あらすじ
<第4回> <第5回> <第6回>

<第4回> 「教師・失格」
 生徒同士の妊娠騒動がもちあがった。田岡雅人(市原隼人)と近藤萌(鈴木葉月)。どちらも2年G組、秀雄(草なぎ剛)の生徒だ。職員室では古田教頭(浅野和之)が早速教師たちを集め、副担任のみどり(矢田亜希子)が萌に事情を聞くことになった。
 その日の夕方、秀雄は金田医師(小日向文世)の診察を受けた。余命1年と宣告されてすでに1カ月が過ぎたが、秀雄は誰にも打ち明けていなかった。「病気を理解してくれる人がそばにいるといいんだけどね」。しかし秀雄は1人で残りの人生を歩むつもりでいた。
 「親には絶対言わないで!」。萌はみどりの説得に耳を貸そうとしなかった。一方、雅人も久保(谷原章介)と秀雄にくってかかった。「僕の将来のことを考えて下さい」。雅人からは萌を気遣う言葉は一切なかった。「お金なら出しますよ」。じっとこらえていた秀雄がついに怒りを爆発させた。「人の命をなんだと思ってるんだ!」。秀雄が雅人の胸ぐらをつかんだ瞬間、みどりが萌を連れて現れた。「妊娠はしてません」。みどりは雅人の気持ちを試したくて嘘をついたのだ。秀雄は脱力したように雅人から手を離した。
 秀雄は生徒への性教育の必要性を痛切に感じ、翌日早速、十代の妊娠と性感染症に関するデータをまとめて古田に提案した。「それは無理だね。親の責任でやってもらうしかないよ」。父兄にとって一番触れてほしくない話題なのだ。他の教師たちも秀雄の正しさを認めながらも、古田と同意見だった。それでも秀雄を諦めず再び古田に申し出た。「性教育より受験まであと一年。時間がないんだから」「時間がないから言ってるんです!」思わず秀雄は声を荒げてしまった。
 「どうしたの?そんなに熱くなっちゃって」。麗子(森下愛子)が冗談めかして秀雄にたずねた。秀雄の変化は誰の目にも明らかだった。
 秀雄は進路相談で再び雅人と向かい合った。「やっぱり医学部を目指したいんです」。雅人は医者という職業を金儲けの手段としか考えていなかった。「君に医者になる資格なんかありません」。憤然とした雅人は教室を飛び出した。「最後まで聞いて下さい」。秀雄が雅人の肩をつかんだ瞬間、雅人は足をすべらせて階段から転がり落ちてしまった。
 雅人のケガは大事にいたらなかったが、それだけでは収まらなかった。「生徒を突き落とすだなんて!」。雅人は母親の久美子(銀粉蝶)に嘘をついていた。久美子はPTA会長。古田の対応は素早く、秀雄は自宅謹慎を命じられた。その日の夜、秀雄が職員室に一人残り、雅人宛てに手紙を書いていると、忘れ物を取りにみどりが職員室に戻ってきた。「先生は何をそんなに焦っているんですか?まるで時間に追われているみたいです」みどりはずっと気にかかっていたことを聞いてみた。「僕はやるべきことを先延ばしにするのはやめようと思いました。今日やりたいことは今日中にやっておきたいんです。」そう言って秀雄は帰って行った。
 「ちょっと問題を起こしてしまいまして・・・」謹慎中の秀雄は金田に事情を打ち明けた。「信念を貫いていればいつかきっと君に味方してくれる人が現れるよ」。金田は微笑みながら助言した。
 古田が久美子への謝罪の場をもうけてくれた。「怪我させたこと、医者失格という暴言を吐いたこと。この2点をしっかり謝罪するように」「はい」。秀雄は神妙にうなずいた。「本当に申し訳ございませんでした」。秀雄は怪我をさせたことを久美子に詫びると、医者失格と発言したことを誤るどころか妊娠騒動の事を話し始めた−。

<第5回> 「あばかれた秘密」
 秀雄(草なぎ剛)と雅人(市原隼人)のトラブルで秋本理事長(大杉漣)が雅人の母親でPTA会長の久美子(銀粉蝶)と話し合うことになった。処分が決まるまで2年G組の担任はみどり(矢田亜希子)が引き受けることになったが、その途端、生徒たちのさまざまな問題が持ちあがった。
 職員室に2年G組の黒木愛華(岩崎杏里)の連絡先を教えてほしいという電話が殺到した。「これじゃないかと」。岡田(鳥羽 潤)が手にしていたアイドル雑誌を広げると、そこには愛華の写真が学校名と共に掲載されていた。
 また、めぐみ(綾瀬はるか)は未だに志望校を決めていなかった。秀雄はみどりからめぐみのことで相談をもちかけられた。めぐみだけはいつも秀雄の生物の授業を熱心に聞いてくれている。「大学受験する気がないのかも」。もしかしたら他にやりたいことがあるのではないか。秀雄はそんな気がしていた。
 秀雄の直感は当たっていた。しかしめぐみは、みどりにはどんな夢か教えなかった。みどりにもかつてピアニストという夢があった。「中村先生は?」「笑うだろうな。テノール歌手です」。みどりは秀雄を音楽室に引っ張っていった。「私のピアノじゃ、歌えないって言うんですか」「まいったなあ」。戸惑いながらも秀雄はみどりのピアノに合わせて歌い始めた。2人の間に穏やかな時間が流れた。その様子を久保(谷原章介)が見ていたことなど知るはずなかった。
 その頃、理事長室では秋本が古田教頭(浅野和之)を同席させて、雅人と久美子に向かい合っていた。「胸が痛むものですよ。嘘をついていると」。秋本の視線に雅人は耐えられなかった。「すみません。僕は中村先生に突き落とされたりなんかしてません」。それでも我が子かわいさのあまり食ってかかろうとした久美子に対して、秋本は秀雄の手紙を手渡した。それは以前、秀雄が捨てた手紙をみどりがゴミ箱から拾って秋本に渡したものだった。「これを読めば、なぜ雅人君に医者失格と言ったのかが分かると思います」。命の尊さを訴えた文面は雅人の心に深くしみいった。
 「明日から元通り、生徒の指導にあたって下さい」。秀雄は秋本の言葉が信じられなかった。そしてみどりがあの手紙を渡してくれたことが嬉しかった。
 「僕に味方ができたみたいです」。早速、金田医師(小日向文世)に伝えた。「その人に病気のことを打ち明けたら?」「その人だけには絶対同情されたくないんです」。秀雄は知らなかったが、みどりは友達の見舞いでこの病院をしばしば訪れていた。だから金田はみどりこそが秀雄の特別な人だと勘づいていた。
 みどりが強張った表情でやって来た。「黒木さんが学校を辞めたいって言ってます」。
 愛華は雑誌に掲載されたのがきっかけでスカウトされ、タレントになりたいと言う。「授業を始める前に進路について、少しだけ話させて下さい」。秀雄は実現の可能性の低い夢にかける無謀さを説いた。「後悔するのは君たち自身なんです」。放課後、愛華はいともあっさり退学の意思をひるがえした。
 秀雄とみどりが拍子抜けしたように顔を見合わせていると、めぐみが怒りを秘めた表情で立っていた。「私は自分の夢をあきらめないから」。めぐみは子供の頃から歌手に憧れていた。めぐみの熱い口調に秀雄は微笑んだ。「それだけの気持ちがあれば、あなたは夢を追うべきです」。愛華は思いつきだったが、めぐみの情熱は本物だった。「必ず歌手になって下さい。僕のためにも」。2人のやりとりを見ていたみどりは思った。めぐみが秀雄の授業を熱心に聞いていたのは、秀雄に何かを感じていたのだと。

<第6回> 「悲しきプロポーズ」
 秀雄(草なぎ剛)が給湯室に置き忘れた薬を取りに戻ると、麗子(森下愛子)が職員室に一人残っていた。麗子は動揺を隠した。何気なく見た薬から秀雄の病気が何か知ってしまったのだ。一方、秀雄と別れて帰宅したみどり(矢田亜希子)は、久保(谷原章介)に交際を断ったことを父親の秋本(大杉漣)に伝えた。「みどりがこの人だと信じた人を信じるから」。秋本は微笑んでうなずいた。
 みどりが信じた相手は秀雄だった。2人は休日のたびにデートした。秀雄の授業にもリズムが出てきた。秀雄は麗子に相談した。「僕、みどり先生の彼氏でいいんですよね」。てっきり病気のことだと身構えていた麗子は、ホッと胸をなでおろした。
 「私、口固いから、どんなことでも相談してよ」。
 「彼女ができました」「秋本さん?」。金田医師(小日向文世)から図星されて秀雄は驚いた。「彼女に病気のこと言ったの?」「まだです」。今夜みどりが部屋に手料理を持ってきてくれる。「早く帰らないと」。秀雄はそそくさと診察室を後にした。
 「幸せそうでしたね」。看護婦の琴絵(眞野裕子)は微笑んで見送った。「そうだね・・・」。金田医師は真顔になっていた。
 「買ってきちゃった」。みどりがペアの汁椀をテーブルに並べると、秀雄はつい笑ってしまった。彼女が出来たらお椀でなはく、ペアのマグカップを夢見ていたのだ。
 「どうぞ」「いただきます」。恋人同士の幸せなひととき。秀雄はみどりの笑顔を見ながら心の中で祈った。『神様、お願いです。一分でいいから時間を止めて下さい』と。
 やがて秀雄が目覚めた時、隣には幸せそうなみどりの寝顔があった。秀雄の部屋に泊まったみどりは朝帰り。「いつ帰ったの?」「十五分くらい前かな」。平静を装うとする父親の姿がみどりにはかわいく見えた。その頃、秀雄はビデオカメラに向かっていた。「神様、黙っている僕はズルいですか?」。みどりにどう打ち明ければいいのか。まだ決心がつかない。
 秀雄は麗子に屋上に呼び出された。「私の目はごまかせないの」。秀雄と同じ薬を麗子の亡くなった伯母が飲んでいた。彼女に嘘は通じない。「余命十カ月ぐらいです」。秀雄がすべてを話すと、麗子は秘密を守ることを約束してくれた。そしてこう付け加えた。「私がみどり先生なら病気のこと話してほしいと思う」。
 その夜もみどりは秀雄の部屋に来た。「みどり先生、大切な話があります」。秀雄が切り出せないでいると、みどりが先に口を開いた。「私も同じ気持ちです。私と結婚して下さい」。みどりは自分からプロポーズするのが夢だった。「まずは父と食事をしましょうね」「はい」。秀雄は呆然としながらうなずいてしまった。
 「先生の家に泊めていただけませんか?」。突然、赤坂栞(上野なつひ)が思いつめた表情で職員室に現れた。しかも額に怪我をしている。みどりが自宅に連れ帰ったが、栞はあまりの豪邸ぶりに落ちつかず「中村先生のところに行きます。」と帰ろうとした。しかし、男性教師の家に女子生徒を泊めるわけにはいかない。みどりは事情を聞こうとするが「みどり先生には話したくありません」という栞の突き放したような口調にみどりはショックを受けた。
 翌日の放課後、栞は秀雄には打ち明けた。「父の会社、うまくいってないんです。私、大学行けないかも」。額の傷は両親のケンカを止めようとしてぶつけた。「世の中、不公平ですよ」。栞は行き場のないうっ憤をみどりに向けた。「美人でしかも豪邸に住んで・・・。あんな人に私の気持ちなんて分かるわけありません」「そんなふうに決めつけなくても」。秀雄が栞をなだめていると、廊下にみどりが立っていた。2人のやりとりを聞いていたらしい。
 秀雄の部屋で一緒に夕食を食べるのはすっかり日課になったが、その夜のみどりは元気がなかった。「本当に私、今まで深く悩んだことってないんです」。いや、一度だけあった。母親を亡くした時だ。「もう二度と大切な人は失いたくありません」。
その言葉は秀雄に重くのしかかった。「ちょっとコンビニに行ってきます」。一人になったみどりはふと部屋の片隅に置かれたビデオカメラに気づいた。部屋の何を撮っているのだろうか。みどりはビデオカメラに手を伸ばした──。


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