<第10回> <第11回>


<第10回>
 陣平(田村正和)は「自分の気持ちを話す」と美久(松たか子)と約束したレストランに行かず、研究室で一夜を明かした。出勤してきた真理子(高島礼子)は、そんな陣平を見つけ、一体何があったのかと驚くばかり。そこへ入ったニューヨークからの国際電話。それは小野寺の急死を知らせるものだった。家に戻った美久は、慌てて支度をする陣平と出くわして事情を知った。昨日のことを詫びるのもそこそこに、陣平は一人ニューヨークに向かうのだった。
 ひとり残された美久を元気づけようと、寺西(草なぎ剛)は石塚(宇梶剛士)、智子(黒坂真美)、真由美(西山繭子)を交えての鍋パーティーを開くことにした。
 しかし、なにかにつけ出てくる“陣平先生”の話題は、かえって美久の寂しさに拍車をかけてしまったようでもあり…だけど寺西の心遣いを知る美久は勤めて明るく振る舞うのだった。
 数日後、陣平が帰ってきた。「食事の支度できてないの」と申し訳なさそうに言う美久に陣平は「久し振りにあったかいおでんでも食いにいこう」と居酒屋に連れだすのだった。
 この前の話しを二人きりでするつもりだった陣平。しかし、そこには先客がいた。真理子、寺西、そして三田村(森本レオ)。その輪の中に入る陣平と美久。しばらくは小野寺の最後の講義などに思いをはせ楽しい宴が続いた、が突然美久が口を開いた。「ちょうどいい機会だから、ここで話しちゃおうかな。私…お父さんのところいくことに決めたから」。 誰もが突然のことに驚いた。
 その翌朝、美久は陣平に「ずっと考えて出した結論」と夕べのことを説明しながら、陣平にもニューヨーク行きを奨めていた。慌ただしく朝食の準備をしながら、勤めて明るく振る舞いながら・・・。しかし、その目には涙があふれ、止めようとしても止めようとしてもそれは止めどもなく溢れてくるのだった。
 それから数週間後のことだった。陣平は、研究室の皆の前でニューヨーク行きを正式に決めたことを伝えたのだった。
 陣平、美久、二人が出した結論に対して寺西と真理子もそれぞれある思いを固めたようだった。まず寺西は、陣平の送別会の席でそれをあきらかした。「先生の居ない間、あの家で留守番をさせていただけないでしょうか…僕は美久さんと結婚を前提としたお付き合いをさせていただきたいのです」と。
 そして真理子も、二人きりになったバーで陣平に懇願するように言った。「私も一緒にニューヨーク連れて行って下さい」。
 数日後。まず美久が高梨家を出て行く日がやってきた。いつもと変わらぬ朝食の光景。陣平の為に用意しておいた薬や服のたぐいを説明する美久。それらの物を説明し終わると美久は精一杯の笑顔を見せ言った。「バイバイ、じんべえ!」。
 陣平はいつまでも、その後ろ姿を見つめていた。

<第11回>
 美久(松たか子)の宮下家での暮らしが始まった。豪華で広い部屋。身の回りのことを全てやってくれるお手伝いさん。父・由紀夫(清水こう治)と二人きりで取る食事もまだどことなくぎこちない。そんな食卓の席で宮下は、美久に陣平(田村正和)との食事を提案した。陣平がニューヨークへ行く前にと。
 真理子(高島礼子)は陣平にニューヨークに連れていって欲しいと再度お願いする。陣平は一瞬戸惑ったものの、真理子の真剣なまなざしを見て、「一緒に行こう」とOKの返事をした。まさにその時だった、美久からの電話が入った。「あぁ、美久か」と陣平の嬉しさに弾む声。真理子はその様子を見つめる。そして陣平が慈しむように手にしていた貝がらに目を落とすと、じっと何かを考え込むような表情を見せるのだった。
 美久は大学で、友人の智子(黒坂真美)から真理子が陣平とともにニューヨークに行くという噂があることを聞かされるのだった。
 数日後、じんべえの送別会が高梨家でもたれることになった。寺西(草なぎ剛)ご自慢の鍋による最後の食事会だった。その席で石塚(宇梶剛士)が、真理子も一緒にニューヨークに行くらしいとの噂があると切り出した。すかさず「陣平のことよろしくお願いします」と言う美久。
自分よりも真理子の方が陣平の研究のことを理解していることを知り、真理子に陣平を託すことを決めた美久の精一杯のことば。それだけ言うと美久は、「門限があるので」と高梨家を早々に後にした。
 心配で後を追って来た寺西は、あらためて「僕は待ってるから」と美久にプロポーズをする。だが美久は、ただ「ゴメンナサイ…」と繰り返すばかりだった。その夜、寺西は失恋の痛手に、三田村(森本レオ)石塚の前で思い切り泣きじゃくった。
 高梨家に残された真理子は、陣平にやはり自分は行くべきではないと思うと言い、ニューヨーク行きをやめることを伝えていた。「誰かに寄り掛かることは、もうやめます」。一人立ちを決心する真理子。
 翌日、陣平は三田村と空港にいた。三田村は、真理子のこと、美久のことを「これでよかったのか」と確認するように言い、最後に「お前と美久ちゃん。血がつながらなくても、こんなに好きならずっといい親子でいたらいいのにと思ってた。でもそうじゃない新しい関係があってもいいんじゃないのか?」と意味深なことを言い、陣平を見送った。
 1年後。クリスマス間近のニューヨーク。陣平は久し振りに美久と再会した。父の仕事についてやって来たのだという。セントラルパークそしてブルックリンハイツ、ニューヨークの街を案内する陣平。様々な思い出が二人の心の中によみがえる・・・。


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