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<第1回> <第2回> <第3回><第1回> 「大川の隠居−鬼平宅に賊侵入!」」
鬼平こと火付盗賊改長官長谷川平蔵(中村吉右衛門)の力で、江戸の 市中は平穏な日々が続いている。平蔵にも、密偵たちを誘い、大川で舟遊びをするゆとりがあった。川面に、向かいの舟の船頭が歌うさびた声の千住節が流れ、平蔵は思わず聞き惚れた。この船頭、名は友五郎(大滝秀治)といい、川越育ちで年はもう七十だが見事な腕前だ。今は日本橋の船宿に住み込んでいる。
平蔵が風邪をひいた。妻の久栄(多岐川裕美)からは酒を禁じられたが、宿直の木村忠吾(尾美としのり)にこっそり酒を持ってこさせて、深夜に酒盛りをした。気持ちよく寝た平蔵だが、翌朝、愛用している煙管がなくなっているのに気がついた。何者かが屋敷に忍び込んだのだ。
上方の大盗賊生駒の仙右衛門(財津一郎)が江戸に潜入し、川越を根城にする盗賊鹿山の市之助(中田浩二)と組んで一仕事をもくろんでいた。二人をつないだのは仙右衛門の愛人の掻堀のおけい(平淑恵)だった。盗んだ金は船で上方に運ぶ計画で、沖にいる一味の大船まで金を運ぶ腕利きの船頭が必要。目をつけられたのが友五郎だった。
平蔵は千住節の声が忘れられず、あちこちの船宿を当たって友五郎を探し、客となって夜の大川に漕ぎ出して千住節を聞いた。突然、舟がぐらりと揺れた。月夜の川面に巨大な鯉が泳いでいるのが見えた。「大川の隠居だ」と、まるで友人を紹介するように友五郎が言った。「いいものを見た」と平蔵は一服つける。友五郎も煙管を取り出した。何と、屋敷から盗まれた平蔵愛用の煙管ではないか。
友五郎は昔は浜崎の友蔵という盗人だった。今は堅気になっているものの、鬼平の名声についむらむらとなり、屋敷に忍び込んだのだった。しかし、凶悪な盗みをする市之助からの誘いは頑として断る友五郎である。
市之助は卑劣な手を使った。身寄りのない友五郎には、盗賊時代に仕えていた親分の忘れ形見で、息子のように可愛がっている庄太郎(石井揮之)という若者がいた。市之助一味は、本所の紙問屋でまじめに働いている庄太郎を連れ去り、友五郎が仲間にならねければ庄太郎を殺すと脅した。
仙右衛門と市之助の一団が、残忍な押し込み強盗を同時に二箇所で行った。平蔵は友五郎が船宿から姿を消し、庄太郎も行方不明になっていることから、二人をつなぐ線を探るように密偵たちに命じた。おまさ(梶芽衣子)に相模の彦十(江戸家猫八)、大滝の五郎蔵(綿引勝彦)や小房の粂八(蟹江敬三)の働きで川越の川ぞいの一味の隠れ家が見つかり、平蔵が指揮する与力、同心たちが出動、大捕物の末に一味は根こそぎとなった。
庄太郎は助けられた。やむなく仲間になった友五郎にも縄がかけられた。捕物騒ぎの中で友五郎は市之助を殺していたが、友五郎に対する平蔵の裁きは寛大だった。「島送りになるが、そう長いことはない。大川の隠居も待っている」と、やさしい言葉をかける平蔵だった。
<第2回> 「一寸の虫」
長谷川平蔵(中村吉右衛門)の密偵仁三郎(火野正平)は、盗賊一味との立ち回りの中で負傷した。一味の首領が短銃で平蔵を狙うのに気づき、平蔵の前に身を躍らせて自ら盾となったのだ。
裏長屋で一人暮らしの仁三郎のために、おまさ(梶芽衣子)が通いで食事を作ったり、傷の手当てをした。それが平蔵の心遣いだと知った仁三郎は、自分には、生涯恩を忘れてははいけない人が二人いるとおまさに言った。一人は、三年前に捕らえられて獄門になるところを助けてくれた平蔵。もう一人は船影の忠兵衛だと言う。
傷がよくなってきた仁三郎は、橘屋という菓子屋を訪ねた。主人夫婦に五両もの金を与えた仁三郎は、おみの(虎谷綾乃)という六歳の娘の髪に花かんざしを挿してやる。「おじさんありがとう」と言うおみのだが、実はおみのは仁三郎の一人娘。五年前に女房*を亡くした仁三郎が、妹夫婦のところに預けていたのだ。
橘屋を出た仁三郎に近づく旅姿の男がいた。鹿谷の伴助(高橋長英)で、昔、仁三郎と共に船影の忠兵衛(高橋昌也)という盗賊の下にいた。その伴助が仁三郎を盗みの企てに誘う。しかも、忠兵衛への仕返しも兼ねているという。断ろうとする仁三郎に伴助は、「おみのは可愛い盛りだ」と言う。断ればおみのが危ないという脅迫である。
平蔵には話していないが、仁三郎が忠兵衛の配下だったのは十五年前。ある商家に押し込んだ仁三郎は、店の若い女中を手篭めにしようとした。それを忠兵衛が厳しくとがめ、五十叩きの罰を言い渡した。「殺すな、犯すな」が忠兵衛の掟。その時、太い棍棒で仁三郎を叩いたのが伴助だった。
忠兵衛から縁を切られた仁三郎だったが、罰を受けたことで目が覚め、それ以後は「殺さず、犯さず」を守り通して来た。一方の伴助はその後、押し込み先の奉公人を殺して忠兵衛から百叩きの罰を受けた。親の代からの縁で追放は免れたものの、伴助は忠兵衛を恨んだ。だから伴助は、仁三郎も忠兵衛を恨んでいると思っていた。
伴助の計画では、浅草の小間物問屋に押し込んで金を奪い、その場で忠兵衛も殺して逃げる。昔気質の忠兵衛について行けない部下たちの反乱でもあった。
仁三郎の様子が最近おかしいことに気づいたおまさは、そのことを密偵の五郎蔵(綿引勝彦)に言う。仁三郎を軍鶏鍋屋の「五鉄」に招いた五郎蔵だが、仁三郎は何があったのかは話さない。五郎蔵は、「自分は迷った時には早く死ぬほうを選ぶ。その方が欲にとらわれない判断が出来る。心残りがあったら、一切のことを長谷川様にお預けする」と言った。とたんに仁三郎の顔が明るくなった。
押し込みの日、廃屋に集まった伴助とその仲間に、仁三郎は一人で立ち向かう。伴助を刺し、さらに何人かを倒したが多勢に無勢、斬られ放題となる。そこに木村忠吾(尾美としのり)ら同心を連れた五郎蔵が飛び込んだが時すでに遅く、仁三郎は息絶えた。五郎蔵が仁三郎の身辺を探るうちに、押し込みの計画をつかんだのだ。
仁三郎が平蔵にすべてを話せば、自らが命を落とすことはなかった。だがそれでは 忠兵衛が捕らわれる。二人の恩人の板ばさみにあった仁三郎の、これが義理と筋目の通し方だった。後には「おみののこと、おたのみ申します」と拙い字で書いた、平蔵あての手紙が残されていた。
<第3回> 「男の隠家」
火付け盗賊改めに捕らえられた玉村の弥吉(地井武男)は、錠前はずしの名人である。しかし血を流すような盗みは一度もしていない。長谷川平蔵(中村吉右衛門)は弥吉に、「自分の密偵になれ」と言うが、弥吉は「死んでも嫌だ」と断った。そんな弥吉のことが平蔵の耳に入ったのは、一月ほど前のことだった。
ある日、相模の彦十(江戸家猫八)が、商家の旦那の服装をした弥吉を見つけて、一緒にいたおまさ(梶芽衣子)とともに後をつけ家を突き止めた。木村忠吾(尾美としのり)も加わって監視を続けた。弥吉は賭け碁の寄り合いに顔を出していた。客に接近して情報をつかみ、どこかに盗みに入るつもりなのだ。
弥吉の家から、立派な身なりの深編笠の侍が出て来た。沢田小平次(真田健一郎)と忠吾が尾行したが、侍はいかにも大身という様子で、悠然と江戸の町をあちこち歩き回ったあげく、どこにも寄らずに弥吉の家に戻った。
その中年男、侍ではなく吉野屋清兵衛(小野武彦)という裕福な小間物問屋の主人だった。清兵衛は婿養子で、女房子供から奉公人にまで馬鹿にされていた。賭け碁で清兵衛と知り合った弥吉は、「一度でいいから思い切り威張ってみたい」と嘆く清兵衛のために、芝居小屋から立派な侍の衣装を借りてきて貸した。刀は竹光だったが、町を歩けば誰もが清兵衛に礼をして道を譲り、気持がよいことこのうえなかった。「おかげでいい夢を見せてもらいました」と感謝する清兵衛に弥吉は、「そろそろ上方に戻らなくては」と言う。そして、「自分は上方で仲買人として、金の工面に追われながら小さな商売をしている。一度くらい、誰かの真似をして日ごろの苦労を忘れたい」と言った。
弥吉は清兵衛に、それなら何になりたいかと聞かれ、「一度盗人になりたい。実際には出来ないので、もしも旦那が店の絵図面を書いてくれれば、それを見ながら盗人気分になってみたい」と清兵衛に言った。
平蔵配下の同心や密偵たちが、清兵衛のことを調べてきた。平蔵は弥吉が清兵衛に近づき、吉野屋に盗みに入ろうとしていると断定し、いっそう監視を厳しくした。
ある夜、平蔵らが張り込む中を、弥吉が吉野屋に忍び込んだ。清兵衛が絵図面を渡したのだ。弥吉は清兵衛の女房お里(紅萬子)の寝室に忍び込み、出て来たところを平蔵に捕らえられた。ところが、弥吉の懐から出てきたのは女の髪の毛だった。
吉野屋では、髪を根元から切られたお里が泣きじゃくっていた。眠っていて、気がついたらざんぎり頭になっていた。当時、髪は女の命。清兵衛は、事件をお上にも届けず、奉公人もお里の部屋に入れずに面倒を見た。気の強いお里が、めづらしく清兵衛の言うことを聞くようになった。
初めは吉野屋の金目当てだった弥吉だったが、清兵衛の気の毒な日常に同情して、とんだ盗みをしたのだ。こんな盗賊もいたのである。
牢に入っていた弥吉が呼び出され、平蔵の前に座る。弥吉は、平蔵に手打ちにされるのだと覚悟を決めた。刀を抜いた平蔵は、弥吉を縛っていた縄を切って放免した。数日後、弥吉は自ら戻って来て、密偵になることを受けた。それだけ平蔵に強く惹かれたのだ。