白い巨塔
#5 祝宴
特診患者・五十嵐(大林丈史)の手術を成功させ、その報告のために東教授(石坂浩二)の部屋に入った財前五郎(唐沢寿明)は、見知らぬ男が座っていることを不審に思った。教授選を前にした東の態度に不信感を抱いていた財前は、不躾にその男に挨拶する。財前の感じた通り、男は東が自分の後継にと白羽の矢を立てた心臓外科の若き権威・石川大学助教授・菊川(沢村一樹)であった。財前は、教授選に向け不安と緊張を募らせた。
財前はその足で里見(江口洋介)の部屋に向かった。菊川のことを調べるためである。研究熱心な里見は、菊川のことを知悉しており、財前を驚かせる。だが、里見の抱える問題は、教授選ではなく、末期ガンと判明した製薬会社社員・林田加奈子(木村多江)の延命治療のことであった。
東家の夕食に招待された菊川は、「財前助教授のいるところへ割り込む勇気はない」と、教授の椅子を固辞する。東は更なる説得を試みるが、割り込んできた政子(高畑淳子)に、佐枝子(矢田亜希子)との結婚をにおわせた話で邪魔をされる。それを聞いていた佐枝子は冷ややかに目を伏せるのだった。
財前はその夜、ケイ子(黒木瞳)のマンションに足を運んだ。菊川の話を聞いたケイ子は「面白くなってきた」と微笑み、「私が扱うのはお酒、あなたは命。それだけの違いでサービス業としては似たようなものね」と財前を刺激する。
里見は、加奈子の件で病理学の権威・大河内教授(品川徹)のドアを叩いた。病理検査から抗がん剤治療の可能性を探りたいという申し出に、大河内は「それこそ医学の根本だ」と里見を頼もしく見る。
全快した五十嵐の退院の日、五十嵐は医局スタッフに商品券を配りながら、財前に「感謝の気持ちを表したい。第一外科に研究費として1億寄付する」と申し出る。「君の顔も立つだろう。好きなように使いなさい」と付け加える五十嵐の手を笑顔で握りながら、財前は一考を案じた。
財前は、鵜飼医学部長の部屋を訪ねた。「第一外科で独り占めする額ではないので」と切り出し、「医学部創立120周年の基金にしたい。記念式典の場で発表すれば部長のお顔も立つのでは」と鵜飼の顔色を窺う。鵜飼は「恩を売る気か」と財前の意図を詮索する。だが、財前は「もはや部長におすがりするしかありません」と捨て身で言い放つ。鵜飼は「見返りを要求されても困る」としながらも「教授選の選考委員を僕の派閥で固めるくらいなら…」と条件を提示する。待ってましたとばかりに財前は頭を下げるのであった。
そんな財前が大河内に呼び出された。部屋に入ると里見がいる。加奈子の件であった。大河内は、加奈子の抗がん剤治療は難しいと結論を出す。財前は「言った通りだ」と里見に勝ち誇るが、里見は「オペで主病巣だけ摘出すれば延命できる」と譲らない。財前は「オペで2、3カ月、延命の可能性はありますが、確実に助かる患者を優先したい」と言い捨て、大河内の無言をいいことに部屋を出る。大河内は「医者の本分を忘れておる」と里見に聞こえるように一人ごつのであった。
財前は、舅・又一(西田敏行)と教授選参謀格の地区医師会長・岩田(曾我廼家文童)の待つ扇屋に座った。医学部に詳しい岩田は、選考委員会の教授6人を押さえることが重要だと言う。又一は即座に“実弾攻撃”の準備を始めた。
豪華なホテルで「浪速大学医学部創立120周年記念会」が始まった。新旧の教授や来賓が数多く招かれ、現役教授が上座に座る。五十嵐が登壇し「私がここにいるのは財前教授のおかげ」と基金への寄付を発表。大いに盛り上がる。ただ東だけは財前を一顧だにしない。
そんなころ、里見は加奈子に正直に病状を話していた。不安と悲しみで感情を爆発させる加奈子は「その時、里見先生がそばにいてくれますか。信じられる人に看取られたい」と懇願し、里見は「最後まで私が看ます」と約束する。里見はその足で大河内に「大学病院の本来の目的から外れるかもしれませんが、林田さんを最後まで診たいと思います」と報告。大河内は「支持するよ」と温かく声をかける。
佐枝子は、パーティ会場で倒れた政子を大学病院に運んだ。診察したのは里見であった。里見の的確な治療で政子は事無きを得たが、佐枝子は里見も妻の美知代(水野真紀)もパーティにいなかったことを尋ねた。「二人とも好きじゃないんで」と言葉少なに語る里見に佐枝子は惹かれて行く。
教授選考委員を決める教授会が始まった。自分の思惑に沿わせようと案件を速攻で進める鵜飼だったが…。
財前はその足で里見(江口洋介)の部屋に向かった。菊川のことを調べるためである。研究熱心な里見は、菊川のことを知悉しており、財前を驚かせる。だが、里見の抱える問題は、教授選ではなく、末期ガンと判明した製薬会社社員・林田加奈子(木村多江)の延命治療のことであった。
東家の夕食に招待された菊川は、「財前助教授のいるところへ割り込む勇気はない」と、教授の椅子を固辞する。東は更なる説得を試みるが、割り込んできた政子(高畑淳子)に、佐枝子(矢田亜希子)との結婚をにおわせた話で邪魔をされる。それを聞いていた佐枝子は冷ややかに目を伏せるのだった。
財前はその夜、ケイ子(黒木瞳)のマンションに足を運んだ。菊川の話を聞いたケイ子は「面白くなってきた」と微笑み、「私が扱うのはお酒、あなたは命。それだけの違いでサービス業としては似たようなものね」と財前を刺激する。
里見は、加奈子の件で病理学の権威・大河内教授(品川徹)のドアを叩いた。病理検査から抗がん剤治療の可能性を探りたいという申し出に、大河内は「それこそ医学の根本だ」と里見を頼もしく見る。
全快した五十嵐の退院の日、五十嵐は医局スタッフに商品券を配りながら、財前に「感謝の気持ちを表したい。第一外科に研究費として1億寄付する」と申し出る。「君の顔も立つだろう。好きなように使いなさい」と付け加える五十嵐の手を笑顔で握りながら、財前は一考を案じた。
財前は、鵜飼医学部長の部屋を訪ねた。「第一外科で独り占めする額ではないので」と切り出し、「医学部創立120周年の基金にしたい。記念式典の場で発表すれば部長のお顔も立つのでは」と鵜飼の顔色を窺う。鵜飼は「恩を売る気か」と財前の意図を詮索する。だが、財前は「もはや部長におすがりするしかありません」と捨て身で言い放つ。鵜飼は「見返りを要求されても困る」としながらも「教授選の選考委員を僕の派閥で固めるくらいなら…」と条件を提示する。待ってましたとばかりに財前は頭を下げるのであった。
そんな財前が大河内に呼び出された。部屋に入ると里見がいる。加奈子の件であった。大河内は、加奈子の抗がん剤治療は難しいと結論を出す。財前は「言った通りだ」と里見に勝ち誇るが、里見は「オペで主病巣だけ摘出すれば延命できる」と譲らない。財前は「オペで2、3カ月、延命の可能性はありますが、確実に助かる患者を優先したい」と言い捨て、大河内の無言をいいことに部屋を出る。大河内は「医者の本分を忘れておる」と里見に聞こえるように一人ごつのであった。
財前は、舅・又一(西田敏行)と教授選参謀格の地区医師会長・岩田(曾我廼家文童)の待つ扇屋に座った。医学部に詳しい岩田は、選考委員会の教授6人を押さえることが重要だと言う。又一は即座に“実弾攻撃”の準備を始めた。
豪華なホテルで「浪速大学医学部創立120周年記念会」が始まった。新旧の教授や来賓が数多く招かれ、現役教授が上座に座る。五十嵐が登壇し「私がここにいるのは財前教授のおかげ」と基金への寄付を発表。大いに盛り上がる。ただ東だけは財前を一顧だにしない。
そんなころ、里見は加奈子に正直に病状を話していた。不安と悲しみで感情を爆発させる加奈子は「その時、里見先生がそばにいてくれますか。信じられる人に看取られたい」と懇願し、里見は「最後まで私が看ます」と約束する。里見はその足で大河内に「大学病院の本来の目的から外れるかもしれませんが、林田さんを最後まで診たいと思います」と報告。大河内は「支持するよ」と温かく声をかける。
佐枝子は、パーティ会場で倒れた政子を大学病院に運んだ。診察したのは里見であった。里見の的確な治療で政子は事無きを得たが、佐枝子は里見も妻の美知代(水野真紀)もパーティにいなかったことを尋ねた。「二人とも好きじゃないんで」と言葉少なに語る里見に佐枝子は惹かれて行く。
教授選考委員を決める教授会が始まった。自分の思惑に沿わせようと案件を速攻で進める鵜飼だったが…。