FNSドキュメンタリー大賞
オイルショックや財政危機など、その時々の事情に翻弄され、建設の促進と凍結が繰り返されてきた新幹線問題…
渦中の人物の証言をもとに、この問題に見え隠れする“この国のかたち”に迫り、新世紀に向けた国と地方の関係づくりを模索!

第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『それは幻想の如く 〜新幹線とこの国のかたち〜』 (制作 富山テレビ)

<10月20日(水)深夜27時20分放送>

 21世紀を迎えようとしている今、四半世紀も前に構想が生まれた北回り新幹線(北陸新幹線)を巡り、国と地方、政治と官僚、そしてJR各社は未だ結論を出していない。
 かつて田中角栄首相が日本列島改造論を掲げた頃、国家プロジェクトと唄われた新幹線も、時代を追うごとにオイルショックや財政危機など、その時々の事情に翻弄され、建設の促進と凍結が繰り返されてきた。そしてその一方で、新幹線の建設が地方発展の切り札と信じ、長年、中央に陳情攻勢をかけ、お願いを続けてきた地方…。それを尻目に大都市では、次々にビッグプロジェクトが実現している。新幹線を巡る問題は、実は明治以来脈々と続く、この国と地方の歪な関係を象徴していると言ってもいい。
 10月20日(水)深夜27:20〜28:14放送の第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『それは幻想の如く 〜新幹線とこの国のかたち〜』(制作 富山テレビ)は、新幹線問題の渦中にいた人物の証言をもとに新幹線を巡るプロジェクトから見え隠れする“この国のかたち”を描くとともに、新たな世紀に向けた国と地方の関係づくりを模索する。

 昭和40年秋、その構想は、ある一人の男から突如、時の首相、佐藤栄作に提案された。
「太平洋側に比べ、日本海側の遅れを一挙に取り返すためにも、東京から北陸を通って、大阪につながる北陸新幹線の建設をお願いしたい!」
 金沢市で開かれた一日内閣の会場で、地方の民間人から出された突然の提案だった。訴えたのは富山県の砺波(となみ)商工会議所会頭の岩川 毅である
 岩川は、詳細なデータをもとに、太平洋側の都市に比べて北陸地方の各都市は開発が遅れている実態を政府に説いたのだ。突然の大胆な提案に佐藤首相は一瞬戸惑いを見せたが、岩川の熱意とそのプロジェクトの有益性にじっと耳を傾け続けた。そして、この時の岩川の提案は、その後全国に新幹線を張り巡らそうという構想が沸き起る大きなきかっけとなった。中でも北陸新幹線は、東京と大阪を結ぶ東海道新幹線の代替機能として、大蔵官僚の目にとまり、にわかに建設の意義が取り沙汰されていく。
 当時の大蔵省主計官、丸山英人は、北回り新幹線の建設の意義を強く主張した。丸山は、危機管理の観点から「バイパス機能としての北回り新幹線」は、採算から見ても、建設に値すると考えていた。時は昭和40年代の初め、大蔵省に「北回り新幹線建設」のビッグプロジェクトを推進する空気が流れ始めていた
 だが、過疎からの脱却に悩む多くの地方都市がそれを黙って見ているはずはなかった。やがて、大蔵省に様々な政治的圧力がかかり始めた。北回り新幹線構想のあとを追いかけるように東北・上越新幹線が構想として浮上していった。

 昭和46年2月、東京の赤坂東急ホテル「金の間」。この日、北回り新幹線にとって運命の会議、鉄道建設審議会が開かれた。出席者は声高に、威圧的に発言する時の自民党幹事長、田中角栄(新潟県選出)。そして、声は低いが、粘り腰で発言する総務会長、鈴木善幸(岩手県選出)ら…。
 同じ場に丸山の後輩で、当時の運輸担当主計官、金子太郎がいた。金子は、北回り新幹線のあとを追いかけるように計画が沸き上がってきた東北、上越新幹線に疑問を持ち始めていた。だが、主計官、丸山の座席は、何故か隅に追いやられていた。そして、会議は1時間余りで終わった。すべてはすでに決まっていたのだ。
 “行き止まりルートは無駄とされていた上越新幹線”そして“採算がとれない仙台−盛岡ルート” この二つのルートに建設の槌音が響くことになったのだ。この日以降、大蔵省内の空気は“財源上の理由から新幹線NO”に変わっていくことになる。
 だが、その一方で、新幹線の建設に夢を馳せる多くの地方…。その夢がすぐにでも実現するかのごとく演説する政治家たち…。そしてそれに呼応する様に、次々と夢をちりばめる国の全国総合開発計画…。
 だが、新幹線は、なかなか動かない。自力で夢を描くことのできない地方は、ひたすら陳情を続ける。この構図は新幹線だけに限ったものではない。地方経済の根幹である産業政策も全く同じなのである。新産業都市計画、テクノポリス構想、頭脳立地計画…。これらはすべて国の掲げたアイディアに乗り、陳情を繰り返して、国のお墨付きをもらい、予算をつけてもらう。それだけではない。電柱一本、バス停一つ作るのに国の許可が必要なのである。東京=頭脳、地方=手足の構図がここにあるのだ。
 だが、50年前、既に国と地方の歪なかたちを予言していたアメリカ人がいた。占領軍総司令部マッカーサー元帥の要請を受け来日したDr.シャウプである。

 新たな世紀を迎えようとしている今、国と地方のかたちが問われている。なぜ、この国と地方の関係は、こうまでも歪なかたちとなってしまったのだろうか…?
 第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『それは幻想の如く 〜新幹線とこの国のかたち〜』<10月20日(水)深夜27:20〜28:14放送>(制作 富山テレビ)は、そのヒントが隠されているDr.シャウプの勧告をめぐる動きにまで踏み込み、日本というこの国と地方のかたちに迫る。乞う!ご期待!!


<番組タイトル> 第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『それは幻想の如く 〜新幹線とこの国のかたち〜』
<放送日時> 1999年10月20日(水)深夜27:20〜28:14放送
<スタッフ> プロデューサー : 青柳良明
ディレクター : 小島裕一、奥田一宏、堂本 勉
撮  影 : 庄司登樹夫 ほか
編  集 : 庄司登樹夫
<制 作> 富山テレビ

1999年10月14日発行「パブペパNo.99-342」 フジテレビ広報部