みなさんの「命」は、お母さんのお腹の中に宿って、十月十日育ててもらったものです。お母さんから必要なものを全部もらって、お母さんの体の一部として日々大きくなるわけですから、自分の命と体はお母さんの体の一部とも言えます。そして、お母さんの命はおばあちゃんから、おばあちゃんの命はひいおばあちゃんから、というふうに代々受け継がれてきたものだから、「自分の命は自分だけのものではない」と私は思っています。「一生」の中で一瞬一瞬に「命」を「懸」けて生きる「一生懸命」という言葉があります。ただ私は、命は簡単に懸けてはいけないと思っています。なぜなら命は、お母さんが命を懸けて産んでくれたものだからです。「一生懸命」という言葉の「懸」の中には「心」という文字があり、命よりもまず心をかけなさい、という意味だと私は思います。日々の小さな「心」がけが、「命」をより大切なものへと変えてくれるのではないでしょうか。私は2011年から少年院で講義のボランティアをしています。あるお母さんが「少年院でゴルゴさんの話を聞いた息子が『お母さん、ありがとう』と言うようになった」と話してくれました。その息子さんは今、自分もお母さんから「ありがとう」と言われたいので、料理人を目指して頑張っているそうです。彼がお母さんへの感謝を伝えようと「心」がけることで、きっとお母さんからも「ありがとう」と言ってもらえていると思います。