がんばっていきまっしょい
ふざけんな
女子ボート部では仁美(石田ゆり子)をコーチに迎えて3日間の夏季合宿が始まった。悦子(鈴木杏)は「私らのこと、しごくかもしれん」と不安になったが、他の部員たちは林間学校気分さながらに大はしゃぎながら艇庫の2階に布団を運びこんだ。「遊びに来たんやない。特訓するんよ」とクギを刺した利絵(相武紗季)にしてもスイカを忍ばせていた。大野(池内博之)も男子ボート部の合宿をみるから、夫婦でコーチを務めることになった。そこでお好み焼き屋の根本(小日向文世)と緑(友近)から託された差し入れを、浩之(錦戸亮)にわざわざ艇庫に運ばせたが、部室をのぞいて呆れた。積んだ布団の上でサーファー気取りの悦子を、真由美(藤本静)、多恵子(岩佐真悠子)、敦子(佐津川愛美)が手拍子ではやしたてているではないか。「お前ら、何しとんねん!」。悦子は布団ごと倒れると、利絵が抱えていたスイカは一階に落下してこっぱみじん。「こいつらはダメダメ集団じゃ!」。浩之がにらみつけていると、運悪く仁美が階段を上がってきた。「礼儀とか厳しいけん。はよ片付けえ」。大野の指示に悦子たちがあたふたしていると仁美が現れた。ところが意外にも仁美は優しく微笑むと「今日からみんなのコーチやります。精一杯やりますけん、よろしく」と挨拶した。一同はホッとしたが、悦子だけはうかがうように仁美の顔を見た。
悦子は家族からも心配されていた。姉の法子(浅見れいな)が「悦子はああいう性格やから何も起こらんとええけど」ともらすと、母親の友子(市毛良枝)と祖母キヌ(花原照子)は不安になった。しかし一番心配していたのは黙々とアイロンをかけながら、3人の会話にしっかり聞き耳をたてていた父親の幸雄(大杉漣)だった。じつは幸雄は高校を中退して、このクリーニング屋に転がり込んで友子と結ばれた。自らの青春時代がけっして明るく輝いていたわけではなかったからこそ、同じ年頃で思い悩む悦子のことが気になるのだ。
とりあえず仁美を歓迎した悦子たちだったが、いざ合宿が始まってみると思惑は違った。というのも仁美は艇庫の2階でボートの講義を始めたからだ。しごかれても思う存分ボートを漕げるものと期待していた悦子はぶ然となった。講義が終わって、いよいよ海に出れると思ったら、今度はエルゴメーターによるイメージトレーニングだ。「さっき教えた理論、よく思い出して」。悦子が我慢できずに「いつになったら漕げるんですか?」と尋ねると、仁美は「あんたらのオール、変なクセがついとる」とぴしゃりと指摘された。力の効いたオールはフィニッシュの後、海面に透明な渦巻きができるという。「フォームを直さんと、ボートに乗るのは百億光年早い」。辛らつな言葉に悦子たちは黙りこんだ。
初日の練習が終わると利絵たちは早速復習を始めたが、悦子だけは「あー腹たつ」と板間に寝転んだ。面白くなくて廊下に出ると大野がいた。「どんな指導しよるん?」と仁美のコーチぶりを聞かれたので、悦子は「わくわくせんのです」とつぶやいた。仁美の指導が正しいのは判っていても、悦子は初めてボートに乗ったときの胸の高鳴りが失われていく気がしていた。大野は「子供には個性あるけん」とそれとなく悦子たちの不満を仁美に伝えたが、仁美は「分かってる」とだけ言葉少なに応じた。
合宿2日目も悦子たちはエルゴメーターを命じられた。陸トレのできない男子部員たちはレギュラー、補欠そろって海に漕ぎ出した。「こっちの練習、邪魔されとる感じじゃ」。男子部員にうっ憤が溜まり出したので安田(北条隆博)は女子部員たちと花火を一緒にしようと提案した。三郎(田口淳之介)のいるラグビー部員たちも合流した花火大会。最初は照れ合っていたが、やがて打ち解けた雰囲気に。その夜悦子たち5人はそろって銭湯に出かけた。悦子は5人が湯船の中でもボートと同じ順番に並んでいることに気付いてうれしくなった。湯気に包まれながら「明日こそ、漕げるといいなあ」と思わずつぶやきがもれた。
ところが合宿最終日も仁美は「フォームに気を付けて」とエルゴメーターを命じた。たまりかねた悦子が「もう陸トレはうんざりです。ボートに乗せてください」と訴えると、他のメンバーも口々に「漕ぎたいよね」と同調した。けれど仁美は「一度出した指示は変わりません」とぴしゃり。思わずカッとなった悦子は「ほやったらもうコーチえぇです!あなたの指導は受けとうない!」と叫んでいた──。
悦子は家族からも心配されていた。姉の法子(浅見れいな)が「悦子はああいう性格やから何も起こらんとええけど」ともらすと、母親の友子(市毛良枝)と祖母キヌ(花原照子)は不安になった。しかし一番心配していたのは黙々とアイロンをかけながら、3人の会話にしっかり聞き耳をたてていた父親の幸雄(大杉漣)だった。じつは幸雄は高校を中退して、このクリーニング屋に転がり込んで友子と結ばれた。自らの青春時代がけっして明るく輝いていたわけではなかったからこそ、同じ年頃で思い悩む悦子のことが気になるのだ。
とりあえず仁美を歓迎した悦子たちだったが、いざ合宿が始まってみると思惑は違った。というのも仁美は艇庫の2階でボートの講義を始めたからだ。しごかれても思う存分ボートを漕げるものと期待していた悦子はぶ然となった。講義が終わって、いよいよ海に出れると思ったら、今度はエルゴメーターによるイメージトレーニングだ。「さっき教えた理論、よく思い出して」。悦子が我慢できずに「いつになったら漕げるんですか?」と尋ねると、仁美は「あんたらのオール、変なクセがついとる」とぴしゃりと指摘された。力の効いたオールはフィニッシュの後、海面に透明な渦巻きができるという。「フォームを直さんと、ボートに乗るのは百億光年早い」。辛らつな言葉に悦子たちは黙りこんだ。
初日の練習が終わると利絵たちは早速復習を始めたが、悦子だけは「あー腹たつ」と板間に寝転んだ。面白くなくて廊下に出ると大野がいた。「どんな指導しよるん?」と仁美のコーチぶりを聞かれたので、悦子は「わくわくせんのです」とつぶやいた。仁美の指導が正しいのは判っていても、悦子は初めてボートに乗ったときの胸の高鳴りが失われていく気がしていた。大野は「子供には個性あるけん」とそれとなく悦子たちの不満を仁美に伝えたが、仁美は「分かってる」とだけ言葉少なに応じた。
合宿2日目も悦子たちはエルゴメーターを命じられた。陸トレのできない男子部員たちはレギュラー、補欠そろって海に漕ぎ出した。「こっちの練習、邪魔されとる感じじゃ」。男子部員にうっ憤が溜まり出したので安田(北条隆博)は女子部員たちと花火を一緒にしようと提案した。三郎(田口淳之介)のいるラグビー部員たちも合流した花火大会。最初は照れ合っていたが、やがて打ち解けた雰囲気に。その夜悦子たち5人はそろって銭湯に出かけた。悦子は5人が湯船の中でもボートと同じ順番に並んでいることに気付いてうれしくなった。湯気に包まれながら「明日こそ、漕げるといいなあ」と思わずつぶやきがもれた。
ところが合宿最終日も仁美は「フォームに気を付けて」とエルゴメーターを命じた。たまりかねた悦子が「もう陸トレはうんざりです。ボートに乗せてください」と訴えると、他のメンバーも口々に「漕ぎたいよね」と同調した。けれど仁美は「一度出した指示は変わりません」とぴしゃり。思わずカッとなった悦子は「ほやったらもうコーチえぇです!あなたの指導は受けとうない!」と叫んでいた──。