第10回 2005年9月6日(火)放送 あらすじ

かなわぬ夢

 悦子(鈴木杏)たちはついに県大会で決勝にまで勝ち進んだ。一足先に琵琶湖で開催される全国大会行きを決めた男子部員の前では「ここまでこれただけで十分や」と余裕ぶって見せたが、本心はここまできたからにはどうしても勝ちたい。そこで仁美(石田ゆり子)はイチかバチか、先行逃げ切りの勝負を指示した。松山第一はスタートと同時に飛び出した。片やちえみ(関めぐみ)率いる新海はまったくペースを変えずについてくる。600を超えて悦子たちはラストスパートをかけた。「力の全部で漕ごうっ!私らのボートはまだまだ終わらんっ!」。新海がどんどん追い上げてきた。しかし松山第一は勝った。「あいつら、やりよった」。観客席の浩之(錦戸亮)と三郎(田口淳之介)、そして幸雄(大杉漣)と根本(小日向文世)らは抱き合って喜びを爆発させた。そんな喧騒をよそに敦子(佐津川愛美)は悦子の様子がおかしいことに気付いた。「どうしたん? 悦ネェ」。腰を襲う激痛で微動もできなかったのだ。
 悦子は努めて元気にふるまったが、痛みは日増しに激しくなるばかり。耐え切れず近所の医院を訪ねると、担当医の田宮(浅野和之)からぎっくり腰と診断された。もちろんボートなど厳禁だが、悦子は付き添ってくれた三郎に「琵琶湖までは言わんといて」と口止めした。しかしトレーニングを始めると悦子の不調は誰の目にも明らかだった。三郎はたまらず浩之に打ち明けた。「ボート、辞めろと言われたんやろ」。医者からはこのまま続ければ大事になると指摘された。けれど悦子は「大丈夫です」と譲らない。仲間たちも動揺を隠して「うちらがカバーするけん」と悲壮な決意をした。とりわけ利絵(相武紗季)は「このまま5人でやります」と言い切った。仁美は5人の意思を尊重したが心配でしかたない。もう1人落ちつかないのが幸雄だ。就職の面接に落ち続けている姉の法子(浅見れいな)そっちのけで「まだ腰、治らんか?」と悦子のことが気が気でない。
 みんなの心配はついに現実となった。悦子がトレーニング中、激痛に襲われてうずくまってしまった。仁美は断腸の思いで悦子を下級生の佳代(高畠華澄)と交代させた。悦子は艇庫の2階からトレーニングを見守った。「私がおらんほうがよっぽどボートしとる」。その口調には悔しさよりも諦めの響きが強かった。それでも利絵は「悦ネェと漕ぎたい!」とこだわった。5人は同じ地元の大学に進学してボートを続けようと誓っていたが、利絵は上京して医学部で学びたい思いにかられていた。「だから悦ネェと漕げるんはこれが最後なんよ。一緒に漕げたら勝負なんかどうでもええ」。これには多恵子(岩佐真悠子)がカッとなった。「そんなん、間違うとる!」。どちらの言い分もわかるだけに敦子と真由美(藤本静)は何も言えない。
 仲間の気持ちを察した悦子は退部の意思を仁美に伝えた。「あなたがどんなに一生懸命だったか、みんな知っとるよ」。仁美に肩を抱かれると、悦子の目の前に広がるいつもの海が涙にかすんだ。とても面と向かって挨拶はできそうもなかったから、悦子は仲間への置手紙に「みんなの勝利を祈ってます」と記した。そして悦子の琵琶湖行きをあんなに楽しみにしていた幸雄のショックぶりも大きかった。
 放課後になっても悦子は図書室でぼんやりと時間を過ごすようになった。見かねた三郎が「ええ暇つぶしになるぜ」とカメラを手渡してくれた。「同じ風景が違って見えるんや」「ありがとう」。数日後、悦子の部屋に仁美が利絵たちを連れてやって来た。「練習にも琵琶湖にもできる範囲でええから来てもらえんやろか?」。悦子はうれしさよりみじめさがこみ上げた。「雑用係、やれ言うことですか? オール持てんなら意味ないです」。誰にも目を合わせようとしない悦子に、みんなはもう何も言えなかった。
 ぼんやりと帰路に着く悦子に浩之が声をかけてきた。「乗れや、後ろ」。悦子のかばんを自分の自転車に乗せると、強引に悦子を自転車の後ろに乗せてある場所に向かって走り出した…。

キャスト

篠村悦子 … 鈴木 杏

関野浩之 … 錦戸 亮
中田三郎 … 田口淳之介

矢野利絵 … 相武紗季
菊池多恵子 … 岩佐真悠子
中崎敦子 … 佐津川愛美
中浦真由美 … 藤本 静
   ●
大野仁美 … 石田ゆり子
大野 健 … 池内博之

福田正一郎 … 相島一之
篠村法子 … 浅見れいな
根本 緑 … 友近
   ●
篠村友子 … 市毛良枝
根本 満 … 小日向文世
篠村幸雄 … 大杉 漣

スタッフ

■原作
 「がんばっていきまっしょい」敷村良子(幻冬舎文庫刊)

■脚本
 金子ありさ

■プロデューサー
 重松圭一

■演出
 南雲聖一

■音楽
 オリジナルサウンドトラック「がんばっていきまっしょい」
 吉俣 良(ポニーキャニオン)

■制作
 関西テレビ

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