第5回 2005年11月10日(木)放送 あらすじ

逆襲

 お伝の方(小池栄子)に水風呂に突き落とされ、湯殿に閉じ込められた身重の安子(内山理名)は、お腹の子もろとも命の危険にさらされる。薄れゆく意識の中で、父母や夫の言葉が浮かぶ……「そなたは、生き抜け。……そなた自身と、そなたの子を守り抜け」。安子は母・阿久里の形見の簪で閂を開け、やっとの思いで湯殿の外に出たが、そこで意識を失った。
 音羽(余貴美子)に発見された安子は、そのまま産屋に運ばれ、綱吉(谷原章介)らの必死の励ましを受けながら、男児を無事出産した。
 男児は長丸と名付けられた。新たな世継ぎの誕生は江戸城・大奥を揺るがした。湯殿の騒ぎに不審を感じる右衛門佐(高岡早紀)は、お伝の方に、鎌をかけた。なぜなら、お伝の方が、その時湯殿の方から走り去るのを右衛門佐は見かけていたのだ。お伝の方は、その場をうまく言い逃れたが、右衛門佐にはお見通しであった。
 長丸は健やかに育っていった。綱吉は、安子と長丸の部屋に入り浸りとなり、安子は、信子(藤原紀香)にまで不興を買うようになる。
 そんなある日、安子とお伝の方が城内で出くわした。緊張が走る。安子が声を掛けた。「湯殿での出来事、どなたにも、申し上げるつもりはございませぬ。」それは「あなた様が、二人の御子の母君だからです」と。お伝の方は「言いがかりも大概になさいませ」と白を切るが安子は続けた。「石段で、草履の鼻緒が切れた時に一度。此度が二度目。三度目は無いものとお心得下さい」。お伝の方は目に涙をため「世継ぎは徳松じゃ!」と去り行く安子の背中に向かって叫ぶ。安子はそんなお伝の方を、ふと哀れに思うのだった。すると、そこに右衛門佐が控えていた。
 安子は、右衛門佐に事の次第を説明した。「私は子を産んで、むしろあの方のお気持ちも分かるようになりました。お伝の方様がかほどにお世継ぎにご執着しておられるなら、私はお譲りしてもよいと思うているのです」と。右衛門佐は、そう語る安子の中に、子どもを産んで、女性の幸せをしみじみ味わう母親の姿を見たのだった。
 一方、桂昌院(江波杏子)は長丸誕生を手放しで喜んだものの、安子と長丸の部屋に入り浸る綱吉の腑甲斐なさが気に入らない上、さらなる世継ぎを望むのだった。綱吉に「たまにはお伝殿を見舞うてやるがよろしい」と促す。渋々、お伝の方の部屋を訪れると、お伝の方は習いたての孟子を引用して、長幼の序の教えになぞらえながら、長男・徳松をお世継ぎにと、またぞろ懇願する。お伝の方のしつこい執着ぶりに、綱吉はとうとう堪忍袋の緒が切れ、部屋を出て行くのだった。
 綱吉の寵愛を得られずじまいのお伝の方をいい気味と高笑いする信子だったが、今が長丸をお世継ぎにするチャンスと安子をけしかける。しかし、安子は、長男の徳松を差し置いて、我が子・長丸をお世継ぎに推せば、あちこちで恨みを買うことになり、それでは親として忍びないと辞退する。それが道理と安子の意見に同意する右衛門佐。安子ばかりか、自分が大奥に引き入れた右衛門佐までもが安子側について、自分に逆らうとは……まさかの事態に、信子の心の中で尋常ならぬ嫉妬の心が芽生え始めていた。
 政治にも関心を示さず、母の目が気になって、安子と長丸のもとにも行き難くなった綱吉は暇を持て余していた。柳沢吉保(北村一輝)は、綱吉を再び染子(貫地谷しほり)のいる自宅へと誘った。染子は綱吉に抱かれた後、綱吉のいる閨で自殺を図ろうとした。あわやのところで助けられたが、柳沢は窮地に陥る。だが綱吉は、事件を不問にし「そなた悪い男じゃな。これ以上わしに罪を作らせるな」と言い残し去っていった。柳沢はひたすら自分への愛を貫く染子を不憫に思い、それから毎晩染子を抱くのだった。
 柳沢は、綱吉に打ち捨てられ、生気の抜けたお伝の方に近づき、こう囁いた。「危ないのは、長丸君のお年頃。この季節は、庭に落ちた青梅などお口にしようものならたちどころに毒に当たってお命を落とすこともございましょう」と。柳沢の示唆することに気づきはっとするお伝の方。お伝の方は徳松に言い聞かせ、青梅を長丸に食べさせるようそそのかすのだった。その絶好のチャンスが訪れた。一緒に遊ぶ徳松と長丸。鼓動を抑えながら見つめるお伝の方。その時、長丸が縁側から落ちて怪我をしてしまう。青梅を食べさせることには失敗したが、大騒ぎとなってしまった。
 見舞いに来た綱吉は、人と張り合うことを好まぬ安子の優しい心根に触れ、心休まるひと時を過ごす。また、お伝の方は、弟・長丸を心配する徳松を見て、複雑な気持ちになり、安子の部屋に長丸を見舞った。そこへ信子からの使いが来て安子を呼び出した。安子は長丸を侍女とお伝の方と共に部屋に残していくことを気にしつつも、信子の部屋に行くことにした。しかし、信子の部屋にはなぜか信子付きの中臈しかおらず、信子から長丸への贈答品を安子に選ばせようとするのだった。
 安子が離れたすきに、お伝の方の心にまた邪心が沸き起こる。侍女に用を言いつけ部屋を外させ、拾った青梅を長丸の口に突っ込んだ。喉を詰まらせる長丸。我に帰ったお伝の方は「吐き出しなされ!」と長丸の背中を叩くが、たまらず部屋を飛び出した。
 安子が部屋に戻ろうとすると廊下で信子に出くわす。「私も長丸君のお顔を見てと思い立ち、行き違いになったようです」と信子。二人そろって安子の部屋に入ると、なんと長丸が意識を失って倒れていた。
 そのころ、染子の懐妊が発覚した。染子に柳沢は「ようやった」と手放しの喜びようを見せるのだった。
 安子は長丸に駆け寄り取りすがるが反応がない。信子はそっとその場を離れる。茫然自失の安子。ふと庭に落ちた袱紗に目が留まった。お伝の方のものである。中には食べかけの青梅。お伝の方の仕業と確信する安子の目に炎が……。しかし、安子の知らぬところで高笑いしている人物がいたのだった。

キャスト

内山理名
谷原章介
小池栄子
高岡早紀
北村一輝
貫地谷しほり
  ・
田辺誠一
平泉 成
  ・
余 貴美子
  ・
江波杏子
  ・
藤原紀香

スタッフ

■脚本
 浅野妙子

■演出
 川村泰祐

■音楽
 石田勝範

■企画
 保原賢一郎

■プロデュース
 林 徹
 手塚 治
 樋口 徹
 金丸哲也

■製作
 フジテレビ
 東映

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