あらすじ
<第10回> <第11回> <第12回>

<第10回> 「ダメ女の恋」
 和服姿も決まり、客を送り出す倫子(観月ありさ)を、なぎさ(矢田亜希子)は、うらめしそうに見ていた。配膳では篠田(風間杜夫)に、シーツ敷きでは、初恵(円城寺あや)に、伝票処理では次郎(梶原善)に、なぎさは、相変わらずしかられてばかり。そんな、なぎさの心の安らぎは千葉(金子賢)だった。
 一日の仕事が終わり、倫子が賄い場に顔を出すと、なぎさがいない。「また千葉君と二人で遊んでんじゃない」の初恵の話から、娯楽室に倫子がいくと、なぎさが千葉に麻雀ゲームのやり方を聞いていた。うっとおしそうな千葉だが、その光景を見た倫子は「もしや、なぎさは千葉君が好き」とピンと来る。さっそく倫子は、なぎさの気持ちを確かめるため誘導尋問してみると、確かに好きらしい。「私が何とかしてあげる」と倫子は、なぎさに請け合うのだった。しかし、なぎさは千葉が、倫子のことが好きなのを感じていた。  翌日、倫子はみんなが集まっている前で、「一泊の社員旅行に行きます」と宣言した。「いつもと違う何かに気づくかもしれない」と史子(浅野ゆう子)が気になりだした篠田はさっそく賛成。その勢いで、慰安旅行が決定する。
 倫子の計画は、なぎさと千葉を幹事にして、話す機会を増やし、何とか二人を結びつけることだった。割り箸くじで二人を幹事にした倫子だったが、その強引さから、計画はバレバレ。
 それでも、なぎさと千葉は計画を仲良く練り始め、倫子は安心するが、なぎさは、千葉が倫子のことを好きだと知っていることから「フラれたら、仕事がしにくくなるから、何もしないで」と倫子に言うのだった。そんな真剣ななぎさは初めて。
 倫子は、真意を聞こうと千葉をスナックに誘った。すると「あいつとつき合うつもりはない。好きな人がいる」と千葉。倫子は自分のこととは気づかなかった。
 倫子の鈍感ぶりに、千葉も苛立つが、法生(岸田健作)が執ように倫子に「好きだ」と迫るのに刺激を受け、千葉は「(なぎさと)二人で行ってきたら」と倫子が差し出した遊園地のチケットをつかみ「お前と行く」とヤケぎみに口走る。鈍感な倫子も、やっと千葉の気持ちに気づくのだが、そのやり取りを陰で、なぎさが聞いていた。「倫子ちゃん、そんな顔しないでよ。いつもみたいに、しょうがないでしょ、“私の方が気に入られちゃったんだから”って言って」と強がるなぎさだが、それ以来ふさぎ込み、翌日、花壱から姿を消してしまった。
 「ご飯だよー。みんな集まれ」といつもは、なぎさの元気な声で、花壱はスタートするのに、なぎさのいなくなった花壱は火が消えたよう。なぎさが行くなら東京しかないと、倫子は、なぎさを探しに、東京へ向かう。その倫子に、無理矢理、千葉もついてきた。  なぎさが行きそうな場所へを捜し、友達に電話しまくる倫子だが、なかなかなぎさは見つからず・・・。

<第11回>「閉館」
 次郎(梶原善)が何度も電卓をたたいていた。回りには史子(浅野ゆう子)、初恵(円城寺あや)らが、次郎の指先を見つめていた。「間違いない。黒字だぁ」。次郎の声が響き倫子(観月ありさ)はじめ、従業員たちは大喜び、花壱が黒字になったのは、本当に久しぶりだったのだ。賄い場の祝杯の席には、「時刻表を見せて」とやってきた老人の泊まり客(織本順吉)も引き込み、一同大騒ぎ。花壱の経営も軌道に乗り始めたよう。
 数日後、黒沼(金田明夫)が、権利書一切を持って、暗い顔でえびす銀行を訪ねた。支店長室には支店長と共に大手観光会社の企画部長坂巻(鶴田忍)がいた。黒沼は不渡りを出し、その債権、権利を大手観光会社に引き渡したのだった。大手観光会社では、修善寺一帯をゴルフ場を中心にしたリゾート開発計画を勧めていた。
 黒沼旅館の倒産は早速、花壱にも広まり「うちの借金はどうなる」「返さなくて良いんじゃないの」など従業員たちは無責任な話しをしていた。そんななか銀行支店長と坂巻が花壱を訪ねてきた。史子とともに応対した倫子に、坂巻は「契約書通り、出ていって欲しい」と切り出した。「黒沼さんは了解済み」と食い下がる倫子だが「契約書にはない」 と、き然と坂巻は花壱の明け渡しを、倫子に求めるのだった。
 「私がなんとかしますから、この話は当分秘密に」と史子を口止め、倫子は黒沼や銀行支店長に会い、頼み込むがダメ。弁護士に相談すると「相手の主張は当然な事」と言われてしまう。どうにもならない倫子だった。
 翌朝、賄い場に降りていくと、みんな元気がない。銀行員をオジに持つ加賀谷(酒井敏也)がオジに電話して皆、事情を知ったのだった。「女一人で交渉しなめられた」など倫子を非難する話も飛び出し、倫子は下を向くばかり。そんな倫子はこの日失敗ばかりして一日が終わった。倫子がここ三か月一生懸命頑張ってきたのをだれもが知りっていた。その夜、初恵、篠田、千葉らはそれぞれ「女将の決断に任せるから」と倫子に言ってくれるのだった。
 翌日、倫子は社長に直談判に出かける決意を固めた。「そんなことをしても」と止める史子も一緒に、倫子は大手観光会社に出かけていった。しかし、受付嬢に相手にされず、社長は会うはずもない。やっと捕まえた坂巻に「借金は返しますから」と頭を下げる倫子だが、坂巻は「こちらも人と費用をかけていますから」と言われてしまう。こうなれば、社長宅に押し掛けてと、考え倫子は社長宅に張り込み開始。しかし、長く待った介もなく社長の神崎(春田純一)は「企画部長と同じ意見です」と冷たく言い放たれてしまう。

<第12回>「奇跡を呼ぶ宿」
花壱が潰れ倫子(観月ありさ)は、都内のアパートで志保(黒川芽以)と二人暮らしを始めた。「だらしないわね」。志保にしばしば叱られ、どっちが親だか、わからない相変わらずの倫子だが、再び、イベコン、PRガールの職に戻り、元気だけはいっぱい。
 ある商店街で、倫子が「どうぞお試し下さい」と、新発売のワインのPRをしていると、その声を聞き止める老人がいた。「こんにちは」とあいさつする老人に倫子は「花壱のお客さんですよね」と気づく。その老人は、花壱が初めての黒字を出した日、一緒に祝賀会に加わった老人だった。
 近くの公園で話しているうち、倫子に老人は、花壱が、潰れることになった神崎開発の、今は実権を息子に譲っているが、会長(織本順吉)だと明かす。そのうえ、神崎は、高邑とも成功間違いなしの大きな仕事をしようとしたことがあり、でも途中で、「高邑君は辞めると言い出した」など思い出話を倫子にするのだった。そして、何かに気づいたように「女将さん、ひとつ提案がある・・・」と、倫子に言い出した。
 その提案は、花壱を一日だけ再開し、息子で社長の栄佑(春田純一)に、本当にくつろげる旅館とは何かを認識させ、あわよくば花壱の存続を決心させることだった。
 花壱が潰れ、従業員たちはそれぞれ、職を見つけ働いていた。倫子は、キャバクラで、倫子の源氏名で働くなぎさ(矢田亜希子)を手始めに、千葉(金子賢)、次郎(梶原善)、初恵(円城寺あや)史子(浅野ゆう子)、篠田(風間杜夫)らを回り、人集めをする。
 そして計画当日、神崎は、会社から社長の栄佑を「一日時間を作れ」と無理矢理連れ出し、花壱に連れてくる。栄佑は、花壱が借金の方に取り、自分が潰した旅館とは気づかない。
 「お父さんと同じ事をしているだけです」とぶ然として栄佑は、片時も携帯電話を離さず、仕事の打ち合わせや、持ってきた書類の確認などに忙しい。そんな栄佑を哀れに思いながら「明日一番で返すから、電話を切れ」と神崎が命じ、どうやら二人は、温泉気分を楽しむムードに。
 ところが、篠田が腕によりをかけた料理ができたが、酒屋が休みで酒がない。倫子が困っていると黒沼(金田明夫)、法正(岸田健作)親子が、「お困りでしょう」と酒を持って来てくれた。法正は、倫子を「ホタルが今盛りで」とデートに誘うが、その言葉から倫子は、デートは断るが、あるアイデアが浮かんだ。
 酒も入り、神崎親子は久しぶりにのんびり。部屋に入ってきた倫子が、突然部屋の電気を消すと、外はホタルが乱舞する幻想の世界が広がった。「今度はお母さんも連れてきましょう」。心を開いた栄佑に、神崎は「この旅館は、もうなくなる。それもウチの会社のせいで・・・」と切り出した。
 「そんな裏が」と、怒り出す栄佑。さらに、栄佑が東京から持参した重要な契約書も見あたらなくなってしまった。「せっかく良いムードだったのに」と従業員たちはブツブツいいながら、夜中、なくなつた契約書探しに、旅館中をひっくり返すのだった。


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