落語びより
第20回「まばゆい恋心」
8月24日放送
 梅雨が長すぎた。気象庁が梅雨明け宣言の撤回を検討する騒ぎにまでなった。今年はついに夏らしい夏はほとんど来なかった。おすし屋さんから近海のクロマグロが消え、野菜や果物の高騰が始まった。海水浴場は完全に商売上がったりだろう。海の家「うらら」のママのつらい顔が目に浮かぶ。そして楽語びよりも梅雨に悩まされつづけた。
 朗読収録の日も雨だった。
 8月初旬に、佃島や新木場のロケハン(ロケーションの下見)に出かけた。今思うと、この夏最初で最後のピーカンであった。「梅雨の晴れ間は五月晴れ」というヤツだ。って、これ本来は5月6月の話だけど。でもって朗読の収録は8月中旬だから、まあ梅雨の心配はなかろう!と思いながらロケハンしていたわけだ。ただ、この日は下町で大規模な花火大会があるということで、インサート映像を撮影しておこうと思いカメラを持って行った。結局、真夏の晴天下の撮影はこの日の花火大会が唯一、ということになってしまった。
 当然ながら夕方から下町は凄い人出となった。月島のもんじゃ通りも大賑わいだ。それにしても花火大会ほど初々しいカップルが目立つイベントも珍しい。ディズニーランド、映画鑑賞、花火大会、恋の始まり3種の神器といってもよかろう。最近は男性も浴衣姿が増えた。浴衣で2ショットなんて、2人は10年来連れ添った仲だろう、と勝手にイメージしてしまう私は完全にオヤジである。実際撮影させて頂いたカップルの多くは付き合って1年未満。まだお互い照れがあって初々しいのに、歩いている姿だけ見ると、まるで夫婦に見える。和服パワー恐るべしだ。
 この日の映像はaikoの「カブトムシ」に乗せようと決めていた。aikoといえば「花火」という曲でブレイクしたこともあって、同じく夏の恋心を歌ったこの歌にはピッタリだ。もちろん、彼氏のほうが「少し背の高い」浴衣カップルを探して撮影させてもらった。で、沢山のカップルを撮影したのだが、どうしても1組だけカップルではない人たちを入れさせてもらった。美人3姉妹とその長女の娘2人という、まさに「まばゆい」豪華5人グループだ。最近の流行なのか、若い女性は原色の派手な浴衣が多いが、3姉妹とも実に品のいいクラシックな浴衣に強めの色の帯が見事にはえている。アップにまとめた黒髪が浴衣の柄に合っていて日本人女性らしい奥ゆかしさも感じる。まばゆい。実にまばゆい。2人の娘さんもさぞかし朗らかにお育ちになられるのだろう、と思わず妙な敬語を使いたくなるほど、まばゆい。一瞬にして僕は、まさに「まばゆい恋心」を抱いてしまったのである。もちろん勝手に、一方的に、である。そして数分で何事も無く撮影は終わるわけで、お礼を言って放送日を説明したらお別れである。あたりまえだ。あー、やっぱり夏の恋心は一瞬の儚きモノだ、って今回のテーマの解釈間違っていないか?と突っ込まれそうな陳腐で安〜い「恋心?」であった。
 それにしても、彼女たちのおかげでやっぱりニッポンの夏はいいなあ、とつくづく思ってしまっただけに、今年の夏の短さは本当に残念でならないのである。
ディレクター 

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