<第10回> <第11回> <第12回>


<第10回>
 「例え本当に悪い人でも信頼し合う」。心で結ばれた有明(三上博史)と藍(広末涼子)。藍は幸せいっぱいだった。
 光を失ったまま千尋(麻生祐未)は退院した。マンションに送ってきた有明に、千尋は一緒に暮らそうと言う。光を失ったからこそ言える言葉だった。有明は藍を裏切ることになるが、千尋と暮らす覚悟を固めていた。
 有明と藍の面談。話は二十一世紀について広がっていった。「時代が進み、美的感覚も皆同じになるのじゃないかナ。そうなれば、差別もなくなる」という有明の話に、「皆、火星人みたいに同じになる?。そうしたら、先生が見分けられなくなる」と藍の心は不安でいっぱいになる。少女の気持ちは、些細なことで大きく揺れるのだ。
 そのころ、鑑別所の大食堂で騒ぎが起きた。紘毅(窪塚洋介)の指令で、男子が安奈(中村愛美)を取り囲み、教官らと押し問答が始まったのだ。男子らの輪の中央に、安奈と紘毅。久しぶりに二人きりになり、紘毅は安奈に「愛している。今度の雨の日に流れよう」と指示を出す。紘毅は自分の呪縛から逃れつつある安奈を試したのだった。「雨の日に流れよう」。一緒に死のうという意味だった。安奈は、紘毅の指示の意味が分かっていた。
 この騒ぎを孝生(いしだ壱成)は紘毅の焦りと分析。しかし、雪乃(田中美奈子)は、特別な意味があると直感し、紘毅が安奈に何を言ったのか気になっていた。恵理子(伊藤歩)ら同じ集団室の少女達も何をされたのか気になり、安奈を問いただすが「私はもう大丈夫」と安奈はあっけらかんとしている。恵理子や真白(池脇千鶴)らは安心するが、藍は何か腑に落ちなさを感じていた。
 有明は千尋の面倒をみる生活を始めていた。ある夜、有明は「兄に紹介されたときから、あなたを自分のものにしたかった」と告白する。藍の絵を描き始めた有明だったが、心の中では藍とは少年審判の日までの関係にして、それ以降は千尋と暮らそうと考えていた。
 雪乃に頼まれ、有明は紘毅と話し合った。「安奈には指一本触れてない」と指摘した有明に、紘毅も関心があったらしく、いろいろ答えるのだった。「あらゆる結末が悲劇で終わる」自分は哲学者だという紘毅は有明に、安奈に「最後の審判を伝えただけ」と話す。「最後の審判って?」。有明の心に引っかかるものがあった。
 そして、激しく雨の降る日。恵理子らが寝静まった鑑別所の集団室の格子に引き裂かれたタオルでつくられたひもが掛かっていた。そのひもに首を掛けようとする安奈の姿。涙を流しながら、ふるえている安奈。紘毅の指示を実行しようとしていたのだった。

<第11回>
 「みんなが同じ顔になっても、僕は一番近くにいる」。有明(三上博史)の言葉が藍(広末涼子)は嬉しかった。藍の心の中では、有明と二人だけの時が刻まれていた。  安奈(中村愛美)が自殺未遂を起こしたとき紘毅(窪塚洋介)が平然と寝ていたと知り、孝生(いしだ壱成)は憤然とする。女を犠牲にしてノウノウと生きている奴は許せない。孝生は興奮して紘毅を殴りつけた。殴りながら、自分の子どもの頃の劣等感を思い出した孝生は、不敵な笑いを浮かべる紘毅を意識がなくなるのも分からず、容赦なく殴り続けた。
 理由の如何を問わず、鑑別所教官の暴力は許されない。懲戒免職手続きのため孝生が謹慎させられ、小鳩(真柄佳奈子)の担当が審判直前になって丸川(山崎大輔)に替わった。
 丸川と小鳩が面談している頃、有明は紘毅に会っていた。孝生が鑑別所教官に向いていると感じた有明は、確かに暴力は許せないが、穏便な処分にして欲しかった。有明は紘毅の希求した、愛し合いながらも肉体を求めず、精神でつながる男女関係について紘毅と話をしていて、ふと藍のことを思い出した。
 小鳩がなかなか面談室から戻らず心配な藍たち。小鳩は不潔な丸川に対し椅子を投げつけてしまったのだ。
 格子越しに集団室の藍と有明が話していると、藍は光を失った千尋(麻生祐未)と一緒にいるのかと、有明に聞く。有明が隠せないでいると、藍の瞳から涙が流れ落ちた。「同情で一諸にいちゃだめ。また私、独りぼっちになってしまう」。藍の言葉に、有明の心が曇った。
 小鳩は、最終面談で椅子を投げたため、教護院に送られることになった。一方、母のために早く出たいと言っていた真白(池脇千鶴)は、母親から「泥棒猫」となじられていた。真白の妊娠の相手が自分の男と分かったためだった。ショックを受ける真白。その真白の審判の日も近い。
 有明は藍のアパートで吉岡(堀真樹)に会った。転勤して、結婚するという吉岡。有明は以前「自分が愛する分、それだけ相手から奪う」と藍について話した吉岡に、「それが藍。藍の愛の深さ」と話す。有明は、藍によって人生観を変えられていたのだ。それは、藍の絵を描く姿勢にも少しずつ現れていた。
 そのころ、千尋は画商小泉(夏八木勲)から「絵を描いていたのは死んだ兄でなく、有明ではなかったか」という話を聞いていた。信じられない思いの千尋だが、有明の藍の絵から、小泉は確信をもったようだ。
 紘毅は孝生を訴えず、孝生はまた鑑別所教官を続けられることになった。
 真白は審判で保護観察処分を受けた。真白が自宅に戻ると母親は迷惑そうだった。あんなに母のことを考えていた真白なのに。鑑別所の外では、真白に過酷な現実が待っていた。

<第12回>
 鑑別所の調査室でうち解けて話し合う有明(三上博史)と藍(広末涼子)。有明は誰にも気づかれず兄に代わって絵を描くことで「父を見下したかった。千尋(麻生祐未)を奪いたくなり、それまでのことを公表すると兄を脅した」など、これまで誰にも言えなかったことを藍に話した。藍も「弟のシュウがすごく好きだった」と話す。永遠の関係のようにみえる二人。しかし、二人は別れの予感も感じていた。
 有明が藍を促し集団室に戻ろうとすると、孝生(いしだ壱成)がかけてきて「真白(池脇千鶴)が死んだ」と言う。マズイと思う有明だが、藍もしっかり耳にした。
 孝生に殴られ入院中の紘毅(窪塚洋介)が、雪乃(田中美奈子)と面談していた。安奈(中村愛美)の洗脳を解こうとした孝生の努力に影響されたのか、紘毅は初めてその謎に満ちた胸の内を話すのだった。
 恵理子(伊藤歩)らは真白の死を知り、葬儀に出席させろと騒ぎ出す。長い会議の末、有明らの強い意見で藍らは葬儀に出席できるようになる。教護院に収容されていた小鳩(真柄佳奈子)も現れ、四人は元気だったころの真白のことを思い出すのだった。引き上げようとした瞬間、藍は恵理子を制し事件を起こしてしまう。有明も「子どもを生んだのなら母親になれ」と真白の母を叱責してしまう。
 そしていよいよ家庭裁判所で藍の裁判が始まった。


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