白い巨塔
#17 一年後
よし江(かたせ梨乃)と庸一(中村俊太)の執念は、関口(上川隆也)を動かし、とうとう財前(唐沢寿明)は控訴された。だが、国平(及川光博)は「新証拠か新証言がない限り裁判は維持できない。一人で何がやれるか思い知らせてやる」と平然としている。財前も「示談にする気など一切ない。徹底的にやってください」と周囲を圧倒する迫力で国平を煽るのであった。その言葉通り、よし江側に協力する医療関係者は現れず、関口、佐枝子(矢田亜希子)も重い気持ちになる。
一方、大学を辞めた里見(江口洋介)の家に突然、大河内(品川徹)が現れた。患者本位の治療で有名な千成病院で仕事をしないかと、紹介状を持って来たのだ。里見は大河内の気遣いに「謹んでお受けします」と深々と頭を下げるのであった。
そんな夜、財前はケイ子(黒木瞳)とがんセンター予定地を歩いていた。世界でも有数のがん治療の拠点となるはずである。「うまくいけばあの最上階が俺の部屋だ」と財前。「何も見えないわ」と笑うケイ子に、財前は「俺には理想の病院が見える」と力を込めて答える。ケイ子も宙を見上げた。
数日後、里見の引越しの真っ最中、専用車で財前が登場した。財前は「ろくな研究もできない民間病院に行くらしいな」と皮肉を放った後「3年の辛抱だ」と言い出す。怪訝な表情の里見に対し財前はさらに付け加えた。「3年経ったら、がんセンターの内科部長に君を呼ぶ。君の腕が必要なんだ」。里見は呆れ即座に断った。「なぜだ。現在考え得る最高の病院だ」と里見の気が知れない財前に里見は言う。「それが最高の病院とは思えない」。だが財前は引かなかった。「待ってるよ。君は必ず僕に泣きつく。なぜなら君は医者だからだ」。
それから1年が経った。
千成病院では里見が新しい仲間と丁寧な治療を試みていた。と、そこへ疲れ果てた関口が現れた。里見の点滴を受けながら、関口は最後の砦とばかりに心当たりの証言者を尋ねた。里見は「東先生にご相談されたでしょうか。証言はともかく何か協力が得られるかも」と示唆する。関口はわらをもすがる思いで東の家を訪ねた。意を尽くして佐枝子と二人で東の説得を試みるが…。
いつものように総回診を行う財前が、ある患者に気を止めた。庸平(田山涼成)と面影が重なる安田である。食道がんであった。助教授になった金井(奥田達士)が執刀することになっているのだが、何度もあのころの庸平の表情を思い出させる安田に心が囚われた財前は「僕が執刀する」と思わず口走ってしまう。実は柳原(伊藤英明)も安田に庸平の面影を見ていた。柳原と目を合わせた財前は、柳原を自宅に呼びつける。
財前の家を訪れた柳原は大層緊張していた。そこには又一(西田敏行)もいるではないか。と、唐突に、野田華子という女性を紹介され豪華な食事となった。華子は、杏子(若村麻由美)の後輩であり、又一と関係のある薬局の娘であった。その会は柳原と華子の見合いの席だったのだ。だが、本質は違うところにあった。「君はいろいろ悩んでいるようだが、家庭を持って安定すれば裁判なんか怖くない。一審通りやればいいんだ」と財前。柳原はその席の意味を悟るのだった。
柳原はその足でよし江の店の近くまで行った。疲れ果てたよし江や関口がいる。と関口が柳原に気が付いた。逃げる柳原、追う関口。追いついた関口が叫ぶ。「あなたは悩んでいる。真実を言うべきです。後悔しますよ」。柳原は一目散に逃げ出し、関口は裁判の突破口を見つけた気がした。
安田の手術の日がやって来た。メスを振るう財前。ふと財前は安田の顔を見てしまう。なんとそれは庸平の顔ではないか。意識が虚ろになる財前の手は切ってはいけない静脈を切断した。噴き出す血。騒然とする手術室…。
一方、大学を辞めた里見(江口洋介)の家に突然、大河内(品川徹)が現れた。患者本位の治療で有名な千成病院で仕事をしないかと、紹介状を持って来たのだ。里見は大河内の気遣いに「謹んでお受けします」と深々と頭を下げるのであった。
そんな夜、財前はケイ子(黒木瞳)とがんセンター予定地を歩いていた。世界でも有数のがん治療の拠点となるはずである。「うまくいけばあの最上階が俺の部屋だ」と財前。「何も見えないわ」と笑うケイ子に、財前は「俺には理想の病院が見える」と力を込めて答える。ケイ子も宙を見上げた。
数日後、里見の引越しの真っ最中、専用車で財前が登場した。財前は「ろくな研究もできない民間病院に行くらしいな」と皮肉を放った後「3年の辛抱だ」と言い出す。怪訝な表情の里見に対し財前はさらに付け加えた。「3年経ったら、がんセンターの内科部長に君を呼ぶ。君の腕が必要なんだ」。里見は呆れ即座に断った。「なぜだ。現在考え得る最高の病院だ」と里見の気が知れない財前に里見は言う。「それが最高の病院とは思えない」。だが財前は引かなかった。「待ってるよ。君は必ず僕に泣きつく。なぜなら君は医者だからだ」。
それから1年が経った。
千成病院では里見が新しい仲間と丁寧な治療を試みていた。と、そこへ疲れ果てた関口が現れた。里見の点滴を受けながら、関口は最後の砦とばかりに心当たりの証言者を尋ねた。里見は「東先生にご相談されたでしょうか。証言はともかく何か協力が得られるかも」と示唆する。関口はわらをもすがる思いで東の家を訪ねた。意を尽くして佐枝子と二人で東の説得を試みるが…。
いつものように総回診を行う財前が、ある患者に気を止めた。庸平(田山涼成)と面影が重なる安田である。食道がんであった。助教授になった金井(奥田達士)が執刀することになっているのだが、何度もあのころの庸平の表情を思い出させる安田に心が囚われた財前は「僕が執刀する」と思わず口走ってしまう。実は柳原(伊藤英明)も安田に庸平の面影を見ていた。柳原と目を合わせた財前は、柳原を自宅に呼びつける。
財前の家を訪れた柳原は大層緊張していた。そこには又一(西田敏行)もいるではないか。と、唐突に、野田華子という女性を紹介され豪華な食事となった。華子は、杏子(若村麻由美)の後輩であり、又一と関係のある薬局の娘であった。その会は柳原と華子の見合いの席だったのだ。だが、本質は違うところにあった。「君はいろいろ悩んでいるようだが、家庭を持って安定すれば裁判なんか怖くない。一審通りやればいいんだ」と財前。柳原はその席の意味を悟るのだった。
柳原はその足でよし江の店の近くまで行った。疲れ果てたよし江や関口がいる。と関口が柳原に気が付いた。逃げる柳原、追う関口。追いついた関口が叫ぶ。「あなたは悩んでいる。真実を言うべきです。後悔しますよ」。柳原は一目散に逃げ出し、関口は裁判の突破口を見つけた気がした。
安田の手術の日がやって来た。メスを振るう財前。ふと財前は安田の顔を見てしまう。なんとそれは庸平の顔ではないか。意識が虚ろになる財前の手は切ってはいけない静脈を切断した。噴き出す血。騒然とする手術室…。