頼みがあるんだ。時間が残ってないんだ」と切迫した様子だ。「200万円、いや、150、100でもいい。6時までに用意しないと店を取られちまう。お願いします」と懇願する。だが、勇吉は「できません」とピシャリと拒否した。「私は商社にいて金の怖さは身に染みています。あなたは友人です。友人に金の貸し借りはいけません」。音成は諦めたが、席を立とうとはしなかった。そのやり取りを陰から見ていた梓は勇吉に対して怒りの表情を見せていた。
 6時になり、梓は帰路に着いた。その途中で商品を運び出す騒ぎになっている「音成電機店」に気付いた。再び怒りが込み上げてくる梓だった。梓は思い立ったように車を走らせた。
 「森の時計」では音成がコーラスの練習を聞きながら「高校のコーラス部に好きな子がいて、6年がかりで口説き落とした。それが今の女房。合わす顔がない」と慟哭するのだった。
 六介(麿赤兒)は、拓郎(二宮和也)の家の中に女の子がいるのに気付いた。前にも見た子だ……梓である。梓は音成電機店の騒ぎを見て拓郎の家に向かったのだった。六介は自宅にとって返し、洋子(朝加真由美)に「何かあるといけない。朋子さんに連絡した方がいい」と促すのだった。
 後日、「皆空窯(かいくうがま)」に朋子(余貴美子)が訪ねて来た。朋子は「修行中は専念しなさい。女の子を家に上げちゃだめ。他の人以上に自分に厳しくしないといけない」と拓郎を諭すのだった。
 そのころ、梓は、レジの金をポケットに入れていた。ミミがそれに気付いた。梓は「計算が合わず、現金の方が多かった。分けただけだ。盗ったんじゃない」と言い張る。その騒ぎに勇吉も気付いた。「以前は少なくて自分のお金をレジに入れた。今度は多いからポケットに入れただけだ。盗みとは違う」と言い募る梓に、勇吉は「傍目には盗んだと思われても仕方ない行為だ」と静かに諭すが、梓は「信じられない!! 警察に突き出せば!! 私この店辞めます」と外へ飛び出すのだった。
 梓はそのまま拓郎の所へ行った。朋子との約束があるので、拓郎は家に上げず車の中で話を聞くことにした。梓は堰を切ったように勇吉を罵った。「あのオヤジ信じられない!! いきなり盗ったって言うことないと思うわ。あのオヤジ、常連客にも冷くお金貸さないの。偉そうに。あのオヤジ何様のつもり!!」。徐々に拓郎の顔色が変わっていった。ついに鋭く「オヤジって言うな」と声を上げた。「あの人は俺の親父だ。親父の悪口をこれ以上言うな」。そう言い放って拓郎は梓の車を飛び出し、家に駆け込んだ。それを追った梓は、鍵の掛かったドアの外から「どういうことよ」と叫び続けた。
 「森の時計」の前にパトカーが止まり風間が降りて来た。勇吉が出ると「音成さんが自殺しました。一緒に行くかい」と風間。勇吉は間を置いて誘いを断った。カウンターに戻った勇吉はメグ(大竹しのぶ)の声を聞いた。「あなたがあの人を追い込んだわけじゃないわ」と、優しく声を掛けるメグ。「俺は周囲に厳しすぎるのかな」と勇吉。「厳しい人がいなかったら世の中どんどんだめになるわ。そろそろ憎まれ役の年齢なのよ」と、メグは少し笑うのだった。

キャスト

湧井勇吉 … 寺尾 聰
  ○
湧井拓郎 … 二宮和也
皆川梓 … 長澤まさみ
  ○
立石 … 國村 隼
音成 … 布施 博
  ○
九条朋子 … 余 貴美子
天野六介 … 麿 赤兒
  ○
湧井めぐみ … 大竹しのぶ

 ほか

スタッフ

■原作・脚本
 倉本 聰
■監督・演出
 宮本理江子
■音楽
 渡辺俊幸
■制作
 フジテレビジョン
 フジクリエイティブコーポレーション(FCC)

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