白い巨塔
#20 最後の審判
「財前先生の発言は嘘だ。検査を申し出たのに却下されたんだ」。傍聴席の柳原(伊藤英明)の叫びに法廷は色めきたった。柳原は退廷させられたが、関口(上川隆也)は、即座に柳原の証人尋問を求めた。当然、国平(及川光博)は「責任回避の発作的発言に過ぎず、証言の必要なし」と応じ、猛反対する。裁判長(戸沢佑介)は、法廷秩序を守るという理由で、柳原の証言は認めなかった。財前は国平とうなずきあい、関口はよし江(かたせ梨乃)らと悔しがった。すると、関口らに近づく人影があった。君子(西田尚美)である。
「今からでも遅くないでしょうか」柳原の行動を目の当たりにして、証人の決意を固めたのだ。国平はその様子を陰から見詰めていた。
財前側の反省会で国平は財前に問うた。「亀山君子に何か握られていませんか。新しい物的証拠とかも…」
財前は、君子がカンファレンスに同席し、記録を取っていたことを思い出した。「直ちに医局の記録を佃(片岡孝太郎)たちに処分させます」
一方、関口の事務所でも、柳原と君子がカンファレンス記録の存在を思い出した。柳原は「僕が取ってきます」と立ち上がった。
夜の医局に柳原は静かに入り込んだ。ロッカーを開け、該当月の記録を探す。だが、そこだけ抜けている。と、後ろに佃と安西(小林正寛)が立っている。佃の手に、その記録が握られているではないか。「何をしている。帰れ」「自分のやったことがわかっているのか」。二人に罵倒され柳原は立ち尽くすのだった。
そのころ、アパートに戻った君子の前に国平が現れた。君子は慌てて逃げ、柳原のアパートに急いだ。憔悴して帰って来た柳原と君子は、恐怖と諦観に抗いながら、カンファレンス記録以外の証拠がないか記憶を辿った。
佃は翌日カンファレンス記録を財前と国平に渡した。国平は冷徹にそれをシュレッダーにかけ、財前に「これ以上、医局から離反者がでないよう気をつけてくれ」と申し渡した。了解し「終わったら食事でも」と言う財前に、国平は「あなたとは仕事だけにしたい」と言い放つのだった。
里見(江口洋介)の病院に関口がやって来た。君子のあとの、裁判最後の証人を引き受けてくれという申し入れだった。里見は、敗訴した時の財前の様子を思い描いて沈んだ。
君子が証人に立つ公判が始まった。国平は、記録を処分したカンファレンスの様子を中心に尋問し、君子の記憶や発言を、主観的な勘違いと切り捨てた。だが、関口はカンファレンスではなく、「術前説明」を持ち出した。患者に治療方針を説明する場であり、君子はそこでも記録を取っていたのだ。財前と国平に緊張が走った。
「看護計画検討記録を証拠として提出します」
「唐突過ぎます。認否できません」。国平が裁判長に申し立てた。だが、裁判長は、ためらわず証拠採用を決めた。追い詰められる財前。
さらに里見の尋問に移った。国平は、治療法の選択について「どんな治療を受けても、死は避けられなかったのですね」と、治療における事前説明の無意味さを立証しようとする質問を行う。しかし患者自身がその生き方の選択を行うべきだという里見の心からの叫びのような発言に、国平は尋問の言葉を失った。
この直後、裁判長は財前に質問を行った。「あなたは今もこれまでの考えに変わりありませんか」。財前は堂々と答えた。「私の治療は一点の曇りなく妥当でした」
2カ月後、控訴審の判決が下された直後、財前が呼吸困難を起こして昏倒した。
「今からでも遅くないでしょうか」柳原の行動を目の当たりにして、証人の決意を固めたのだ。国平はその様子を陰から見詰めていた。
財前側の反省会で国平は財前に問うた。「亀山君子に何か握られていませんか。新しい物的証拠とかも…」
財前は、君子がカンファレンスに同席し、記録を取っていたことを思い出した。「直ちに医局の記録を佃(片岡孝太郎)たちに処分させます」
一方、関口の事務所でも、柳原と君子がカンファレンス記録の存在を思い出した。柳原は「僕が取ってきます」と立ち上がった。
夜の医局に柳原は静かに入り込んだ。ロッカーを開け、該当月の記録を探す。だが、そこだけ抜けている。と、後ろに佃と安西(小林正寛)が立っている。佃の手に、その記録が握られているではないか。「何をしている。帰れ」「自分のやったことがわかっているのか」。二人に罵倒され柳原は立ち尽くすのだった。
そのころ、アパートに戻った君子の前に国平が現れた。君子は慌てて逃げ、柳原のアパートに急いだ。憔悴して帰って来た柳原と君子は、恐怖と諦観に抗いながら、カンファレンス記録以外の証拠がないか記憶を辿った。
佃は翌日カンファレンス記録を財前と国平に渡した。国平は冷徹にそれをシュレッダーにかけ、財前に「これ以上、医局から離反者がでないよう気をつけてくれ」と申し渡した。了解し「終わったら食事でも」と言う財前に、国平は「あなたとは仕事だけにしたい」と言い放つのだった。
里見(江口洋介)の病院に関口がやって来た。君子のあとの、裁判最後の証人を引き受けてくれという申し入れだった。里見は、敗訴した時の財前の様子を思い描いて沈んだ。
君子が証人に立つ公判が始まった。国平は、記録を処分したカンファレンスの様子を中心に尋問し、君子の記憶や発言を、主観的な勘違いと切り捨てた。だが、関口はカンファレンスではなく、「術前説明」を持ち出した。患者に治療方針を説明する場であり、君子はそこでも記録を取っていたのだ。財前と国平に緊張が走った。
「看護計画検討記録を証拠として提出します」
「唐突過ぎます。認否できません」。国平が裁判長に申し立てた。だが、裁判長は、ためらわず証拠採用を決めた。追い詰められる財前。
さらに里見の尋問に移った。国平は、治療法の選択について「どんな治療を受けても、死は避けられなかったのですね」と、治療における事前説明の無意味さを立証しようとする質問を行う。しかし患者自身がその生き方の選択を行うべきだという里見の心からの叫びのような発言に、国平は尋問の言葉を失った。
この直後、裁判長は財前に質問を行った。「あなたは今もこれまでの考えに変わりありませんか」。財前は堂々と答えた。「私の治療は一点の曇りなく妥当でした」
2カ月後、控訴審の判決が下された直後、財前が呼吸困難を起こして昏倒した。