FNSドキュメンタリー大賞
駄菓子屋という空間で輝きを見せる子供たち、34年間子供たちを見続けてきた駄菓子屋の店主、駄菓子屋の世界に注目した中学校教師たちの姿を通して、失われつつある子供たちの学びの場でもある遊びの空間の重要性を探る渾身のドキュメンタリー!!

第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『失われた子供王国〜駄菓子屋空間が育てる脳と心』 (制作 さくらんぼテレビ)

<11月19日(火)27:28〜28:22放送>
 昔、駄菓子屋の前や路地裏、神社などには子供たちの元気の良い声が響いていた。彼らは大人の目から離れたそんな空間で、時にはケンカをしたり、時には秘密の冒険をしたりしながら自由に遊び、学んでいた。

 「ディレクターである私も今年で30歳になりますが、子供の頃に学校が終わると道端や公園で野球やかくれんぼなどを友だちと日が暮れるまで楽しんでいた記憶が今も鮮明に残っています。あの頃は、放課後の時間をそうやって過ごすのが当たり前でした。しかし今、町中を見渡しても子供たちが元気良く遊んでいる姿をあまり見かけなくなりました。今の子供たちは放課後どんな風に過ごしているのだろうか? そしてどうして外で遊ばなくなったのだろうか? 取材はそんなふとした疑問から始まりました」さくらんぼテレビの太田 健ディレクターは話す。

 山形市の新興住宅街に位置している駄菓子屋「はじめや」は店主の山川昭子さん(58)が34年前に開店した。「はじめや」には今も放課後の子供たちが小銭を握り締めやって来て友達と会い、お菓子を買い、食べ、隣にある公園で楽しそうに遊ぶ姿が見られる。そこでは友達とお菓子を分け合ったり、自分たちでルールを作って遊んだり、ケガをした仲間をいたわるなど子供の優しさ、子供の持つ秘めた力などが感じられる光景が広がる。

 「取材中の私たちにも気軽に声をかけてくる子供たちを見て、実に子供らしいという印象を受けるとともに、こういった空間や時間が子供の成長に大きな役割を果たして来ているのかも知れないと感じました」(太田ディレクター)。

 事実、医学的な面から、「集団での遊びの中から健全な脳が育っていく」とされている。集団で遊ぶことで前頭連合野という人間の自我を統括する部位が健全に育つのだという。「はじめや」には、友達を探しにやってくる子、年上の子が年下の子を思いやる姿、「お母さんに怒られた」とここに逃げてくる子などさまざまな子供たちが訪れる。

 「毎日何気なく繰り広げられる光景を見ていると、この空間は親の目から離れた憩いの場であることがわかってきました。また同時に子供たちの秘めた力、優しさを実感しました」と太田ディレクター。

 学校や塾、スポ少など大人の管理の下にいることの多い彼らにとって、この空間には自由があるのかも知れない。
 しかし、こういった空間で自由な時間を過ごす子供はほんの一部に過ぎない。多くの子供は塾や習いごと、テレビゲームに時間をとられ、外で遊ぶことがなくなっている。これには駄菓子屋や路地など気軽に遊べる空間が減少していることも関係していると思われる。

 「時折、取材をしている私たちに時間を聞きにくる子供がいました。こうやって遊びに来ていても、時間に追われているように感じました。彼らの生活形態は昔と比べると激変して来ているのでしょう」と太田ディレクターは話す。

 実は、そんな駄菓子屋のような空間が持つ教育の力に注目してきた中学校教師と大学教授がいる。子供たちを外に引き出そうと「駄菓子屋楽校」という活動を5年前から行っている。地域の人たちに手作りの屋台を出してもらったり、ゲームにはない遊びの世界を体験してもらったりしながら、外で遊ぶ楽しさを知ってもらおうという試みだ。
 だが、こうした活動も、今年で6年目を迎えたが、残念ながら日常の子供たちの生活に変化は見られていないという。今の子供たちの生活環境を変えることは、それほど簡単ではないのだ。戦後、経済中心の社会構造を作り上げていく中で、子供たちを豊かに育てる環境を作ることを社会はいつしか置き去りにしてきたのかも知れない。その結果、子供たちが子供らしく育つ時間や空間が奪われてしまったのだろうか・・・。
 彼らをここまで追い込んだものは一体何なのか? それは社会であると同時に親の意識にあるに違いない。大人の硬直した価値観の中だけで子供達は育てられてはいないだろうか・・・?
 大きな教育改革が進められている今、子供たちが自ら考え、行動する“生きる力”をつけていくことの大切さが叫ばれている。子供は本来、自分で考え、行動する中でさまざまなことを学んでいく力を持っており、子供は大人の目の離れたところで大きく成長していくはずなのだ。大人たちはいつからそんな子供たちの可能性を信じられなくなったのだろうか?

 太田ディレクターは「失われつつある子供たちだけの空間や時間の中で自由に、元気に生きる彼らの姿から本当の意味での子供たちの教育とは何かをもう一度考えてみたいと思います。ただ懐かしいとノスタルジックに見られていたこうした空間をさまざまな角度から見ることでその重要性や必要性が見えてくるのではないでしょうか。子供たちは大人の目の届かない、彼らだけの世界を持っています。そこで、自分で考え、自分で行動し、助け合い、笑い、時には泣いて、大きく成長していくのではないでしょうか。今、大人たちには長きにわたって忘れ去ってきた真の子供たちのための空間や時間を取り戻すことが求められているのだと思います」と話していいる。

 11月19日(火)27:28〜28:22放送の第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『失われた子供王国 〜駄菓子屋空間が育てる脳と心』(制作 さくらんぼテレビ)は、駄菓子屋「はじめや」を中心にした駄菓子屋という空間で輝きを見せる子供たちの姿や、34年間子供たちを見続けてきた山川さん、駄菓子屋の世界に注目した中学校教師と大学教授などの姿から失われつつある子供たちの学びの場でもある遊びの空間の重要性を探っていく。


<番組タイトル> 第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『失われた子供王国〜駄菓子屋空間が育てる脳と心』
<放送日時> 11月19日(火)27:28〜28:22
<スタッフ> プロデューサー : 冨澤弘行
ディレクター : 太田 健
撮 影・編 集 : 和田幸一
構    成 : 高橋 修
ナレーション : 藤田 淑子
<制  作> さくらんぼテレビジョン

2002年10月18日発行「パブペパNo.02-283」 フジテレビ広報部