落語びより
第14回「水の流れと人の運命(さだめ)
7月13日放送
大仰なサブタイトルだなあ、と思いつつ、こういう場合の映像は結構むずかしいなあと感じる。
映像を作るときには、テーマや詞の内容にそいつつも、そのものズバリではなく、それを見ている視聴者の皆さんに何となく「感じて」もらえる映像を心がけているつもりである。
音楽業界などでよく使われる「インスパイア」されたモノってヤツだ。

今回の「川」のように、物理的に存在するモノがテーマの場合、それをどう映像で表現するのか、逆に難しかったりする。
例えば「優しさ」のような概念だと、あるレベルのイメージ映像であれば、見ている人に判断を委ね、ある種の「深み」を作ることができる。「家族」のような、人の関係性がテーマの場合、そのものズバリを描いても、見ている方に様々な思い入れがあるので、押し付けがましくなく何かを感じることができるでしょう。
でもモノがテーマになるとその奥の深さを、全て詩の意味と視聴者の感覚にゆだねるのもいかがなものか、「色々な川を見せますから、皆さん感じてください。」というのも無責任な気がするのである。
などと考えていて、結局今回2つの詩は風景だけにして、角松敏生さんの歌「常世へ続く川」だけは、川という「モノ」ではなく、川や水のある生活風景を描こうと思った。同じ川でも、川沿いにおばあちゃんがいるのと、子供が遊んでいるのとでは川に対する感じ方もぜんぜん変ってくる。
そんな「風景」を少し押し付けてみることで、映像として「主張」できるといいかな、と。
今回出演してくれた家族の皆さんには、33度というこの時期にしては猛暑のなか、ほとんどが「待ち時間」という段取りの悪い撮影に、文句ひとつ言わずにいい表情を作ってくれたことに感謝である。でもちょっとクサイ映像になったかな。

やはり今回紹介した3つの詩の見事な「人生の風景」にはとてもかなわないなあ、ということだけが浮き彫りになってしまった気がする。
また頑張りたい。
ディレクター 

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