第10回 2005年12月22日(木)放送 あらすじ

乱心

 安子(内山理名)が綱吉(谷原章介)に、吉里を綱吉の子であると偽った柳沢(北村一輝)への処分を迫っているまさにその時、染子(貫地谷しほり)死去の報が飛び込んできた。柳沢の手に掛けられながらも、染子は「吉里の出生疑惑の無念を死んで晴らす」旨の遺書を残しており、意に感じた綱吉は、柳沢の子と知りながら、吉里出生について異を唱えぬよう臣下らに厳しく言い渡すのであった。それを以って大奥にも平安な日常が戻ったように見えた。
 そんな中、お伝の方(小池栄子)が安子を徳松の墓参りに呼んだ。お伝の方は、目に涙をため「お許しくだされ」と長丸に青梅を口にさせたことを謝ると、安子は手を取り、「あなた様は御子を亡くされ、十分に苦しまれた。私も同じ苦しみを嘗めました。責めを負うべきは、あなた様ではございません」と許すのだった。「すべてを失うた今、惜しいのは帰らぬ命だけ。人を慈しみ、子を慈しんで生きるよりほかに、おなごにどんな生き方があろう」とお伝の方は涙を流す。
 また、安子は信子(藤原紀香)の部屋にも呼ばれた。右衛門佐(高岡早紀)は「世にはびこる悪政の元凶は柳沢。上様の優柔不断なご性格が、柳沢のような悪人を跋扈させ、染子殿を死に至らしめたのです。このままにしておけば、おなごが泣く世は終わりになりませぬ」と安子に迫る。信子は、毒薬を安子に手渡し、再び綱吉毒殺を指示する。だが、人を殺めるよりも先に綱吉を説得すべきと、今回安子はきっぱりとそれを断った。信子は怒りで胸の発作が起きてしまうほどである。すると、突然襖の外で声がした。「そのお役目、私にお任せください」。なんと大典侍(中山忍)である。驚く一同。大典侍は続けた。「私が上さんの御子を生み、世継ぎになれば、万事治まりまする」と言う。「たわけたことを」と信子はますます激昂するが、大典侍は子どもを身ごもったことをほのめかし、周囲を唖然とさせるのだった。
 いよいよ嫉妬で狂気じみてきた信子は、その夜、大典侍の部屋の外廊下にロウを塗るという狂気の沙汰に及ぶ。「転んで腹の子もろとも死ねばよいのじゃ」。憑かれたようにロウを塗るうち、足元に置いた灯火が倒れ、床や着物に燃え移ってしまった。信子は大火傷を負った上、持病も悪化し病床に臥すことに。
 安子が大典侍に妊娠を確認すると、大典侍は「御台さんがあんまりお高う止まっておいでなので慌てるお顔を見とうなっただけです。ご自分に御子のないのが余程お悔しいのでしょうなあ」とまたもや大胆発言。「あの方のなさること、ただのいけずではないようや」と信子の尋常ならざる執念に思い至らせるのであった。
 大奥の乱れはすべて柳沢のせいであると考える安子は、再び綱吉に直談判した。だが、綱吉はこう言うのであった。「愛しいおなごを死に追いやってまで、あの男が手に入れたいものは何か。わしにはない執念があの男にはある。行く末を見届けたい」と。安子はらちが明かぬと「成住(田辺誠一)も柳沢様に捕らえられております」と柳沢の背信を明らかにする。綱吉の顔色が変わった。「二度とその名を口にいたすな」。綱吉は、怒りとやるせなさを混ぜながら、去っていくのであった。
 綱吉はその足で信子を見舞った。信子は余命幾ばくもないので側を離れたくないと綱吉にすがり、口移しで薬を飲ませてくれと懇願する。綱吉は願いをかなえてやろうと、信子から薬包を受け取った。それは、あの毒薬であった。水をふくみ薬を口に入れる綱吉。それを見届けると信子は不意に綱吉の口を手で塞いだ。「お飲み下さいませ。これは毒じゃ」。綱吉は薬を吐き出すが、力が抜けてくる。「お苦しみになるがよい。独り寝の日々は地獄にございました。長丸を殺めたのもこの私です。柳沢がこれを使えと渡して下さいました故」。綱吉は愕然とした。「吉保が!?」。信子が「一緒に死んで下さいませ」と言うや綱吉は意識を失った。ようやく上様が自分のものになったと動かなくなった綱吉を抱きしめながら、信子は残った薬を飲み干した。
 信子は亡くなり、綱吉は生死をさまよう日々が続いた。そんなある日、音羽(余貴美子)は柳沢の邸に忍び込み、幽閉されている成住に接触した。音羽は、「このまま座していては、柳沢様の天下が来てしまいます」と言い成住に懐刀を手渡すのだった。
 柳沢が座敷牢にやってきた。様子がおかしいと、中に入る。倒れている成住に気付き手を取ろうとする瞬間、成住が懐刀を振りかざした。「安子には指一本触れさせぬ!」。よける柳沢。二人はもみ合いになった……。
 江戸城ですれ違った柳沢の足袋を安子が振り返り見ると小さな血痕が……。「成住様はご無事か」。胸騒ぎのする安子は尋ねた。「その方は上様の御下知にてお命を頂戴しました」と柳沢。声も出ない安子。部屋に戻り、安子は泣きじゃくるばかりであった。
 奇跡的に綱吉は快癒した。柳沢は政務を仕切り、再び以前と変わらぬ江戸城が戻って来た。綱吉全快の祝いの宴が庭園で催されることになった。そこで、綱吉は安子を一人だけにして語り始めた。「将軍職を退こうと思う」。綱吉は寂し気である。そこへ、柳沢が迎えに来た。安子は懐刀を取り出すや「夫の仇」と柳沢に斬りかかった。手をひねり上げる柳沢。「よせ」と割って入る綱吉の体に刃先がめり込んだ。綱吉はその刃をさらに自分に突き立てた。崩れ落ちる綱吉。縋り付く安子。そして立ちすくむ柳沢。綱吉は柳沢に言う。「これがそなたのしたかったことであろう。長丸を手にかけた。それだけが余計じゃった」。それから安子に向き「こやつの毒で長丸は死んだ。毒を飲ませたは御台であった。その恨みを育てたのはこのわしじゃ。許せ、安子」。瀕死の綱吉は続けた。「生まれ変わったらそなたと夫婦になりたい。いや、花になりたい。そなたの手で、手折られて散りたいものじゃ」。そう言って綱吉は絶命した。そこへ家臣が到着した。安子は、邪悪なものが消えた柳沢の様子を見て「上様は自害なさいました」ととっさの判断で言い、柳沢には「生きて償っていただこう」と申し渡した。
 新たな将軍が江戸城に入り大奥に新しい時代の幕が開いた。柳沢は染子の思い出に浸りながら逼塞し、落飾した安子は音羽と共に尼寺に向かうのであった……。

キャスト

内山理名
谷原章介
小池栄子
高岡早紀
北村一輝
中山 忍
貫地谷しほり
  ・
田辺誠一
火野正平
  ・
余 貴美子
  ・
藤原紀香

スタッフ

■脚本
 浅野妙子

■演出
 林 徹

■音楽
 石田勝範

■企画
 保原賢一郎

■プロデュース
 林 徹
 手塚 治
 樋口 徹
 金丸哲也

■製作
 フジテレビ
 東映

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