FNSドキュメンタリー大賞
沖縄で生まれたのに、偏見のまなざしにさらされる人たちがいます。
偏見に立ち向かう沖縄のマイノリティーたちが抱える葛藤とは・・・


第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『沖縄(うちなぁ)んじ生(ん)まりてぃ〜差別の連鎖を越えて〜』 (制作 沖縄テレビ)

<8月11日(日)深夜25:55〜26:50放送>
 全国の米軍専用施設の約75%が集中する沖縄に、米国と沖縄の血を引く人たちが少なくとも4500人住んでいると言われています。しかし彼らには、基地への反発、米国文化への憧れが混在し、差別という歪んだ形で跳ね返ってくるケースが今も続いています。

 沖縄の唄・三線奏者の比嘉光龍(バイロン)さん(32)は今売り出し中のミュージシャンです。コンサートでも日本語を使わず、沖縄語(ウチナーグチ)で通します。

 「沖縄生まれ沖縄育ちの沖縄人。ハーフでも混血児でもない」

 コンサートはいつもこんな口上で始まります。沖縄人であることを前面に出す光龍さんは、公の場はいつも着物。長く伸ばした髪で琉球王朝時代のまげ(かたかしら)を結うのが目標です。光龍さんが徹底的に沖縄にこだわるのは、ある理由があるからでした。

 生まれた時から沖縄の養父母に育てられた光龍さんは、2年ぶりに帰った実家でこれまでの半生を語り始めます。全く英語が話せない環境にいながらも米国文化に憧れ、顔も知らない父親の故郷・米国に渡りました。ロックミュージシャンを目指し、必死で英語を学んだ米国時代。しかしそこで待ち受けていたのは「いったい自分は何者か」という根源的な問いでした。そんな苦悩の日々を救ってくれたのは、三線との出会いで気づいた自分の中にある「沖縄」だったのです。

 自分が生まれた島、沖縄で生きていくことを決意した光龍さんは、沖縄の三線奏者になりました。しかし沖縄社会は彼を沖縄人(ウチナーンチュ)とは認めてくれません。ある日、自分のコンサートを告知するパンフレットを配ろうと商店街を歩いていた光龍さんのことを、街の人たちは差別的な言葉を使って呼びました。「俺は沖縄人・・・」そんな光龍さんの叫びだけが漂います。

 そんな中、ついに光龍さんが琉球王朝時代の髷・かたかしらを結う日がやってきました。かたかしらを結うのは昔の沖縄では成人式にあたります。「沖縄人とは何か?」。沖縄人のアイデンティティーを問い続ける光龍さんが行き着いた境地とは・・・。

 沖縄の人たちの中には沖縄戦、米軍支配、基地問題などの経験から、本土のために利用され犠牲になったという意識があります。このためメディアが扱う沖縄問題の多くは沖縄側が、本土側の加害性を指摘するマイノリティーの告発というパターンでした。しかし本当に沖縄は被害者の面だけしかもってないのでしょうか? いえ、それは違います。沖縄の中にもマイノリティーは存在します。それはアメリカと沖縄の血を引く人たちなのです。

 彼らが沖縄人(ウチナーンチュ)として沖縄の社会に入ろうとすると、沖縄のマジョリティーが「ハーフ」、「アメリカ―」という言葉で彼らを区別・差別・除外する現実があります。被害者の仮面をかぶった無自覚な加害者・・・。差別の連鎖の真っ只中に沖縄のマジョリティーは存在しています。

 8月11日(日)深夜25:55〜26:50放送の第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『沖縄(うちなぁ)んじ生(ん)まりてぃ〜差別の連鎖を越えて〜』(制作 沖縄テレビ)は、米国と沖縄の血を引く最初の世代の比嘉 稔(51)さんや、13歳まで沖縄で育ったが養子縁組を機会に米国に渡った黒人系の池原江利子(34)さん、生まれた島、沖縄で33年ぶりに暮らし始めたカメラマン、ジャン・松元さん(39)も紹介。沖縄社会の偏見と立ち向かう人たちの姿と思いを伝えます。

 「異色の三線奏者がいる。そんな話を聞いた時、取材は始まっていました。ライブ会場では光龍(バイロン)さんの演奏に圧倒され、すぐにドキュメンタリーの出演をお願いしました。沖縄が日本復帰する1年前に生まれた私は、まわりにアメリカの血を引いた知り合いも無く、彼らの存在に無頓着だったといえます。しかし取材を進めてみて初めて、彼らの葛藤の大きさ、そして心の傷の深さを痛感しました。そして私だけではなく沖縄社会そのものが、彼らを差別していることに鈍感であることに気がついたのです。ドキュメンタリーを制作する際に苦心したのはドキュメンタリーの主人公、比嘉光龍さんが沖縄に昔から伝わる言葉、沖縄語(ウチナーグチ)しか喋らないということです。ドキュメンタリーが始まる前の私は、沖縄語(ウチナーグチ)を喋れないどころか、聞くこともままならない状態でした。しかし取材を始めて光龍さんとやりとりするうちに、沖縄語(ウチナーグチ)のヒアリング能力が向上したのは自分でも驚きでした。タイトルの『沖縄んじ生まりてぃ』(うちなぁんじ んまりてぃ)とは沖縄語で『沖縄で生まれて』という意味です。消滅の危機にさらされている沖縄の言葉、ウチナーグチに対する制作者の思いもこのドキュメンタリーには込められています」と沖縄テレビの宮城 歓ディレクターは話している。

 8月11日(日)深夜25:55〜26:50放送の第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『沖縄(うちなぁ)んじ生(ん)まりてぃ〜差別の連鎖を越えて〜』(制作 沖縄テレビ)にご期待下さい!!


<番組タイトル> 第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『沖縄(うちなぁ)んじ生(ん)まりてぃ〜差別の連鎖を越えて〜』
<放送日時> 8月11日(日)深夜25:55〜26:50
<スタッフ> プロデューサー : 山川文樹(沖縄テレビ報道部)
ディレクター : 宮城 歓(沖縄テレビ報道部)
撮    影 : 高江洲努(沖縄テレビ報道部)、宮城宗徳(沖縄テレビ報道部)
編    集 : 高江洲努(沖縄テレビ報道部)
ナレーション : 阿佐慶涼子(沖縄テレビ報道部)
<制  作> 沖縄テレビ

2002年7月31日発行「パブペパNo.02-194」 フジテレビ広報部