FNSドキュメンタリー大賞
「演技を磨いて演劇をしよう!」
健常者と障害者で作る劇団の半年間に密着!
公演を目指して、役者として激しくぶつかり合う姿を通して、健常者と障害者のあるべき姿を模索する渾身のドキュメンタリー!!

第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『役者をやろう・障害それは表現』 (制作 サガテレビ)

<10月22日(火)27:03〜27:58放送>
 「痛くってもかまわない。びしばしやってほしい」。
 車椅子の障害者、田中宏幸さん(48)は日常の生活は周囲の介助に頼らざるをえないが、自分のことを障害者とは認めたくないのだという。「舞台の上では障害も健常も関係ない」と言い切る田中さんはやる気一杯で劇に臨む。
 一方、知的障害を持っている吉田玲美さん(25)は、アイドルグループ「嵐」の大ファンだ。「いつか一人で舞台に立ちたい!」。そんな夢を持ちながら舞台に挑戦しているのだ。
 佐賀市の障害者と健常者で作る劇団チャレンジステージを主宰する小松原修さん(30)は養護学校の教諭だが、昔はアマチュア劇団で役者として活動していた経歴の持ち主だ。

 チャレンジステージは、障害に関係なく、みんなが楽しく舞台に立とうと4年前に結成された劇団だ。これまでは演技や劇の出来はあまり重視されていなかったが、小松原さんは今年、大きな決心をすることに・・・。
 それは「役者をやろう!」ということ。舞台の上では障害者も健常者も関係がない。観客に受け入れられるか、受け入れらないかのどちらかだけ。障害者だからといって舞台に立つだけで満足してはいけない。「演技を磨いて演劇をしよう」という劇団の運営方針の大きな変化だった。

 今回、チャレンジステージが取り組む劇は「アラジンと魔法のランプ」。体の不自由な田中さんがランプの魔人を演じる。目指すは5月に北九州市で開かれる障害者の芸術祭。時間がない。
 小松原さんは公演を成功させるため、メンバーを選抜してユニットを結成することを提案する。小松原さんを含めて4人が出演に手を上げた。玲美さん、田中さん、それに養護学校の酒村先生、通称“酒ちゃん”。
 劇も、物語全体ではなく、魔人の日常をパフォーマンスとして公演することになった。タイトルは「魔人の初めてのデート」。田中さんの手を酒村さん、足を小松原さんが務める。彼女の役は玲美さん、魔人は咲いている花を取って、彼女に渡す繊細な動きも要求される。
 小松原さんは演技に厳しい注文をつける。役作りを初めて要求された玲美さんは、逃げ出したくなるのをぐっとこらえる。田中さんは、劇団の運営に徐々に不満が募り始める。そして小松原さんとの衝突・・・。

 「出演できないかも知れない・・・」
 公演の1週間前になって、小松原さんに田中さんから電話がかかってくるほど深刻な事態になってしまった。
 そんな中で迎えた公演の日だったが・・・。大勢の観客が見守る中、魔人は彼らにしかできないユニークな動きで観客を魅了した。田中さんと小松原さんの笑顔。玲美さんの目からこぼれる涙。チャレンジステージは劇団として一歩を踏み出した。

 「チャレンジステージを初めて取材したのは4年前、劇団の発足の時でした」と取材を担当したサガテレビの有岡大介ディレクターは話す。「当初は、障害者を主人公にした劇団ということで、“珍しい”というニュアンスで取材をしていたんです。当時の主人公は重度の脳性まひの女の子で、表情も少なく、見る側としては“劇”というよりも、障害の人たちが集り楽しく過ごす“福祉”の一環なんだろうと思っていました」と当時を振り返る。

 4年前はさほど興味を持たなかったこともあり、その後は特に継続的な取材を行っていなかったが、ある1本の電話をきっかけに、また取材を開始することに・・・。
 「実は、去年の秋頃、小松原さんから突然電話がかかってきたんです。電話の内容は、『今年は方針を転換して、劇を見せることにこだわってみる』というものでした。『本当にできるのだろうか・・・?』と首をかしげつつも、障害の人たちのアートを、1つの文化として追い求めようとする小松原さんの姿勢にひかれ再び取材を開始したんです」と有岡ディレクターは話す。

 番組では、障害者と健常者、田中さんと小松原さんが激しく、そして真剣にぶつかりあう。
 「小松原さんが体の不自由な田中さんに対して、体がどの程度動くのかを尋ね、実際に試していく場面があるんですが、田中さんの顔は苦痛にゆがんでいます。2人は“役者”対“役者”、まったくの対等の立場で向かい合っているんです。そして障害についてもあけすけに、そして当たり前のものとして話し合い、激しくぶつかり合っています」(有岡ディレクター)。

 そこには健常者が障害者に手を差し伸べる姿もなければ、障害者が健常者に対してお願いをする様子もない。2人に肉体的な「差」はあっても、精神的な「差」はない。そして2人は、ぶつかりあいながらも、最後のステージでは一体となり、彼らにしかできないユニークな動きを繰り広げる魔人が登場する。そんな姿をカメラが追い続けている。

 そんな田中さんと小松原さんのぶつかり合いの一方で、大きく成長した玲美さんの姿は見逃せない。
 4年前のチャレンジステージを設立した頃の玲美さんは正直、あまりぱっとしない印象だった。地面に足がついていないような感じだったが、この半年で、大きな変化が見られた。番組の取材で、玲美さんの母親は「テレビ見て笑うようになった」と驚いているが、玲美さんには相手にきちんと向き合い、自分の言葉でものを言えるような力強さが生まれたようだ。実際、言葉の端々に成長の様子を感じさせる玲美さん・・・。

 有岡ディレクターは「障害者を扱ったドキュメンタリー作品はどうしても暗いイメージになりがちですが、今回の作品は明るく、元気に仕上がったと思います。チャレンジステージの皆さんは、やりたいことを存分にやり、楽しさにあふれていて、福祉にありがちな重たさはありません。この番組は見る人に、障害を持つ人々も、泣きも笑いもして、わがままも言う同じ人なんだということを改めて投げかけるのではないかと思います。すべての障害者が田中さんのようなアグレッシブな人だとはいえませんが、すべての障害者の中に健常者の中で張り合いたいという欲求があるのではないかと思います。今の社会が障害者の側に弱者であること、従順であることを押し付けている一方、障害者の側にも、それを当たり前とする風潮があるように思います。小松原さんは健常者の側から、田中さんは障害者の側から、その壁に挑戦した半年間の記録になったと思います。番組のラストで、公演を終えた玲美さんが流した涙は、必ず見る人のハートを揺さぶるはずです。ぜひご覧頂きたいと思います」と番組の見どころについて話している。

 10月22日(火)深夜27:03〜27:58放送の11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『役者をやろう・障害それは表現』(制作 サガテレビ)にご期待下さい!


<番組タイトル> 第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『役者をやろう・障害それは表現』
<放送日時> 10月8日(火)深夜26:53〜27:48
<スタッフ> プロデューサー : 北村和秀(サガテレビ)
ディレクター : 有岡大介(サガテレビ)
構    成 : 松石 泉
ナレーション : 奥田 圭
撮    影 : 坂梨貴秀
編    集 : 徳渕正樹(エスプロジェクト)
<制  作> サガテレビ

2002年10月2日発行「パブペパNo.02-264」 フジテレビ広報部