FNSドキュメンタリー大賞
新宿・歌舞伎町…そこにはハングルの看板が溢れ、ありとあらゆる韓国商売が集まっている
彼らは一体なぜここに集まってくるのか!
これまでほとんど取り上げられることのなかった歌舞伎町で生きる等身大の韓国人に密着!

第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『新宿ナグネ 1999歌舞伎町の韓国人』 (制作 フジテレビ)

<9月1日(水)深夜26時30分放送>

 大勢の韓国人たちが成功を夢見て、押し寄せる街、新宿・歌舞伎町…。
 そこには、ハングルの看板があふれ、韓国高級クラブ、スナック、韓国料理店、美容院、花屋、家庭料理の屋台、風俗店、韓国人ホステスのためのホストクラブなどなど…。頭のてっぺんからつま先まで、ありとあらゆる韓国商売が集まっている。だが、この街も犯罪や風俗がらみの好奇心から、乱暴に紹介されることはあっても、ここで働く普通の韓国人の日常生活が取り上げられることは極めて少ないと言ってもいい。

 9月1日(水)深夜26:30放送の第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『新宿ナグネ 1999歌舞伎町の韓国人』(制作 フジテレビ)は、日韓両国のダブル不況に揺れる99年春から夏にかけての4カ月間にわたって、歌舞伎町で生きる韓国人の等身大の日常生活に密着。一体何が彼らを新宿へ向かわせたのか?その心情を追いながら、歌舞伎町の“不夜城”ならぬ“ウラ不夜城”に迫る。
 番組を取材をしたフジテレビの田中浩一ディレクター「新宿にやって来る韓国人は、ここにとどまる人、単なる通過点としてやがて去って行く人、さらには、とどまるか去るかを決めかねている人、さらには、なぜここへ来たのか?その本当の理由すら忘れてしまっている人など様々な人たちがいます。いずれにしても彼らはみんな“旅人”(韓国語でナグネ)と言ってもいいと思います。そんな彼らの生の姿、普通の生活を見てみたい!というのが、今回の取材の出発点でした」と話す。
 今回取材した内容は以下の通り。


*靴屋さんの男性(27)
 新宿駅から靖国通りをわたって、歌舞伎町へ歩いて行くと、キャバレーやカラオケ、飲食店、ビデオ店や風俗店が続く。さらに奥に進むと、クラブやスナックのビルが並ぶ歌舞伎町2丁目。ここまで来ると、辺りはハングル看板で溢れ、いわゆる“リトルソウル”、“コリアン不夜城”と呼ばれる街だ。あるビルの1階の入口に韓国人が出してる不思議な靴屋がある。床に並んでいるのは、100足のハイヒールとサンダル。値段は1足1万円。すべて韓国から運んできたものだ。客は界隈の韓国人ホステスたち。夜7時に店を開け、9時にはいったん片づけて休憩。そして再び深夜0時から2時まで営業しているのだ。なぜ1日に2度も店を開けているのだろうか?実は前半はホステスの出勤時間に合わせて店を開き、後半はその日の仕事を終え、帰宅、食事、深夜のクラブへ向かう彼女たちに合わせているのだ。事実、夜9時から12時までは、行き来するホステスの姿はまったくない。だから店を閉めるているのだ。
 この店を開いているのは27歳の韓国人男性だ。彼は「韓国の女の人の足は幅が狭くて、日本の靴はなかなか合わないから、韓国製の靴に人気が集まる」と靴が売れる訳を話す。5年前に来日し、日本語学校を経て、テレビ演出の専門学校で勉強しながら、日曜を除く毎日靴を売ってきた。靴は、別の場所で商売する兄が仕入れる。今年卒業、5月に帰国して、テレビ局に入社する予定で、その後は韓国人の知人が引き継ぐことになっている。「ホステスはもちろん、韓国人なら通りすがりのクラブの男たちにも必ず挨拶します。商売のためばかりではありません。挨拶されたらお互いに気持ちがいいでしょう。でも最近は景気が悪く、人間にゆとりがなくなってきたのか、挨拶しても無視されることが多いんです。ぎすぎすしています。それでもまだ新宿は温かい街だと思う…」彼はこの5年間の歌舞伎町商売で感じたことについてこう語った。

*アパートの2階にある韓国のお寺
 明治通り沿いのアパートの部屋から韓国語の読経の合唱が聞こえてくる。中を覗くと、100人を越す信者が熱心に読経していた。日本人のアパートのオーナーは「最初は宗教ということや外国人ということで、オウムのこともあったので警戒しました。住人から苦情が出たらすぐに出て行ってもらうことを条件に貸しました。音が多少聞こえてくるのは日曜日だけですから苦情はありません」と特にトラブルもない様子…。信者の熱心な願いが実って、この部屋でお寺が始まったのは去年8月。留学生、家族連れ、お年寄り、一見水商売風の女性など、信者は新宿周辺の人が多いが、遠くは神奈川や千葉からやってくる人もいるという。毎週日曜日のお参りの日には、お経、説法が終わるとキムチの精進料理を食べながら韓国人同士の活発な情報交換が行われる。節目の日には、チョゴリを着た民族舞踊や琴の演奏、歌などの催しがあり、祖国を離れて暮らしている人達の心のよりどころになっているという。最近、韓国の不況で来日する人たちが急増しているが、かと言って、日本にも職は少なく、物価は高い。経済的な苦しさからか、和尚への相談が後を絶たないというのだが…

*元東洋チャンピオンボクサーの韓国刺身店
 8年前に来日し、1年前に歌舞伎町のビルの2階に韓国刺身店を開いたのはボクシングの元東洋チャンピオンの韓国人男性。店内は500万円以上をかけて、韓国田舎風にしつらえた。夕方6時頃から朝6時頃までお客さんがいる限り営業しているが、最近の不景気と、韓国刺身店が急増したことで結構暇な日も多いという。妻は歌舞伎町で知り合った韓国人女性。子供の出産に備え、アパートを借りようとしたが、“日本人の保証人が必要”と言われ、奔走した。外国人、特にアジア系の人たちが家や店を借りる際の苦労は尽きない。外国人にとって保証人が最大の問題で、経済的な責任を負ってくれる日本人はそう簡単には見つからない。不動産屋との過激なやり取りもあった。
「お客さん、あなた自身を審査しているのではないのです。あなたの保証人の人を審査するのです。あなた自身はどうでもいいのです…」
 6月15日、めでたく男の子を出産。将来はボクシングではなく、野球かサッカーの選手になって欲しいと思う。「韓国でも、日本でもなく、アメリカの代表選手になってオリンピックか、W杯に出て欲しい」と語る。アメリカへの移住を考えている彼にとって、日本、とりわけ歌舞伎町は通過地点なのかも知れない。


 番組では、この他、夜通し営業している韓国美容室なども取材。歌舞伎町で生きる等身大の韓国人の姿に迫る。
 田中ディレクター「新宿・歌舞伎町と言えば、欲望の街、金儲けのためなら何でもやる街だと言われてきました。ここは確かに、ビジネスチャンスは大きいし、外国人が働くには都合のいい街です。しかし今回の取材で知った韓国人たちの多くは、金儲けだけでは語れない“心”を持っていました。それと、もう1つ感じたことは、今は日韓同時不況ですが、彼ら韓国人は、IMF寒波の逆風を自分風に取り込んで、自らに投資し、人間関係を築き上げ、ひたすら機が熟すのを待っているんです。したたかに、そして積極的にモラトリアムをしているようにも見えました。日本人は、異文化・異民族の理解が苦手ですが、大上段に、わしづかみで一般論を語るのではなく、こうした小さな日常の発見を積み重ねることこそが大切なんだと、痛切に感じました」と取材を通しての感想を語っている。

 9月1日(水)深夜26:30〜27:25放送の第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『新宿ナグネ 1999歌舞伎町の韓国人』(制作 フジテレビ)にご期待下さい!!


<番組タイトル> 第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『新宿ナグネ 1999歌舞伎町の韓国』
<放送日時> 1999年9月1日(水)深夜26:30〜27:25
<スタッフ> プロデューサー : 味谷和哉(フジテレビ情報2部)
ディレクター : 田中浩一(フジテレビ情報2部)
ナレーション : 大鶴義丹
<制 作> フジテレビ情報2部

1999年8月23日発行「パブペパNo.99-279」 フジテレビ広報部