“愛”をテーマに数々の問題作を送り出してきた、東海テレビ制作・フジテレビ系お昼の連続ドラマ。最近は、取り上げる“愛”の形は違えども、ヒロインの数十年に及ぶ半生を、その因果応報やセンセーショナルな出来事を通じて劇的に描いていくという“大河ロマン”的な作品が視聴者に受け、「ありえない！」と思わず叫びたくなるような展開が主婦のハートをわしづかみにしてきました。しかし７月の新ドラマの登場人物は、何の因果にも運命にも左右されない普通の人たち。但し、人間関係の危ういバランスが崩れた時、なんの変哲もないはずの日常に、あり得ないような愛憎劇が生み出されます。むしろ今までの“架空”と思っていたヒロインより自らに近い分、ハラハラドキドキの展開が待っています。原作は石川達三（1905～1985）の昭和36年（1961）の新聞小説「僕たちの失敗」。この作品は、それまでの伝統が否定され、人々が未来に夢を見られなくなっていた時代に、純粋な愛を求めた若い夫婦の物語。しかし当時は刺激的だった契約結婚という言葉も、現代では結婚は生き方の選択肢の一つでしかなくなり、その形もさまざまで当たり前に受け止められるようになっています。しかしそこは東海テレビ。時代設定を現代に置き換えて翻案し、人間関係の中で疑心が疑心を生み出し、契約結婚が周りの人たちを巻き込んで悲劇と愛憎を生み出していくという濃密な人間ドラマを描いていきます。