あらすじ
<第10回> <第11回>

<第10回> 「最後の誕生日」
 退院した秀雄(草なぎ剛)は古田教頭(浅野和之)に合唱部の存続を訴えた。「受験勉強にさしつかえなければ大丈夫ですか?」。反対している父兄を納得させなければならない。秀雄にはある考えがあった。
 「迷いや恐れはありません。残りの人生をしっかり生きるだけです」。秀雄は3年G組の生徒たちに、自らの運命と心境を正直に語った。「目標もあります。皆さんと合唱コンクールに出場することです」。そして放課後の合唱部を続けるためには、今度の模試でクラス全員がA判定の成績をとること。「無理だよ」。守(藤間宇宙)のつぶやきは、大半の生徒の本音だった。
 実は模試の一件は古田が独断で父兄たちを説得してくれていた。「合唱を続けさせたいって顔、してるね」。理事長の秋本(大杉 漣)は微笑んだ。秀雄の情熱は古田をも変えたのだ。一方、生徒たちにも変化が現れていた。秀雄の授業ではきちんと生物の教科書を開くようになった。秀雄が戸惑っていると、りな(浅見れいな)がさりげなく言った。「先生が言ったじゃん。やれるだけのことをやってみようって。受験勉強も合唱も、それから生物の授業も」。
 クラス全員が同じ気持ちだった。しかし前回の模試で成績の悪かった均(内 博貴)だけはいつものように数学の勉強を始めた。均は合唱にも参加していない。「A判定は合唱やってるヤツらがとればいいでしょ」均は秀雄に背を向けると塾に向かった。
 秀雄とみどり(矢田亜希子)は部屋に同僚教師たちを招いた。披露宴代わりのささやかなホームパーティー。赤井(菊池均也)も岡田(鳥羽 潤)も、そして久保(谷原章介)と麗子(森下愛子)も思う存分楽しんでくれた。皆から祝福されて2人は改めて結婚した喜びを実感した。
 秋本には心配なことがあった。秀雄との別れがやってきた時、みどりはどうなってしまうのか。「僕が知る限りでは愛情が深いほど、残された後再び楽しい人生を送ってますよ」。金田医師(小日向文世)の確信に満ちた言葉に秋本は救われた気がした。
 模試当日がきた。「しっかりやって下さい」。生徒たちは真剣な面持ちでテスト用紙に向かい合った。数日後、模試の結果が届いた。その結果を持って秀雄は3年G組に向かった――。

<第11回> 「愛と死」
 大学入試のシーズンがきた。3年G組の生徒たちはこれまで勉強と合唱を両立させて頑張ってきた。「自分の力を信じて受験にのぞんでください」。生徒たちを激励した秀雄(草なぎ剛)は病院へ向かった。「先生の予想、はずれましたね」「えっ?」。金田医師(小日向文世)からは当初、余命1年の宣告を受けていたが、すでに1年以上がすぎていた。しかし病状は確実に進行していた。痛みは薬でなんとか抑えていたが、食欲はほとんどない。金田からは入院を勧められたが、秀雄はできるだけ普通の生活を続ける道を選んだ。
 合唱コンクールまで1カ月。秀雄は新しい指揮棒を買った。「大丈夫。絶対、出られるから」。秀雄の不安を察したみどり(矢田亜希子)は励ました。2人の暮らしに変化はなかった。1日1日を大切に生きていた。しかし小さな変化があった。それはみどりが秀雄のことを中村先生ではなく、秀雄さんと呼ぶようになったことだ。
 合格発表が始まった。職員室には次々と吉報が届いた。「中村先生のクラス、すごいのよ」。麗子(森下愛子)が舌を巻いた。りな(浅見れいな)も雅人(市原隼人)も萌(鈴木葉月)も愛華(岩崎杏里)も守(藤間宇宙)も栞(上野なつひ)も全員、見事合格した。残るは均(内 博貴)だけ。しかし均は不合格だった。すべり止めを受験していないから来年再挑戦するしかない。「また無理かもしれません」。実力がありながら均は本番だと緊張して発揮できないのだ。「いつもの力を出せば合格できます」。明後日は合唱コンクールの本番だ。「緊張せずに練習どおり歌えるよう、挑戦してみましょう」「はい」ようやく均が笑顔をのぞかせた。
 合唱コンクール当日がきた。控室で3年G組の生徒たちは緊張していた。とりわけ均はウロウロして落ちつかない。来週の決勝に進めるのは5校だけ。「僕たちの出番です。しっかり歌いましょう」。客席には秋本理事長(大杉漣)をはじめ、同僚教師たちが応援に駆けつけてくれた。秀雄は静かに指揮棒を振りはじめた。みどりがピアノで『この道』の前奏を弾きだした。
 生徒たちは熱唱した。均だけは緊張のあまり、途中で一瞬口の動きが止まったが、無事に歌い終わった。大きな拍手が起きた。秀雄は客席に向き直ると頭を下げた。
 その瞬間、秀雄は床に崩れ落ちた。
 「秀雄さん!」。みどりが駆け寄った。生徒も教師も集まった。しかし秀雄は全く動かなかった──。


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