あらすじ
<第1回> <第2回> <第3回>

<第1回> 「王都最大の危機」
 王都・平安京は、不穏で不浄な空気の中にあった。悼むべき出来事も多発し、平安の世は常に不安の世でもあった。そんな世情を憂えた帝(花田裕之)は、ある日都の吉凶を占う『陰陽祭』をとり行った。清涼殿祭殿には、多くの貴族たちが居並び、その中には左大臣家貴族・藤原将之(保坂尚輝)やその兄で右大臣家の藤原光弘(木下ほうか)の姿がある。そして彼らが見守る方には、位や天気、暦や風水をよむことで吉兆を占うという陰陽師が。「星の動きより都の吉凶はどう出ておるか?」と問いかける光弘。
 だが、視線の先の宮廷陰陽師・保憲(段田安則)は、しどろもどろの返答に終始するばかりで、その師である忠行(筒井康隆)も、「・・・我らの呪力及ばぬものが・・・」と絞り出すように言うのが精一杯だった。「所詮あの程度よ」。元来、陰陽の術など信用してないふうの将之がそれと見て言い放つ、とその時だった。
 祭殿の中央に炎が螺旋を描き立ち上ったのだ。「姉上ッ!」、危険を察知し、姉である帝の寵姫・彩子(羽田美智子)を守る将之。そして、女御衆の一人・千早(野波麻帆)がさらに激しく燃え盛る炎の中に鬼の姿を見た時だった、「急々如律令!」、突然の閃光の中、呪文を唱え鬼の姿を散らしながら一人の男が祭殿に降り立ったのだ。「晴明さまっ」、「晴明!」。武官、女御衆が口々に叫ぶ。そしてこの羨望を持って迎えられた男こそ、すべての呪術に長け、鬼神をも操ると噂される陰陽師・安倍晴明(三上博史)その人であった。
 晴明は、この度の祭に遅れた理由を都を守るため結界をめぐらせていたためと言いつつ、先ほど現れた鬼のように、強力な悪の気が都を覆い始めている気配を忠行らに伝えた。だが、もっとその場にいる者たちを恐れおののかせたのは、「死相の見えるお方がおる」という晴明の言葉だった。そして、それは、将之と彩子の両名・・・。
 「貴様・・・」、憤怒の表情で晴明を激しく見据える将之。と次の瞬間、今度は明るかった空がにわかに曇った。そして闇が支配した一角から再び上がった炎と共に黒衣に身を包んだ男が現れ出でたのだ。「やはり影連どのか」。晴明は予期していたようにつぶやいた。この世の不穏を招く諸悪の根源は、かつては共に陰陽寮で過ごした橘影連(陣内孝則)の仕業であるらしいことを、この時晴明は、すでに見抜いていたようだった。影連を知る忠行と保憲の表情も青ざめていた。
 それからしばらくして、晴明は、弟子の藤哉(山田孝之)と共に、彩子のいる昭陽舎御殿を訪れた。突然病の床に伏せた彩子には、病をもたらす邪気が取り付いていたのだ。だが、将之の依頼で邪気を振り払おうとするものの、繰り出す呪符はことごとく焼き尽くされて行くのだ。それを見ていた女御衆の氷月(加藤貴子)は、「術を糧に妖気を増していくのです」と言い、千早同様に邪気の存在を見抜く力があることを示すのだった。
 その後、ますます悪化する彩子の様子を見た晴明は、最後の手段を講じることを将之に伝えた。その最後の手段とは「雷切丸」を使うこと。退魔の太刀と言われ、すさまじい力を秘めたる魔性の刀は、おいそれと使いこなせるものではないという。だが、これを聞いた将之は、ひるむことなく雷切丸を手に入れるため晴明と行動を共にすると立ち上がった。

<第2回> 「王都への怨み」
 その日、昭陽舎では貴族衆を招いての花見の宴が催されていた。
 将之(保坂尚輝)も貴族衆に混じって華やかな舞いなどに興じていたが、実は華麗な舞いよりも、咲き誇る桜よりも将之の視線を止めていたものは、彩子(羽田美智子)、氷月(加藤貴子)らと並んでいた千早(野波麻帆)の存在であった。だが、そんな華やかな宴が都で行われていた一方では、人里離れた場所での盗み目的の無差別な殺傷も多発していたのだ。
 「悪霊怨霊のたぐいが、何時何時都の平和を脅かさないとも限らぬ」。宴を見やる将之ら貴族の中にも、見えない敵に備える思いがないわけではなく、この日の宴にも万が一に備えて陰陽師・保憲(段田安則)が控えていた。頼りにしたいのは、実は別にいたのだが・・・。その頃、頼りにしたい人物・安倍晴明(三上博史)は、依頼に応じての呪術の最中であった。傍らに弟子の藤哉(山田孝之)を従えて。だが、どれほど術を施して霊を払おうと、根源を絶たなければ終りはないという思いを抱く晴明の日々は、空しくも感じられていた。
 そんなある日のこと、晴明と将之の元に四の宮(山口馬木也)が都に舞い戻ったとの報がもたらされた。先々代の帝の皇子であり、現帝の従兄弟にあたる四の宮は母の身分が低かったため皇位継承が成らず、その恨みを晴らしてほしいと、その昔晴明に帝殺しを依頼したこともあるという。
 その四の宮が、今では法力を身に付け都に戻ってきた。将之は、用心に越したことはないと咄嗟に思った。
 しかし、晴明の思いは違っていた。偶然出会った四の宮の様子とその言動から、四の宮には邪念怨念はなしとみてとったのだ。
 「不穏な出来事が相次ぐ都のため、少しでも役に立てればと」そう明言した四の宮の言葉と眼差しに嘘偽りはない。その時四の宮が、先日盗人から窮地を救った際、美代(神足栞名)という娘からもらった貝殻を大事に所持していたことも晴明が四の宮を信ずる要因になった。
 だが、しばらくして晴明は、四の宮から術比べをしたいとの申し出を受ける。何ゆえに?周囲も困惑する中、晴明は四の宮の申し出を受ける決意を固めた。折りしも世の中には、盗みではなく人命目的の人斬りが出、晴明が、それは死人に悪鬼が取り付いての仕業と見抜いたという出来事が起こっていた。この時晴明は、鬼に実体を与え、かつて四の宮が抱いていた帝への怨念を蘇らせたものとして、影連(陣内孝則)の存在を感じとっていたのだ。将之は、冷静沈着な晴明がおよそ受けるほずもない術比べを受諾したことの真意をその眼で確かめるため、術比べの場へと赴いた。

<第3回> 「もののけの子」
 ある夜晴明(三上博史)は、ある夢にうなされ眠りを妨げられた。
 それは・・・・・・幼き晴明の眠る傍らに母が寄り添っている所へ、突如追っ手と見られる武者風の男たちが出現。「物の怪は?」「逃げたか」などと口々に叫ぶと、何処ともなく去っていった。追っていた人、いや物の怪とは誰のことだったのか、そこには母の姿はすでになかった・・・・・・。
 主である晴明の様子に気付いた藤哉(山田孝之)は心配したが、晴明は「大丈夫だから・・・」といさめるのだった。
 そんな中、都では娘ばかりを狙った神隠しが多発していた。貴族の娘・徳子に続き、内蔵頭の娘・真柴(白川みなみ)までもが・・・同じ辻の祠で、琴の音に誘われるまま消えてしまったという・・・。
 事の次第は昭陽舎にいる彩子(羽田美智子)の耳にも届き、彩子は、それが悪霊の仕業であるならば、早々にも陰陽寮の、もちろん晴明が事を収めてくれるはずと願うのだった。その思いは将之(保坂尚輝)とて同じであった。しかし今回は何かと晴明だのみにする周囲の様子が少しばかり違っていた。実はこの時世間には、『晴明は人の子にあらず。母はキツネであり、人並み外れた技もそれ故』との噂が流れていたのだ。
 将之は、「キツネだろうがタヌキだろうが晴明は晴明だ!」と意に介するふうはないのだが。だが、光弘(木下ほうか)からもその噂のことを聞かされた保憲(段田安則)は、仕方なく晴明をこの件に立ち入らさず、自ら祈祷を行うのだった。
 その頃、一人で真柴が神隠しに合ったという場所へ出向き式占を行っていた晴明は、そこで鞠を手にした童の幻影を見た。以前にも一度現れたことのある童は何やら言いたげの様子でもじもじとたたずんでいる。だがしばらくその童を見ていた晴明は、その童が、誰かを待ちわび、寂しげな面持ちに満たされぬままの母への思慕を感じ取った。そして、この時、一連の騒動が、悪霊の仕業ではなく、ましてや影連(陣内孝則)の仕業でもないことを知ったのだった。
 その後、晴明は、内蔵頭の元には戻ったものの正気を失ってしまっている真柴のために、また最近行方知れずになってしまった千早のために、再び童と遭遇した辻の祠に将之、藤哉と共に向かった。


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