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<第4回>
 その日はシンポジウムがあると言うのに、陣平(田村正和)は寝坊してしまった。おまけにシンポジウムには必ず着るというカシミアのジャケットも見当たらない。夕べ、遅くに帰ってきた寺西(草なぎ剛)に「お前のせいだ」と当り散らしながら大学へたどり着いた陣平は、正門でヒロ(合田雅吏)の車で送ってもらった美久(松たか子)と鉢合わせしてしまう。
 結構親しそうな二人を見た陣平は完全に機嫌を損なってしまう。
真理子(高島礼子)、石塚(宇梶剛士)を連れ会場へ入った陣平。だが真理子は、ここで思いかげず別れた夫・原田(渡辺成紀)と再会してしまった。フッ切ったはずの昔を思い出して動揺する真理子。そんな真理子の話を聞いて、飲みに誘う陣平と三田村(森本レオ)だった。
 一方寺西は、美久に頼んで一緒にジャケットの行方を探してもらっていたが、それはクリーニング屋に出したままであることが判明。寺西には美久に言わなければならないことがあった。それは、ヒロとの交際はやめた方がということ。
 なぜ?と迫る美久に「男として信用できないタイプ」と寺西は理由づけしたが、それは美久を怒らせてしまう。「そういう風に人の事とやかく言う人、最低!」と美久に言われて、寺西はとことん落ち込んでしまう。本当は、ヒロの店でバイトしているマキ(林希)から、ヒロには同棲してる彼女がいることを聞かされたから、傷つく前に忠告しておきたかったのだが…。
 数日後。大学構内で美久はいきなり見知らぬ女に平手打ちを食らった。突然のことにびっくりの美久、慌てて止めに入る寺西。その女は「私、ヒロと一緒に暮らしてるの」と言い、続けて現れたヒロ。寺西には「自分のやっていること解っているのか?」ヒロに掴みかかっていった。

<第5回>
 ヒロ(合田雅吏)の所から美久(松たか子)が帰ってくることになった。そわそわと落ち着かない陣平(田村正和)と、腕によりをかけ歓迎の食卓を用意する寺西(草なぎ剛)。その夜は久々に3人そろっての賑やかな食事になった。
 しかし、この食事で陣平、美久は食あたりをおこしてしまい、翌日雑誌の原稿締切りを抱えていた陣平は、苦しみながらワープロの前にしがみつくことになったのだ。
 責任を感じた寺西は陣平を訪ねるが、ここでまたもやワープロのコードに足を掛け、書き上がっていた原稿を台無しにしてしまうという大失態を演じてしまった。完全にキレる陣平。「君が来てからろくなことがない。スミマセン、申し訳ありませんとしか言わないし…」。何も言えない寺西。「一度君に言おうとおもっていたが、君はなんのためにここに来たんだ?ここに来て自ら進んで学ぼうとしたことがあったか?」。「ウッ…」青白い顔の寺西は腹を押さえてうずくまりかけた。
これを見て陣平は、「腹の調子は僕だって悪いんだよ」と言ったが、実はこの時、寺西は盲腸で、早急に手術をしなければ危ない状態だったのだ。
 結局、寺西は病院のベッドで、美久の手厚い看病をうけての入院生活という事になってしまった。美久は、陣平に言われたことを気にし続ける寺西を看病し励まし、陣平に取り成してみることを約束するのだった。
 一方陣平は、別れた夫からの度重なる電話に悩んでいる真理子(高島礼子)の様子を見て取って、さりげなく食事に誘う。「会うのはやめなさい。人生には辛くても断ち切らなければならないことがある。君はもう新しい人生を歩み始めているんだから、ボクたちと…」と優しくいうのだった。
 寺西が退院する日が来た。しかし、美久が病院に迎えに行くとすでに寺西の姿は無い。真っ先に研究室の陣平に知らせ、心あたりを探し始める美久。 陣平は、「ほっときゃ戻ってくるだろ」とたかをくくっていたが、石塚(宇梶剛士)の「アイツ、変に思い詰めそうだから……」という一言を聞くと、急に不安になり、研究室を飛び出して行った。

<第6回>
 美久(松たか子)が寺西(草なぎ剛)から「好きです」と告白された夜、陣平(田村正和)は、目に涙をため思い詰めた表情の真理子(高島礼子)の訪問を受けていた。真理子は、別れた夫・原田が、会社で進めているプロジェクトに陣平に参加してもらいたいと、真理子を介して要請してきたことを打ち明けた。真理子のただならぬ様子は、それだけのせいではなかった。真理子は、原田が慰謝料を値切ってきたことを話した。仕事の話しでもしなければ慰謝料の話しをするとことができなかった原田のことを情けなく思い、そんな原田に振り回される自分自身をも腹だたしく思うのだった。
 一方、美久にやっと気持ちを打ち明けることができた寺西は、今度は映画にでも美久を誘いたいと考えていた。恋愛映画『恋するふたり』。やっぱこれしかないでしょう!といそいそとチケットを買って「今度の休みは……」と都合を聞く寺西。だが、美久はあっさりと断ってしまう。次の週もだめだとそっけ無い。寺西は、告白して以来、美久がよそよそしくなったと思い落ち込むが、実は美久は、間近に迫った陣平のバースデーに、手編みのセーターを贈ろうと寸暇を惜しんで、毛糸玉と格闘していたのだ。
 そうとは知らない寺西は、思い余って“恋愛の神様”と女子大生たちがあがめる三田村(森本レオ)に恋の相談をする。やがてそれは当然のように陣平の耳にも入れられてしまった。 「図々しい奴だ!」「で、お前は何てアドバイスしたんだ?」美久の恋愛に関して過剰な反応を見せる陣平に、三田村はおもしろそうに返した。「こういうのは本人同士の問題。ところでお前のほうはどうなんだ?真理子さんだよ!おまえも美久ちゃんも、お互い外へ目を向けたほうがいいかもな」。
 釈然としない思いの陣平…。だが、そんな陣平に寺西は、思いがけないことを打ち明けた。「美久さんのことは好きです。でも先生そのことはもういいんです。美久さんを好きだと思う気持ちは変わらないけど、今のぼくにはもっとやらなければならないことがありますから」 そう言って、自分で探したという研究課題をしめしてきたのだ。
 そして、数日後の土曜。陣平の誕生日。ギリギリで仕上がったセーター。「今夜はうちで夕飯たべるでしょ」と陣平に確認し、バースデーの準備にとりかかる美久。
 だが、この日の陣平には、ちょっとした計画があったのだ。研究室の机の上に用意された2枚の映画のチケット。タイトルは『恋するふたり』。しばらくそれを眺めた後、決心したように2枚のチケットを封筒に入れたじんべえは、美久を呼びだして言った。「これを、この地図の場所に届けてくれないか…頼むよ」。水質調査をしている人がいるからその人へ届けてほしい。陣平が指定した地図の場所にいたのは、自分の研究に精を出している寺西であった……。


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