<第7回> <第8回> <第9回>


<第7回>
 その日、夏樹(江角マキコ)は待ち合わせ場所の『オーバータイム』で久我(椎名桔平)を待っていた。少し遅れてやって来た久我は、ここで食事を取ることを夏樹にことわり、さらにいつポケベルで呼び出されるか分からないことを事前に告げるのだった。
 同じ頃宗一郎(反町隆史)は、利奈(田中麗奈)の病室を訪れて居た。
 相変わらずリハビリを拒否する利奈は、宗一郎のことも邪魔者扱いし追い返してしまった。しぶしぶ病室をあとにする宗一郎…。
 一方夏樹は、病院に呼び出された久我を見送り一人で映画館の前にいた。
 見たいと思っていたホラー映画を一人で見るために。
 すでに暗くなった館内。ポップコーン片手に入って行くと、なんとそこには宗一郎が!お互いすでに見たと思っていた映画なのに?思いがけない場所での鉢合わせに、夏樹はその時はじめて宗一郎となずな(木村佳乃)が、自分が原因でけんかしてしまったことを知った。事情を聞き、要領悪すぎるとせめながらも、
 「電話してあげた方がいいよ、待ってると思うよ」といってやる夏樹。
 でも、宗一郎はなかなか思いきれないようだった。
 数日後、夏樹はなずなを『オーバータイム』に呼び出して、宗一郎と自分は友達であり、弟のような存在だと思っていることを話した。そして、「私は久我さんが好きだし、結婚したいとおもっている」とキッパリいうのだった。
「なんだか安心しました」夏樹とほほ笑み会うなずなの表情からみて、わだかまりはぬぐい去られたようだった。
 その頃、宗一郎はこっそりと病室から利奈を連れ出していた。
「どこへ行くの?」尋ねる利奈に「ちょっとした冒険の旅」と返す宗一郎。
 行き先は、利奈が通っていた小学校。
 利奈は一瞬戸惑っていたが、宗一郎の押す車椅子で校内をまわるうちに、次第にいきいきとした表情になっていった。
 そして剣道の練習に汗する後輩を見つけるとじっとその姿に見入ってしまった。何度も降り下ろされる竹刀。心の中で声援をおくる利奈。「チャンス」「そこっ!」鮮やかに一本が決まった時だった、利奈は思わず立ち上がっていた。
 「やれるような気がしてきた」。利奈は自分の中に勇気が沸いてきた気持ちを正直に宗一郎に打ち明けると、今ここで歩いてみると言い出した。
 一歩、一歩とおぼつかない足取りながら歩きはじめた利奈。
宗一郎は、自分のところまでたどり着いた利奈をしっかりと受け止め、抱きしめていた。
 この頃病院では、久我、真鍋(星野有香)たちが、利奈の行方を探していた。。宗一郎がここに来るといってたことを知る夏樹も、久我に呼ばれ二人のことを心配していた。とそこへ、二人がひょっこり戻ってきたのだ。
 利奈は心配をかけたことを謝り、久我のまえで歩いて見せるのだった。
 心配が安心に変わって、本当に嬉しそうにほほ笑む久我。
 宗一郎は、久我から預かっていた利奈について書かかれているノートを返すと病院をあとにした。外に出で、ふうっと安堵の表情を見せる宗一郎。だが、ここでまた宗一郎を呼び止める声が。真鍋だった。真鍋は利奈からだいう四つ折りのメモを手渡してくれた。その時、珍しく持っていた宗一郎の携帯電話のベルが鳴った。メモを胸ポケットに押し込むと、宗一郎は電話をとった。
 なずなからだった。この前のことを謝り合い、会う約束をする二人。
 約束の店に来た宗一郎は、先に来ていたなずなにビールの注文を頼むと、ひとまずトイレにとかけこんだ。そこへ、店員がやってきて、「さきほど煙草をかわれた時出された千円札の中にはさまっていたので」と一枚の紙をなずなに差し出した。受けとって、それを読むなずなの表情が次第にこわばっていく。
“さっきは抱きしめてくれてありがとう……”

<第8回>
 “抱きしめてくれてありがとう”。宗一郎(反町隆史)が持っていた手紙を読んでしまったなずな(木村佳乃)は、一人店を出てあてもなく街の中を歩いた。
 しかし、結局たどり着いたのは宗一郎の家の前。だけど訪ねてみる勇気はなく、そのまま帰ってしまおうとした時だった、「なずなちゃん」。背後からクラクションの音とともに、久我(椎名桔平)の声がした。病院から夏樹(江角マキコ)を送り届けた帰りだという。
 「宗一郎君まだ帰ってないみたいだったけど…」。久我は気をきかせて言ったつもりだったが、「あ…はい」と元気なさそうに返すなずなの様子を見て取ると、宗一郎との間になにかあったことを察するのだった。
 なずなを気遣って車に乗るよう促す久我。そんな二人の様子を、久我の忘れ物を届けに追いかけてきた夏樹が見ていた。
 なずなは、久我に手紙の一件を聞いてもらい、差出人は、夏樹だと思うと言った。しかし、宗一郎と利奈(田中麗奈)のことを知る久我は、書いたのは利奈だと確信。メモにキティがついてたことで、まちがいないと言った。
 でも、疑いは説けてもなずなの気持ちは晴れなかった。
 宗一郎のことを好きという思いが日に日に強くなり、その思いが宗一郎を束縛したいという気持ちになり、自分自身収拾がつかなくなる…。不安で仕方がなくなるのだというのだ。
 久我は、好きならばがんばらなきゃと励ましてやるのだった。
 同じ頃宗一郎は、アパートの前でなずなの帰りを待っていた。
「電話ください」のメッセージを残していこうともした。でも、できないままその場からを去ってしまう。
 帰ってきた宗一郎は、父が近々パリから戻ってくることを春子(西田尚美)から聞かされた。19歳の彼女も同行するらしい。
 そうなると夏樹と冬美(石田ゆり子)はここには居られない。
 冬美は、遠藤(加藤晴彦)と暮らすと宣言。
 夏樹も早速荷物をまとめ始めた。しかし夏樹はいざ部屋を探すとなると迷った。ニューヨークに行くことになった美容師の友人が、店を任せたいといってくれている。その片方で、久我との結婚も本気で考えていたのだ。
 ある日、宗一郎は利奈の写真を届けに病院を訪れ、そこで久我からなずなのことを聞かされた。自分よりなずなを理解したような久我の口振りにムッとする宗一郎。でも久我の言うことは正しいとも思えて…。その夜宗一郎はなずなに電話をした。
 再び、宗一郎となずなは会ったが、お互い好きだということいがい、何も言えない。どうしたらなずなを安心させることができるのかわからず、宗一郎は「しばらく会わないでいよう」と言ってしまう。そのほうがいいと思ったのだ。
 だが、その数日後なずなは不眠と拒食で久我の病院に運びこまれた。
 駆け付けた宗一郎を責める久我。知らせを聞きやってきた夏樹はハラハラと二人のやりとりを聞いていた。
 打ちひしがれた宗一郎は、「待ってる…なずなが大丈夫になったら電話して欲しい…」と言うのが精一杯だった。
 宗一郎と別れ、一足先に帰って来た夏樹を一人の少女が待っていた。
 久我の娘・由香(奥田佳菜子)だった。由香は病気の母と二人、父が戻ってくるのを待っている。父を返して欲しいと夏樹にいうために来たのだ。
 翌日、夏樹は、久我に娘が来たことを話し「事情は知っていたから、私は大丈夫です」とこんなことがあっても自分は結婚に躊躇はしないことを暗に告げた。しかし、久我の答えは意外なものだった。
「今までのつきあいで誤解させたのならゴメン…俺はもう結婚する気はないんだ」。

<第9回>
 宗一郎(反町隆史)は、小林(伊藤英明)の紹介で大手出版社にある企画を持ち込んでいた。それは以前、夏樹(江角マキコ)と話していた『ドゥ ディテール』、後ろ姿を撮るというものだった。しかし、企画のおもしろさは評価されたものの、有名なカメラマンで企画を進めたいという編集者は、宗一郎にそれ相応の金は払うと、企画買取りを申しでる。
 だが怒りの表情でそのまま出版社を出て行ってしまう宗一郎。
 その頃、夏樹は、冬美(石田ゆり子)、春子(西田尚美)らに美容師の友人から店を任せたいという話しを断わり、久我(椎名桔平)との関係もダメになりそうなことを話していた。これを聞いた二人の反応はさまざまで、「久我さん逃したら一生独身かも…」という春子に、冬美は、意外なことに「奥さんも娘も近くにいる人、後々大変かも」と珍しく冷静なことをいうのだった。
 その後、夏樹は思い切って久我に電話してみた。しかし、久我はひどく忙しそうで電話どころではない様子。夏樹があきらめて、仕方なく受話器を置いたその時だった、なずな(木村佳乃)から久し振りの電話が入ったのだ。
 夏樹は、宗一郎がいないことを告げ、戻ったら連絡があったことを伝えると約束した。しかし、その時夏樹は直感した。なずなはさよならを言うために電話してきたのではと…。だから帰宅した宗一郎が部屋からなずなに電話しているのを盗み聞きする気にはなれないと、冬美たちにいうのだった。
 案の定なずなは、親が決めてくれた就職で、北海道に帰る決心をしたことを告げた。二人は、なずなが帰ってしまう前にもう一度会う約束をするのだった。
 数日後、夏樹は久我に会うために病院へ。だが、そこで別れた妻子と一緒の久我の姿を目撃してしまった。慌てて身を隠した夏樹を看護婦の真鍋(星野有香)が見つけた。真鍋は、たまに奥さんとああして会っているみたいと言い、さらに久我が近々海外転勤することが決まったことを話した。
 そして、「先生を行かせてあげて下さいね」と夏樹にいうのだった。
 その夜、宗一郎、夏樹たちは、『オーバータイム』に集まっていた。
 久我のこともあってか、いつもよりハイペースでワインを飲み、いつのまにか涙ぐんだりする夏樹。その様子を見兼ねてか、冬美は「この子連れて帰った方がいいよ」と宗一郎に言った。
 二人きりで帰したことをしきりに気にする春子。
 しかし冬美は、実はそれが狙い。あれだけ気が合ってるんだから、くっついちゃえばいいと二人きりにしたのは計画的だというのだった。
 その頃、家に戻ってきた二人は、肩を寄せ会い、つつみ隠さない気持ちを打ち明けあっていた。久我のこと。企画がうまく行かなかったこと。
 ここまでは冬美の思いどおり。
さらに、「ここまで心開いたことなかったな…」という宗一郎。
 「わたしも」と素直に返答する夏樹に、宗一郎は続けて言った。
「…いっそ寝ちゃおっか」二人、肩を抱き合い、顔を見合わせて……。


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