FNSドキュメンタリー大賞
第7回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『神の座す里 〜悩める「黒川能」の末裔〜』 (制作 さくらんぼテレビ)

<11月20日(金)26:45〜27:40>

 山形県・月山の麓に位置する櫛引町黒川地区には、400年以上も前から伝わる国の重要無形文化財「黒川能」が残る。
 この「能」は、地区の鎮守・春日神社の神事能として、およそ250世帯の氏子たちが「農業」と「能」を融合させ、連綿と守り伝えてきたものだ。猿楽能の流れを汲み、中央で現在も残る五流(観世、金春、宝生、金剛、喜多)の能と同系ながら、どの流儀にも属さない独自の伝承を続け、中央では途絶えてしまった古い演目や演式も数多く残している。
 「黒川能」は春日神社を中心に上座と下座に別れ、座長である能太夫のもと、技を競い合って芸を磨いてきた。両座に一人ずついる太夫は能を舞うだけでなく、能番組の決定、面や装束の保管のほか、役者へ稽古をつけたり、後継者を育成することまで、実に様々な仕事をこなす。しかし、時代の移り変わりとともに、若い役者達の伝承意識の薄れ、後継者不足、「黒川能」そのものの観光化など、この伝統芸能は21世紀を前に様々な問題に直面している。
 そんな中、一子相伝で受け継がれてきた下座能太夫が53年ぶりに引退することになり、地元の中学校に勤める息子の上野由部さんが去年夏、「第20代黒川能下座能太夫」という重い肩書きを継承することになった。由部さんもまた、伝統芸能というよりも生活そのものだった「黒川能」を守り、次の世代に伝え渡すことの難しさをひしひしと感じている。
 そんな上野さんの太夫継承の半年間を通して、農民のより所だった「黒川能」の姿と新しいリーダーが寄せる思い、そして「黒川能」の今後を考える。


<番組タイトル> 第7回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『神の座す里 〜悩める「黒川能」の末裔〜』
<放送日時> 1998年11月20日(金)26:45〜27:40
<スタッフ> プロデューサー : 山内 亨
ディレクター : 古内英樹
撮  影 : 庄司 誠、橋本 剛
構  成 : 高橋 修
ナレーション : 藤田弓子
<制 作> さくらんぼテレビ

1998年11月13日発行「パブペパNo.99-323」 フジテレビ広報部