白い巨塔
#14 母の涙
財前(唐沢寿明)の佐々木庸平(田山涼成)死亡に関する医療過誤を問う裁判が始まった。
マスコミは病院に財前を待ち受け取材攻勢を掛ける。院内にも張り詰めた空気が漂い、財前はいつになく苛立つ。
一方、家業を再開した佐々木家では弁当のキャンセルが相次ぎ、仕事を手伝う庸平の弟・信平(広川三憲)が「揉め事を起こす弁当屋の弁当なんか食わん。人が同情してくれると思うたら甘すぎる」とよし江(かたせ梨乃)と言い争いになっている。日程を知らせに来た関口弁護士(上川隆也)は「生活が変るのは覚悟して頑張ってくれ」とよし江を励ます。
また里見家には里見(江口洋介)を訪ねて病院側の弁護士・国平(及川光博)が証人出廷の撤回を求めてやって来ていた。「奥さんはご存知なんですか。ご家族の将来に関わることです」と三知代(水野真紀)を牽制しつつ「あなたの行為は大学も医師も患者すら貶めるものだ」と説得する。が、里見は国平をあっさりと追い返す。三知代の心配は募るばかりだ。
さらに佐枝子(矢田亜希子)は、東(石坂浩二)に関口の下で働いていることを明かす。当然、東は辞めるようにと諭すが、佐枝子は「お父様の仕事をもっと深く知りたいの」と固い決心を吐き出す。裁判に関わる人々の人生が大きく変ろうとしていた。
第1回証人尋問が始まった。初回の証人は大河内(品川徹)と佃(片岡孝太郎)である。佃は「全力を尽くしたうえでの不可抗力」という論拠で通そうとするが、関口の「財前被告人がワルシャワ出発前に容態悪化を知りながら自分で診療せず、さらに指示した治療が功を奏さなかったのは、被告人の診断ミスではないのか」という攻撃にうろたえる。
また大河内は「転移が確認されれば、手術以外を第一とすべき」としたうえで「手術前にがんの発見が不可能であったにせよ、転移の可能性を考慮せず手術したのは臨床医の自覚に欠ける」と言い切り、公判の印象は佐々木側の有利に運んだ。
公判の最中、この裁判に不似合いの老婆が所内に佇んでいる。きぬ(池内淳子)である。記者に見咎められそうになった時、ケイ子(黒木瞳)がきぬを危うく外へ連れ出した。きぬはケイ子に「本当に誤診したのなら一刻も早くご家族にお詫びしなければ…。あの子は人様の命を軽く見る子ではない。あの子は嘘をつかない…」と言い募るのであった。
その夜、扇屋で財前派の“作戦会議”が開かれた。2回目の証人はよし江と柳原(伊藤英明)である。よし江は素人であり柳原は財前が因果を言い含めることになった。3回目は財前と里見。里見は鵜飼(伊武雅刀)と国平の担当。又一(西田敏行)は、いつものように二人に“実弾”を進呈するのだった。
財前は柳原を教授室に呼びつけ「記憶の整理」を要求した。だが、柳原は、里見が後で証人に立つことを恐れ「事前に転移なしと判断した、ということ自体、嘘ではないか」と食い下がる。財前は怒りに発し「そもそも君の説得力不足からこんな事態を招いた」と恫喝し「君も努力次第で僕の後に続けるかもしれない。将来のためにも確実な証言をするんだ」と柳原に因果を含めるのだった。
ある朝、三知代は里見に「証言はやめて」と切羽詰った様子で切り出した。「あなたが大学を追われたら、何のために話したいことも我慢して一人で好彦を育ててきたの」と泣き崩れる。それでも里見は「佐々木さんの死を無駄にしないことは俺にしかできない」と説を曲げる気配はなかった。
2回目の証人尋問の日がやって来た。今日はケイ子が傍聴席に座っている。
そんなころ、研究室の里見の下へ鵜飼がやって来た。ハワイで開かれるシンポジウムに出席してくれという依頼だった。日程を見ると証言の日と重なる。里見が断ろうとすると鵜飼は「だから勧めているんだ。断ればそれ以後日本で研究することは難しくなる。よく考えた方がいい」とシンポの案内状を置いて出て行った。
法廷では関口が柳原を問い詰めていた。柳原は噴出す汗をぬぐうこともできず…。
マスコミは病院に財前を待ち受け取材攻勢を掛ける。院内にも張り詰めた空気が漂い、財前はいつになく苛立つ。
一方、家業を再開した佐々木家では弁当のキャンセルが相次ぎ、仕事を手伝う庸平の弟・信平(広川三憲)が「揉め事を起こす弁当屋の弁当なんか食わん。人が同情してくれると思うたら甘すぎる」とよし江(かたせ梨乃)と言い争いになっている。日程を知らせに来た関口弁護士(上川隆也)は「生活が変るのは覚悟して頑張ってくれ」とよし江を励ます。
また里見家には里見(江口洋介)を訪ねて病院側の弁護士・国平(及川光博)が証人出廷の撤回を求めてやって来ていた。「奥さんはご存知なんですか。ご家族の将来に関わることです」と三知代(水野真紀)を牽制しつつ「あなたの行為は大学も医師も患者すら貶めるものだ」と説得する。が、里見は国平をあっさりと追い返す。三知代の心配は募るばかりだ。
さらに佐枝子(矢田亜希子)は、東(石坂浩二)に関口の下で働いていることを明かす。当然、東は辞めるようにと諭すが、佐枝子は「お父様の仕事をもっと深く知りたいの」と固い決心を吐き出す。裁判に関わる人々の人生が大きく変ろうとしていた。
第1回証人尋問が始まった。初回の証人は大河内(品川徹)と佃(片岡孝太郎)である。佃は「全力を尽くしたうえでの不可抗力」という論拠で通そうとするが、関口の「財前被告人がワルシャワ出発前に容態悪化を知りながら自分で診療せず、さらに指示した治療が功を奏さなかったのは、被告人の診断ミスではないのか」という攻撃にうろたえる。
また大河内は「転移が確認されれば、手術以外を第一とすべき」としたうえで「手術前にがんの発見が不可能であったにせよ、転移の可能性を考慮せず手術したのは臨床医の自覚に欠ける」と言い切り、公判の印象は佐々木側の有利に運んだ。
公判の最中、この裁判に不似合いの老婆が所内に佇んでいる。きぬ(池内淳子)である。記者に見咎められそうになった時、ケイ子(黒木瞳)がきぬを危うく外へ連れ出した。きぬはケイ子に「本当に誤診したのなら一刻も早くご家族にお詫びしなければ…。あの子は人様の命を軽く見る子ではない。あの子は嘘をつかない…」と言い募るのであった。
その夜、扇屋で財前派の“作戦会議”が開かれた。2回目の証人はよし江と柳原(伊藤英明)である。よし江は素人であり柳原は財前が因果を言い含めることになった。3回目は財前と里見。里見は鵜飼(伊武雅刀)と国平の担当。又一(西田敏行)は、いつものように二人に“実弾”を進呈するのだった。
財前は柳原を教授室に呼びつけ「記憶の整理」を要求した。だが、柳原は、里見が後で証人に立つことを恐れ「事前に転移なしと判断した、ということ自体、嘘ではないか」と食い下がる。財前は怒りに発し「そもそも君の説得力不足からこんな事態を招いた」と恫喝し「君も努力次第で僕の後に続けるかもしれない。将来のためにも確実な証言をするんだ」と柳原に因果を含めるのだった。
ある朝、三知代は里見に「証言はやめて」と切羽詰った様子で切り出した。「あなたが大学を追われたら、何のために話したいことも我慢して一人で好彦を育ててきたの」と泣き崩れる。それでも里見は「佐々木さんの死を無駄にしないことは俺にしかできない」と説を曲げる気配はなかった。
2回目の証人尋問の日がやって来た。今日はケイ子が傍聴席に座っている。
そんなころ、研究室の里見の下へ鵜飼がやって来た。ハワイで開かれるシンポジウムに出席してくれという依頼だった。日程を見ると証言の日と重なる。里見が断ろうとすると鵜飼は「だから勧めているんだ。断ればそれ以後日本で研究することは難しくなる。よく考えた方がいい」とシンポの案内状を置いて出て行った。
法廷では関口が柳原を問い詰めていた。柳原は噴出す汗をぬぐうこともできず…。