第2回 2004年2月10日(火)放送 あらすじ

#2 秘密

 秋山大治郎(山口馬木也)は、滝口友之助(美木良介)という少し年上の浪人と知り合った。剣の腕は立ちそうで人柄も好ましい。お互いに好感は持ったものの、深いつきあいにはならずに半年が過ぎた。
 食道楽の秋山小兵衛(藤田まこと)はこのところ、「古宿」という小さな飯屋に通っている。阿武隈川近くの矢吹の郷土料理で、岩魚の骨酒や大根蕎麦がうまい。
 大治郎は野次馬が見守る中で、町娘をいじめる三人の浪人を、刀も抜かずに片付けた。身なりのいい中年の侍・宮部平八郎(寺泉憲)が大治郎の後を追い、訳を聞かずに五十両で人を殺してくれと頼む。そんな申し出を受ける大治郎ではないが、相手が滝口友之助と聞いて引き受けた。三冬(寺島しのぶ)には、「自分が断れば別の者を探す。あの人を斬る気はない」と言った。
 翌日大治郎は、浅草の蕎麦屋で宮部と再び会い、二十五両を受け取る。残りは事が成就してからとした。宮部の後を、弥七(三浦浩一)と傘徳(山内としお)が尾行した。
 この後大治郎は、事情を聞くつもりで友之助の家を訪ねたが、家の前で刺客に襲われ撃退した。友之助と間違えたようだ。
 宮部は福島の三万五千石板倉家の上屋敷に入った。大治郎は弥七に、今度は友之助を見張るように頼む。この一件を小兵衛には話していない。だが友之助をつける弥七が「古宿」に行き、小兵衛に発見されたことで、知るところとなった。
 「古宿」の板前の政吉(蟹江一平)に料理を教えたのは友之助だった。友之助は店で働くみよ(森香名子)といい仲になったが、急に友之助の方から別れ話が来て、政吉と一緒になれとみよに言った。友之助は、しばらく旅に出てもう帰らないとも言った。
 小兵衛は友之助に話しかけ、酒を酌み交わす。「名も知らぬ者が同じ料理に舌鼓を打つ。人生は味わい深い」と小兵衛は言うが、友之助は、「人生は空しい。それでも故郷の味が江戸に残れば満足。私の一生はそれだけのことだった」と寂しそうに言う。
 五日目の夜、傘徳が友之助をつけて寂しい木立を行くと、突然白刃がぶつかる音と絶叫が聞こえた。傘徳はすぐ「古宿」にいる秋山父子に急を伝えた。現場では二人の武士が斬られて死んでいた。そのまま友之助の家に着いた父子は、異変を感じた。
 室内で友之助が切腹して果てていた。脇差を添えた大治郎宛の遺書があった。事情があってさる大名家を出奔したが、何度も追っ手に襲われた。その度に、同じ録を食んだ人々を討つことが苦しくなった。貴殿までもが襲われたのを見て、もう決着をつけねばと思った。そう書かれていた。身辺を整理しての潔い死に方だった。
 大治郎は宮部に会い、金を返した。友之助が切腹したことを聞いて宮部は絶句した。友之助の遺書を見せられて、やっと宮部が事情を語った。友之助と宮部が仕える藩主は名君と言われたが、病的な女好きだった。ある時、友之助の弟の許婚に目をつけてこれをはずかしめた。女は自害。弟も後を追った。友之助は奉公人たちに金を与え、自らは出奔した。三ヵ月後、友之助は鷹狩に出た藩主の一行に単身斬りこみ、藩主を討ち取った。公儀には不慮の落馬と届けられたが、以来友之助は刺客に追われる身になった。この四年間に藩士六人、雇った浪人三人が返り討ちにあっていた。宮部は用意した五十両全額を、友之助の回向のために寺に寄進した。
 「それにしても、名君と言われた人になぜそのような病気(やまい)が」と、大治郎は小兵衛に、藩主の女癖のことを聞く。「病気ではなく、秘密(かくしごと)だ。人にはそれぞれ秘密がある。それが表に出れば、病気になる」と答える小兵衛である。

キャスト

秋山小兵衛 … 藤田まこと
   ○   ○
秋山大治郎 … 山口馬木也
三冬 … 寺島しのぶ
おはる … 小林綾子
四谷の弥七 … 三浦浩一


滝口友之助 … 美木良介
政吉 … 蟹江一平
みよ … 森 香名子
宮部平八郎 … 寺泉 憲

田沼意次 … 平 幹二朗
ほか

ナレーター:橋爪 功

スタッフ

■原作
  池波正太郎
■脚本
  野上龍雄
■企画
  能村庸一
  武田 功
■P
  保原賢一郎
  佐生哲雄
  足立弘平
■美術監修
  西岡善信
■監督
  石原 興
■音楽
  篠原敬介
■制作
  フジテレビ
  松竹

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