第1回 2004年7月8日(木)放送 あらすじ

#1 遠い橋・ある異邦人の死

 若者が集まる六本木のクラブに警察の手入れがあった。そのクラブで麻薬の売買が行われていたのである。売人が逃げた。予想外にも銃を持った者までいる危険な状況。しかし、そこに立ちはだかった男がいた。所轄の刑事、棟居弘一良(竹野内豊)である。激しく抵抗する売人を取り押さえ、棟居は執拗に痛めつけた。署に戻った棟居に辞令が下りる。本庁捜査一課への異動だ。栄転だった。普段は紳士的な棟居だが、いざ犯人を追いつめる段になると異常な執念を燃やす。そのため、時に暴走することもある剥き出しの刃物のような男。それが上層部には正義感の現われと捉えられ、本庁捜査一課に引っ張られたのだ。捜査一課係長、那須英三郎(緒形拳)も棟居に期待している。
 そんな時、お台場で、一人の外国人青年が殺された。胸には鋭利な刃物で刺された傷があり、海浜公園から伸びる長い陸橋を歩いて渡ってきた様子。棟居は所轄署のベテラン刑事、横渡篤(大杉漣)と組んで、この事件の捜査に乗り出す。しかし、捜査は難航。黒人青年は長い陸橋の出入り口辺りで倒れていた。傷を負った状態で長い距離を歩いたとは思えないため、犯行現場は陸橋の上と推定。しかし、出入り口付近にいた目撃者たちは、黒人青年以外の人物を見ていない。つまり、陸橋から犯人らしい人間が下りてきた形跡は無く、事実上の『密室状態』。被害者は所持品もなく、身元も分からない。たったひとつの手掛かりは、死ぬ間際に「ストーハ」という言葉を漏らしたのを通行人のカップルが聞いていたこと…。「ストーハ」。このダイイングメッセージは、何を意味するのか?

 その頃、世間では三カ月後に迫った神奈川県知事選の話題で持ちきり。エッセイストの郡恭子(松坂慶子)が立候補を表明したからだ。恭子は家庭内のささいな事柄をテーマにしたエッセイが主婦層に受け、理想の主婦像ナンバーワンに選ばれるほどの有名人。夫の郡陽平(鹿内孝)は民自党の大物で神奈川県知事だったが、半年前に脳梗塞で倒れ、現在は入院生活を余儀なくされている。その陽平に成り代わっての立候補。陽平の有能な秘書、佐伯友也(田辺誠一)が、引き続き恭子をサポートしている。
 小山田武夫(國村隼)は悶々とした日々を過ごしていた。小山田は合成ゴムの加工工場を経営していたが、三年前、崩れてきた資材の下敷きになり、下半身不随に。以後、車椅子生活。働けなくなった小山田の代わりに、妻の文枝(横山めぐみ)は銀座のクラブでホステスを始めた。ところが、最近、どうも男の影がちらつく。文枝は単なる客だと言うが、小山田にはそうは思えない。小山田が男として不能になったのと反対に、文枝は日増しに美しくなっている。それが気に入らない。いつか突き止めてやると小山田は暗い炎を燃やしていた。事実、文枝には、新見隆(風間杜夫)という会社役員の愛人がいた。
 クラブの警察の手入れから、翔平(高岡蒼佑)と路子(松下奈緒)は運良く逃げ出していた。つい数日前知り合った二人は、小遣い稼ぎに売人の手伝いをしていた。翔平の素性はよく分からない。二人は、逃げる際に売人から預かった麻薬と拳銃の処分に困り、不法投棄のゴミで溢れた崖下に投げ捨てることにした。しかし、ある女に目撃されてしまう。翔平はとっさに女を捕まえ、車に押し込んだ。その女は文枝だった。
 被害者が、ビジネスホテルに宿泊していたことが判明。宿泊者リストによると、彼の名前はジョニー・ヘイワード。そして、殺される1時間ほど前に、帽子やアクセサリーの陳列されているショッピングセンターで目撃されていた。何も買わずに店を出たという話だが…。棟居が捜査に訪れると、ショッピングモール内の書店では、恭子のサイン会が行われていた。棟居と恭子、二人の視線が重なったそのとき、棟居は後ろから肩をたたかれた。本宮桐子(夏川結衣)だ。桐子は女性週刊誌の記者で、恭子を取材中。棟居と桐子は共に幼いときに両親を亡くし、施設で育った幼馴染み。棟居は子供の頃のある体験から、人間不信に陥り、人間や社会に対して復讐したいと心のどこかで思っていた。桐子も棟居の過去は知っている。知っているからこそ心配なのだが、棟居にとってはありがた迷惑。桐子は、ジャーナリストを夢見ているが、今は芸能人のゴシップばかり追っているのが実情。嫌気がさしたところに、恭子の取材という仕事が入ってきたため、やる気満々だ。
 棟居は、ジョニーが殺害された現場を再度検証。その時、遊園地に照明がついた。何気なく見上げた棟居は…。

キャスト

棟居弘一良 … 竹野内 豊
本宮桐子 … 夏川結衣
横渡 篤 … 大杉 漣
佐伯友也 … 田辺誠一
翔平 … 高岡蒼佑
小山田文枝 … 横山めぐみ
路子 … 松下奈緒
相馬晴美 … りりィ
郡 陽平 … 鹿内 孝
郡 さやか … 堀北真希
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那須英三郎 … 緒形 拳(友情出演)
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新見 隆 … 風間杜夫(特別出演)
小山田武夫 … 國村 隼
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郡 恭子 … 松坂慶子

スタッフ

■原作
  森村誠一「人間の証明」(角川文庫1976)
■脚本
  前川洋一
■プロデューサー
  鈴木吉弘
■演出
  河毛俊作
■音楽
  岩代太郎
■制作
  フジテレビドラマ制作センター

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