白い巨塔
#2 贈り物
浪速大医学部助教授の外科医・財前五郎(唐沢寿明)は、医局員の柳原(伊藤英明)の論文をチェックしていた。柳原は貧しい家庭の出身で、同様の生い立ちでありながら一流の腕を持つ財前にあこがれを抱いていると言う。財前は笑って柳原を見送るが、「一緒にするな」と言い捨てるのであった。そして、気になっていた膵臓がん患者・小西みどり(河合美智子)のMRI画像を見つめた。
財前は、小西の異常を見抜いた担当内科医の里見助教授(江口洋介)を訪ね、一度は断った小西の手術を執刀させろと申し出る。鵜飼医学部長(伊武雅刀)の診断見落としがからむので、教授選を控えいらぬ波風は立てたくないと先に断ったものの、初期膵臓がんの手術例は極めて少ない。外科医としての意欲と功名心が勝ったのだ。タイミングよく第一外科の東教授(石坂浩二)は出張に出掛ける。その時に緊急オペとして処理すれば、鵜飼にも東にも知られないですむと考えたのだ。
融通の利かない里見は隠れて手術をやることに猛反対したが、財前は「患者は君の玩具じゃない。僕も君と一緒で、彼女を助けたいんだ」と話を正当化し寄り切った。
小西の緊急オペが始まった。見学室から注目する里見。だが、東派の金井講師(奥田達士)は密室オペに賛同できないと手術室を出て行く。手際のいい見事な技術で、胃がんと、その裏に隠れていた小さな膵臓がんを処置し、手術は無事終了した。財前と里見は、互いの医者としての技術を素直に讃えあった。
そのころ、東は娘の佐枝子(矢田亜希子)を伴って、東京の外科学会パーティに出席していた。弟弟子の東都大・船尾教授(中原丈雄)が会長に就任したのだ。東の意図はその祝いだけでなく、自分の後任教授を財前ではなく、東都大の学閥から持って来ようと、船尾に相談することにあった。船尾は兄弟子の頼みであり、東都大の勢力拡大もにらんで引き受けることにした。
財前から小西の膵臓がん手術の話を聞いた舅の又一(西田敏行)は、財前の思慮の甘さをなじった。ルール無視の手術を知られた時、鵜飼はともかく東に弱みを握られることになると言うのだ。だが、財前は「専門が食道外科だけだと教授になった後行き詰る。引き出しを増やしておかないと」と説明する。「教授以後」と聞いた又一は、気をよくし、「しっかり、後始末しときなはれ。実弾や」と数百万の札束を積み上げるのだった。
財前は愛人であるクラブ・アラジンのママ・ケイ子(黒木瞳)のもとへ向かった。大手術が成功するとケイ子を抱きたくなるのだった。だが、女子医大中退で皮肉屋のケイ子は「内科医の方があなたよりお手柄ね」と茶化し、財前が怒るのをみて「あなたが怒ると退屈が吹っ飛ぶわ」と喜ぶのだった。そこで財前は、アラジン常連の鵜飼の好みや行動をケイ子から探るのだった。
翌朝、財前は妻の杏子(若村麻由美)を誘って、画廊に出かけた。そこには鵜飼部長が妻の典江(野川由美子)を伴って、すでに鑑賞中であった。財前は、ケイ子から聞き出した情報から、偶然を装った画廊での鵜飼との遭遇を画策したのだ。鵜飼と表向きの挨拶を済ませた財前は、鵜飼夫婦と杏子が帰った後、鵜飼好みの絵400万円相当を画廊店主に包ませるのだった。又一名義で鵜飼に贈ることを命じて。
そんな晩、一人になった財前は、家になった柿を送ってきた母・きぬ(池内淳子)に「うまかったよ、母ちゃん」と電話するのであった。「なにもかもうまくいっている」と。
財前が小西みどりを診察していると、夫が菓子折りを出す。財前は断るが「ただの饅頭です。気持ちです」とくどいので受け取ることにした。部屋に帰って開けると、本当に“ただの和菓子”であり財前苦笑。と、そこへ里見が入ってくる。里見は「鵜飼に本当のことを話そう」と言い出す。奇麗事を並べる里見に財前は「部長あたりの不興を買って地方に飛ばされでもすれば、君の大好きな研究だって出来なくなるんだ」と言い放つ。
財前が医局の人間たちとその菓子折りを広げていると、東が入って来た。東は菓子に目をやり、「患者からの付け届けを受け取るとは何事か。人格が優れてなければ医者とは言えん」と財前を叱責する。
そのころ、鵜飼の自宅では典江の誕生会が行われていた。出席者は、東の妻・政子(高畑淳子)や産婦人科教授葉山の妻・昭子(水野あや)ら医学部婦人会「くれない会」のメンバーである。そこには東の娘・佐枝子も里見の妻・美知代(水野真紀)も加わっていた。二人は、虚栄渦巻くその場になじめず、自然と目を合わせるのだった。
財前は鵜飼に呼び出され、アラジンに向かった。鵜飼は「あの絵はどういうつもりだね。お舅さんからで頂く筋ではない」と切り出す。その質問を予想していた財前は「いろいろとご指導願いたいとの挨拶であり、他意はない」と弁明する。鵜飼は答えを無視した様子で話を変えた。
「小西みどりの話だが」。財前は絶句した。「今朝、ご主人が挨拶に来てね」と、付け届けのあの菓子折りを取り出す。鵜飼のところにも持っていったのだ。財前はとっさに考えを巡らした。
「あ、あの患者は鵜飼教授のご指摘通り、膵臓がんでしたのでそのように手術し…いい勉強をさせていただきました」と見落としを手柄にすり替えた。鵜飼は菓子を食べながら、鵜飼のミスを胸に仕舞ったような風を装う財前にもう一発見舞った。
「東教授には話したのかね」
財前は答えに窮し…。
財前は、小西の異常を見抜いた担当内科医の里見助教授(江口洋介)を訪ね、一度は断った小西の手術を執刀させろと申し出る。鵜飼医学部長(伊武雅刀)の診断見落としがからむので、教授選を控えいらぬ波風は立てたくないと先に断ったものの、初期膵臓がんの手術例は極めて少ない。外科医としての意欲と功名心が勝ったのだ。タイミングよく第一外科の東教授(石坂浩二)は出張に出掛ける。その時に緊急オペとして処理すれば、鵜飼にも東にも知られないですむと考えたのだ。
融通の利かない里見は隠れて手術をやることに猛反対したが、財前は「患者は君の玩具じゃない。僕も君と一緒で、彼女を助けたいんだ」と話を正当化し寄り切った。
小西の緊急オペが始まった。見学室から注目する里見。だが、東派の金井講師(奥田達士)は密室オペに賛同できないと手術室を出て行く。手際のいい見事な技術で、胃がんと、その裏に隠れていた小さな膵臓がんを処置し、手術は無事終了した。財前と里見は、互いの医者としての技術を素直に讃えあった。
そのころ、東は娘の佐枝子(矢田亜希子)を伴って、東京の外科学会パーティに出席していた。弟弟子の東都大・船尾教授(中原丈雄)が会長に就任したのだ。東の意図はその祝いだけでなく、自分の後任教授を財前ではなく、東都大の学閥から持って来ようと、船尾に相談することにあった。船尾は兄弟子の頼みであり、東都大の勢力拡大もにらんで引き受けることにした。
財前から小西の膵臓がん手術の話を聞いた舅の又一(西田敏行)は、財前の思慮の甘さをなじった。ルール無視の手術を知られた時、鵜飼はともかく東に弱みを握られることになると言うのだ。だが、財前は「専門が食道外科だけだと教授になった後行き詰る。引き出しを増やしておかないと」と説明する。「教授以後」と聞いた又一は、気をよくし、「しっかり、後始末しときなはれ。実弾や」と数百万の札束を積み上げるのだった。
財前は愛人であるクラブ・アラジンのママ・ケイ子(黒木瞳)のもとへ向かった。大手術が成功するとケイ子を抱きたくなるのだった。だが、女子医大中退で皮肉屋のケイ子は「内科医の方があなたよりお手柄ね」と茶化し、財前が怒るのをみて「あなたが怒ると退屈が吹っ飛ぶわ」と喜ぶのだった。そこで財前は、アラジン常連の鵜飼の好みや行動をケイ子から探るのだった。
翌朝、財前は妻の杏子(若村麻由美)を誘って、画廊に出かけた。そこには鵜飼部長が妻の典江(野川由美子)を伴って、すでに鑑賞中であった。財前は、ケイ子から聞き出した情報から、偶然を装った画廊での鵜飼との遭遇を画策したのだ。鵜飼と表向きの挨拶を済ませた財前は、鵜飼夫婦と杏子が帰った後、鵜飼好みの絵400万円相当を画廊店主に包ませるのだった。又一名義で鵜飼に贈ることを命じて。
そんな晩、一人になった財前は、家になった柿を送ってきた母・きぬ(池内淳子)に「うまかったよ、母ちゃん」と電話するのであった。「なにもかもうまくいっている」と。
財前が小西みどりを診察していると、夫が菓子折りを出す。財前は断るが「ただの饅頭です。気持ちです」とくどいので受け取ることにした。部屋に帰って開けると、本当に“ただの和菓子”であり財前苦笑。と、そこへ里見が入ってくる。里見は「鵜飼に本当のことを話そう」と言い出す。奇麗事を並べる里見に財前は「部長あたりの不興を買って地方に飛ばされでもすれば、君の大好きな研究だって出来なくなるんだ」と言い放つ。
財前が医局の人間たちとその菓子折りを広げていると、東が入って来た。東は菓子に目をやり、「患者からの付け届けを受け取るとは何事か。人格が優れてなければ医者とは言えん」と財前を叱責する。
そのころ、鵜飼の自宅では典江の誕生会が行われていた。出席者は、東の妻・政子(高畑淳子)や産婦人科教授葉山の妻・昭子(水野あや)ら医学部婦人会「くれない会」のメンバーである。そこには東の娘・佐枝子も里見の妻・美知代(水野真紀)も加わっていた。二人は、虚栄渦巻くその場になじめず、自然と目を合わせるのだった。
財前は鵜飼に呼び出され、アラジンに向かった。鵜飼は「あの絵はどういうつもりだね。お舅さんからで頂く筋ではない」と切り出す。その質問を予想していた財前は「いろいろとご指導願いたいとの挨拶であり、他意はない」と弁明する。鵜飼は答えを無視した様子で話を変えた。
「小西みどりの話だが」。財前は絶句した。「今朝、ご主人が挨拶に来てね」と、付け届けのあの菓子折りを取り出す。鵜飼のところにも持っていったのだ。財前はとっさに考えを巡らした。
「あ、あの患者は鵜飼教授のご指摘通り、膵臓がんでしたのでそのように手術し…いい勉強をさせていただきました」と見落としを手柄にすり替えた。鵜飼は菓子を食べながら、鵜飼のミスを胸に仕舞ったような風を装う財前にもう一発見舞った。
「東教授には話したのかね」
財前は答えに窮し…。