第3回 2005年10月27日(木)放送 あらすじ

仇の子

 安子(内山理名)が綱吉(谷原章介)の子を身ごもったことで、大奥での安子の位置は大きく上がり、綱吉のひいきはさらに強くなった。それに伴い安子の苦しみは大きくなるのだが、怪僧・隆光(火野正平)から「安子の子は男子」という卦を聞いた桂昌院(江波杏子)は、世継ぎがお伝(小池栄子)の子だけでなくなるので、上機嫌である。そんな折、綱吉は、隠居していた安子の父・成貞(平泉成)を側用人の筆頭に取り立てた。成貞が上席職になったことは、これまで綱吉の覚えめでたく異例のスピードで出世してきた柳沢吉保(北村一輝)のプライドをいたく傷つけた。
 柳沢は自分の側室・染子(貫地谷しほり)を綱吉に差し出すことによって、失地回復を目指すことに。自邸で綱吉を招いた宴を催し、染子に因果を含め、綱吉と閨をともにさせたのだ。自らの出世のため、自分で仕掛けたこととはいえ、柳沢の胸のうちに綱吉への復讐心が芽生えていた。
 すでにお世継ぎ候補の長男・徳松を産んでいるお伝(小池栄子)は、安子の存在がいまいましくて仕方がない。このままならば「次の将軍の母」の座は確定しているのに、もし安子が男子を産めば、今の綱吉の安子への寵愛ぶりからすると、その座は危ういものである。慌てて桂昌院に「上様のお墨付きを。長子徳松が世継ぎというご誓詞を」と懇願する。しかし、「身分卑しきそなたをここまでお引き立ていただいた大恩をお忘れか。そなたが口を出すことではない」と桂昌院に一喝される。
 その点、御台所・信子(藤原紀香)は、安子妊娠を自分の権勢を拡充する願ってもないチャンスととらえ、安子に近づく。「私と組めば、筋道正しい大奥にすることが出来ましょう」と安子の手を握るが、安子は「産みとうて、上様の子を産むのではありませぬ。人を出し抜き、争いの渦中に身を置くことは…」と拒絶しようとする。すると、信子により「そなたは甘い。この大奥では、人に笑われて泣き寝入りするか、勝って笑うかのどちらかなのじゃ!」と安子は喝破されてしまう。
 そして、強引に連れ出され、京都から訪れた常盤井の局(高岡早紀)と信子の面会に同席させられる安子。美しく聡明な常盤井に、信子は自分を助けるため大奥に入ってほしいと誘う。常盤井は「御政道の由々しき有り様、綱吉公は暗愚」と歯に衣着せぬ物言いで安子は呆気に取られる。信子が出す条件を吊り上げながら、常盤井はとうとう桂昌院より上の“大奥総取締”の地位を要求するしたたかさをみせる。常盤井の局に提示した条件を綱吉に認めさせるため、信子は安子に命じるように言った。「そなたの出番じゃ。私の代わりに上さんを口説いては下さらぬか」と。迷う安子。
 部屋に戻り、安子は音羽(余貴美子)に問うた。「御台所に呼ばれた向きも分かっていよう。そなたなら如何する」。音羽は「私は武芸を嗜みますが、決闘の場においては、勝つことは即ち生きること。この大奥は武芸者の闘いの場にも劣らぬ優勝劣敗の場と心得まする」と言い残し、去って行った。
 不安の募るお伝は、とうとう綱吉に直接、世継ぎのお墨付き話を持ち出した。綱吉は世継ぎを決めるなど、まるで自分が早死にするかのような不吉な話と怒り「そなた、やはり生まれが生まれじゃな」と吐き捨てる。お伝の方の苛立ちは限界に達していた。
 柳沢はそんなお伝の様子を見て、こう囁くのだった。「お伝の方様、お辛さお察しします。私も上様の厚情により今日がありますが、古株の重臣の方々からは事あるごとに柳沢の奴めがと、あげつらわれます。似た身の上にございます」と同情を見せたうえで、「安子様のご懐妊祝いの宴のお庭は滑りやすい石段などもございます。間違いなど起きはせぬかと案じております」とお伝の方をたきつけるのだった。
 そして吹上の御庭で催された安子の懐妊祝いの宴席。綱吉は成貞を呼び、滑稽な踊りを舞わせる。安子は、喜々として側用人に復職し気弱に道化を演じるように見える父に我慢ならなかった。何のために母や夫が死んだのか。嫌悪感にいたたまれず、安子はその場から走って逃げ出すのだった。
 安子は心配する成貞を避け、揺れる心のまま、庭を歩く。すると、お伝の方が声を掛けてきた。下の庭にきれいな牡丹が咲いている、と言う。安子は言葉に従い、石段を降りようとしたその時、鼻緒が切れ石段が崩れる。転がり落ちそうになる安子。それを見ていた成貞が身を挺して安子を抱きかかえ、庇いながら二人して転落してしまう。痛みに苦しみながら、成貞は安子に文を見せた。それは自害した安子の母・阿久里から成貞に当てた遺言であった。そこには「安子にだけは災いの降りかからぬよう、御身に代えてお守り下さいませ」と懇願してあった。成貞が口を開いた。「今のわしにできることはそなたの命と立場を守るだけ。そなたのためなら鬼でも蛇でもなる。わしのことは恨むがよい。なれどその命、阿久里とそなたの夫・成住が身を捨てて守った命であること、ゆめゆめ忘るるな」と。安子は父の言葉を聞き、母と夫の死を無駄にはできないとあらためて強く自覚したのだった。
 強くなることを心に誓う安子。お伝の方に対しても「今一度、同じようなことが起こりましたなら、上様にお願いし、大奥の厄払いをしていただく所存」と、今までにない気概で忠告をするまでになる。さらに、綱吉に微笑みかけながら「京の御所に常盤井という御才女がおられます」と進言するのだった。
 後日、大奥に新たな火種となる人物がお目見得した。その凛とした美女とは常盤井あらため右衛門佐であった。

キャスト

内山理名
谷原章介
小池栄子
高岡早紀
北村一輝
貫地谷しほり
  ・
平泉 成
火野正平
  ・
余 貴美子
  ・
江波杏子
  ・
藤原紀香

スタッフ

■脚本
 浅野妙子

■演出
 林 徹

■音楽
 石田勝範

■企画
 保原賢一郎

■プロデュース
 林 徹
 手塚 治
 樋口 徹
 金丸哲也

■製作
 フジテレビ
 東映

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